二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 78章 提案 ( No.151 )
日時: 2018/06/09 13:52
名前: 霧火 (ID: RjvLVXA1)

電気石の洞窟前の岩場。
砂利を踏み締めながら、金色の髪を靡かせた2人の人物は向かい合った。


「私が使うポケモンは1匹だけ。リオは手持ちのポケモン全て使って良いわよ〜」
「……」

柔らかく微笑んだリマにリオは何も喋らず、静かに眉を寄せる。
何故この2人がここに居て、向かい合っているのか。

事の発端は数十分前に遡る──



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ここに固まっていたら観光客や住民の通行の邪魔になるという事で、リオ達は5番道路に移動した。


「お父さんも歳だし、これ以上怒らせたら血管切れちゃうから私はそろそろ帰るわね〜」
「そう…また今度お茶しましょうね」
「うふふ。そうね〜近いうちに、また」

笑顔で恐い事をサラリと言ったリマにリオ達が硬直する中、アヤネは1人残念そうな顔をする。


「アキラとリオちゃんは?貴方達はどうするの?」
「「うーん…」」

こちらを振り返り問い掛けたアヤネに、リオとアキラは一瞬考え込む──が、答えは割と直ぐに出た。


「俺もそろそろ出発するよ。修行するにもこの辺のポケモンじゃ物足りなくなって来たし、
 もう充分息抜きしたからな」
「私も。この街はバトル施設が沢山あるけど、私達みたいな成り立てのトレーナーじゃ
 入れない所が殆どだから、次の街に行って修行しようと思います」


「2人も行っちゃうんですね。…寂しいけど仕方ない、か。次の街でもジム戦頑張って下さいね」

しゅん…と肩を落として唇を尖らせるアヤネは可愛らしく、とても子持ちとは思えない。


(…ある意味詐欺よね、アヤネさんもお母さんも)


リオが苦笑していると、隣で靴紐を結んでいたアキラが勢い良く立ち上がった。


「俺は先に行くぜ。リオには負けたくねぇからな…つーワケであばよ!」

眼鏡を押し上げて笑うと、アキラとイーブイは突然走り出した。
リオが声を掛ける暇も無く、あっという間にアキラ達は橋を駆け抜けて行った。


「もう…どうせお互い修行してからジムに挑戦するんだから、今急いでも特に意味は無いのに。
 ホント変な所でせっかちなんだから」
「…でもあの人は仕事でよくジムを留守にするから、急ぐに越した事は無いですね」

雲を眺めながらしみじみ呟いたアヤネにハッとして、リオはリュックを背負い直す。


「じゃあ…アヤネさん、お母さん。私もそろそろ行くね」
「ちょっと待って〜」

軽い挨拶を済まし、リオは小走りで橋へと向かう。
しかし橋の入り口に差し掛かった時にリマに呼び止められて、逸る気持ちを抑え振り返った。


「どうしたの?」
「そんなに急がなくても、ジムはもうお休みになってるから大丈夫よ〜」
「「えっ」」
「さっき家に帰る途中に確認したから間違いないわ〜」


(…何でそれをアキラが居る時に言わなかったんだろ)


閉まったジムの前でガックリ肩を落とした、或いは頭を抱えたアキラの姿が目に浮かぶ。
これでは余りにもアキラが不憫だ。


(うん、今度アキラに何か奢ってあげよう)


心の中でそう決意するリオに絶えず笑顔のリマは続ける。


「うふふ。リオはジム戦に向けてこれから修行するのよね?それなら私が修行相手になるわ〜♪
 修行場所は広いから電気石の洞窟前の岩場にしましょ〜」
「ちょ、ちょっと待って!」

どんどん話を進めるリマの口を両手で塞ぐ。


「私まだOK出してない!それに、お母さんと戦ってもヒトモシ達のレベルは上がらないわ!」
「確かに野生のポケモン達を相手に戦えばレベルは上がるわ。でも逆を言えばレベルが上がる〝だけ〟なの。
 野生のポケモンは攻撃がパターン化してる子が殆どだから戦略は広がらないわ」

瞳を閉じて静かに言うリマにリオは押し黙る。
リマとのバトルは得られる物が多い──それは分かっているが、何でもかんでも母親に頼るのは甘え。
それがリオの考えだった。

その為、嬉しい申し出だがリオは内心モヤモヤしていた。


「リオちゃん。私が言うのも何ですが、リマはこう見えて教えるの上手なんですよ。何せワ「アヤネ、
 しぃー」…あ、秘密でしたっけ」

胸を張ってリマの自慢話を始めたかと思えば、小声でリマと話し合うアヤネに別の意味でモヤモヤしてると、
いつもの調子でリマが笑いかけた。


「大丈夫よ〜修行と言ってもそんなに時間は掛けないし、リオが望むなら早く切り上げる。レベル上げは
 修行の後でも充分間に合うわ〜」


(お母さんと修行する…っていうのは決定事項なのね)


リオは大きく深呼吸する。
吐いた息と一緒にモヤモヤを追い出して、リマを見上げた。


「お母さん。修行相手、お願いします」

一礼したリオに満足そうに笑い、リマはボールを空へと投げる。


「決まりね〜それじゃあ…出て来て、エアームド〜♪」

白銀の翼を広げて出て来たのはお馴染み、エアームド。
リマは速度を落として地面に降り立ったエアームドに微笑む。


「電気石の洞窟前までお願いね〜」

エアームドはリマが言う事を予測してたのか、直ぐさま身を屈めた。
献身的な姿に思わずリオの手がエアームドへと伸びる。


「…何度もごめんね、エアームド。私も乗っても良い?」

嘴を撫でるとエアームドは頷き、スリスリと擦り寄って来た。
エアームドの鋼の体はひんやりとしていて、火照った頬をあっという間に冷やしてくれた。


「ありがとう。無理に急がなくて良いからね?エアームドのペースで大丈夫」

感謝の意味も込めて再び撫でると、屈んでいたエアームドが翼を広げて抱き着いてきた。


「きゃっ!?ちょっとエアームド、前見えないっ」

リオがもがいても何のその、ますます抱き着く力が強くなるエアームド。
暫くするとリオのボールからヒトモシ達まで出て来る騒ぎとなった。



(リオちゃん…相変わらずポケモンちゃんにモテモテですね)
(人間にもモテモテになれば良いんだけどね〜)


1人と数匹のやり取りにアヤネは頬を緩め、リマは苦笑して見つめる。


そんな訳で、リオは暫くの間リマと修行する事になったのだった…





金銀時代から愛して止まないエアームドの可愛さを堪能したくて、
久々にHGSSをプレイしたら連れ歩き機能の偉大さを再確認しました。

な に こ の か わ い い 生 き 物 。

擦り寄ってる時、どう見ても主人公の顔面に《ドリル嘴》喰らわせてる様にしか
見えませんでしたが、それでも可愛かったです。…BW・BW2で何故この機能取り入れなかったし。


…長くなりましたが「7月中にもう1話更新する」発言しといて更新せずにすみません(汗)
この台詞、本当に何度目でしょうか…ちょっと有言実行という言葉を辞書で引いて来ます。

こんな作者ですが、今後とも宜しくお願いします。