二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 81章 人差し指の脅威 ( No.155 )
日時: 2013/10/06 06:23
名前: 霧火 (ID: B.wdZiuI)

「カビゴン、指を振る」

メトロノームの様に一定のリズムで人差し指を左右に振り始めたカビゴンに、リオは眉を寄せる。


(ランダムに技が出る《指を振る》か……厄介ね)

基本的にトレーナーが居るポケモンは例外を除き、トレーナーが指示を出す事で初めて攻撃する。
リオはそれを利用してトレーナーの口の動きと、その後のポケモンの『攻撃しよう』という僅かな動きを見て
向こうの攻撃のタイミングを見計らい、こちらも躱すなり攻撃なり指示を出して来た。

しかし《指を振る》は、使ったポケモンにもトレーナーにも何が出るか分からない。何が出るか分からないから、トレーナーは指示を出さないしポケモンも技が発動するまで動かない──つまり、今までの様に相手が攻撃する
タイミングを知るのが困難になったのだ。


間違い無くリオにとって痛手だった。


『カンビッ』

カビゴンの人差し指が青白く光る。
刹那──カビゴンの手から風の渦が発生し、周りの木々を飲み込んだ。

《竜巻》が発生したのだ。


「みーつけた」
「!」

口角を上げたリマの視線の先──風の渦の中に、チラーミィは居た。
チラーミィの身体は洗濯機に洗われている服の様に、グルグルと回転している。


(あの《竜巻》からは自力で脱出出来ない。それなら…)


「カビゴンに向かってスピードスターよ!」

《竜巻》を起こしているのはカビゴンだ。
自力であの風の渦から脱出する事が出来ないのなら、技を出しているカビゴンを攻撃すれば一瞬でも
《竜巻》は弱まるだろう。

チラーミィの素早さと身軽さなら、その隙に脱出が可能だとリオは思っていた。


「無駄よ。貴女の声はチラーミィに届かない」
「そんな事!」

自分の心を見透かした様に頭を振って否定したリマに、リオは反論しようと口を開く。
しかし言葉は続かず、リオの視線は《竜巻》の中のチラーミィへと向けられた。
全く動かず痛みに耐えるチラーミィにリマの言葉が真実だと悟った。


「…本当に、聞こえてないの……?」
「あの高さだし、風の音も煩いと思うからね。だけど、そろそろ嵐は去るわ」

リマの言う通り、風の渦は直ぐに消えて数秒後に空からチラーミィが降って来た。
運良く風で散って集まった葉の上に落ちたため、落下のダメージは無さそうだ。


「トドメよ。のしかかり」
「避けて!」

駆け足でチラーミィに迫るカビゴンを見てリオは叫ぶ。
しかし《竜巻》で目を回し、足元が覚束ないチラーミィはまともに動けない。



「おしまい♪」


リマが笑ったのを合図に、チラーミィの上にカビゴンが倒れ込んだ。


「チラーミィ!!」

身体を起こしたカビゴンが唯一地面に減り込んでいない、チラーミィの尻尾を掴んで持ち上げる。

チラーミィは目を回していて、これ以上戦闘は不可能だった。


「…ありがとう。戻って、チラーミィ」
「タマゴから孵って1年も経たない割に、健闘したと思うわ。さぁ、次のポケモンは?」


本気になったリマは、リオが想像していた以上に圧倒的だった。


(お母さんの称賛の言葉さえ皮肉に聞こえちゃうなんて…ちょっと参っちゃってるのかしら)



内心苦笑しながら、リオはそっと3個目のボールに手を掛けた。





更新が遅れてすみませんでした…自分が使用している充電器は意外に脆いみたいなので
もしかしたらまた同じ様に故障して更新が遅れるかもしれません。
でも届いたばかりで新品同様なので1年は保つと思います!(1年だけかとか言っちゃいけない)

文章がいつも以上に短めですが、ここで長くすると次の話が異様に短くなりそうなので…あえて今回
短くしました。
そんなワケで、次回もお楽しみに!