二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 83章 止まぬなら 固めてしまえ 毒の波 ( No.157 )
日時: 2013/11/27 19:11
名前: 霧火 (ID: RQ0KeFbe)


「決まったって…どういう意味?」

リマの言葉にリオの顔は一気に不機嫌な物へと変わる。
そんなリオに何も言わず微笑んで、リマはカビゴンに近付きお腹を撫でる。


「私のカビゴンの特性は【厚い脂肪】。炎・氷タイプの技を半減させるわ。そしてヒトモシのゴーストタイプの
 技はカビゴンには効かない」
「でも、それはカビゴンにも言える事でしょ?」

ヒトモシのゴーストタイプの技がカビゴンに効かないのは事実。
しかし同様に、カビゴンのノーマルタイプの技もヒトモシには効かない。


「そうね。だけど《のしかかり》と違って《指を振る》で出る技はランダムだから相性には左右されないし、
 こっちには回復技だってある」
「だから勝負は決まったも同然…つまり、そう言いたいの?」

リオが問い掛けてもリマは微笑んだままだ。
そんな母に表情が引き攣りそうになるが、リオは目を閉じて息を吐く事で、なんとか気持ちを落ち着かせる。


「…左右されないって言っても、弱点がそれぞれ異なるタイプを併せ持つヒトモシには弱点より半減技の方が
 多いわ。それに《指を振る》で出る技が全て攻撃技とは限らない。レベル差があるとはいえ、そう簡単に
 勝負がつくとは思わないけど」

「じゃあ試してみる?」
「そうね。…最後は貴女よ、お願い!」


リオは最後のボールを投げる。
光が消え、姿を現したのはリオのパートナーのヒトモシだ。


「ヒトモシ、相手は強敵よ。でも…最後まで頑張りましょ!」

リオの言葉に頷き、ヒトモシは1歩脚を前に出した──瞬間、地面に刺さっていた岩が全てヒトモシに命中した。


「!?」

リオは突然の事に言葉が出ず、ただ倒れたヒトモシと浮いている岩を交互に見る。


「何で急に岩が…カビゴンはまだ指を振ってないのに、どうして?」
「この技が《ステルスロック》だからよ」
「!交代で出て来た全てのポケモンにダメージを与える技…なるほど、攻撃技だと思って避けた技は持続する
 変化技だったワケね」


(しかもこの技はヒトモシには効果抜群…今の一撃で半分近くダメージを受けた。お母さんが勝負はもう決まった、そう言った理由の1つはコレだったのね)

ヒトモシがゆっくり起き上がると岩は再び地面に突き刺さった。
リオの戦えるポケモンはヒトモシが最後なので、もう《ステルスロック》に恐れる事は無い。


そう考えれば、運は良い方なのかもしれない。


「指を振る」

カビゴンは指を振り終えると、光ったままの人差し指を地面に付けた。



ゴポッ…

   ズブッ…


すると、不気味な音を立てて地面から黒ずんだ紫色のヘドロが出現した。
ヘドロは意志を持った動物の様にヒトモシに向かって流れて行く。


「アレは、《毒毒》…!」

《毒毒》は相手を猛毒状態にする技で、普通の毒とは違いダメージの蓄積量が増して行く、非常に厄介な技だ。
特に《ステルスロック》で既にダメージを受けているヒトモシには。


「ヒトモシ!蝋燭の炎の温度を最大にして、ヘドロに弾ける炎!」

ヒトモシが力を溜めると蝋燭の炎が青色へと変わり、大きく膨れ上がる。
そうして放たれた火花を帯びた青色の炎はヘドロを塞き止める。
音を立てて流れていたヘドロは炎と混ざり合い、やがて止まった。



──否、固まった。


「何で、」

リマは大きく目を見開く。
氷技で凍らせられたのなら兎も角、まさか《毒毒》が炎で固まるとは思わなかったのだろう。
珍しく動揺しているリマにリオが口を開く。


「ヘドロはね、高熱で焼き固める事が出来るの。ヒトモシの蝋燭の炎の熱を最大にしたくらいの温度でね」
「…成る程。そこまでは私も知らなかったわ」
「《毒毒》は封じたわ!次はカビゴンに弾ける炎!!」

ヒトモシは回転しながら炎を空へと放つ。
花火の様に拡散し、数を増した炎がカビゴンを襲う。


「吹き消しなさい」

ぼんやりと炎を眺めていたカビゴンだったが、リマの言葉に頷くと大きく息を吸い込む。
そして重心を前に傾け、口を窄めて溜め込んだ空気を一気に放出した。

炎は火種も残さず吹き消されてしまった。


「炎が…!」
「もう1度、指を振る」

カビゴンは素早く指を左右に振り、ヒトモシを指差す。
すると今度は指先から毒液が放たれた。


「また毒タイプの技っ…!躱すのよ!」

ヒトモシは岩場に飛び移って飛んで来た毒液を躱す。
地面に飛び散った毒液は小刻みに震えて、やがて地面に染み込んで行った。


「躱されちゃったか…でも毒状態になってない相手に《ベノムショック》が当たっても大したダメージには
 ならないし、まぁ良しとしましょう」


(防戦一方で攻撃に移れない…このままじゃ、ヒトモシがもっと不利になる。《指を振る》で、もっと強力な技が
出たら──!)


考えて、そして。



「出たら、なんて…出される事前提に考えてる時点でダメよね」

そう小さく笑ったリオにリマは震えた。


(あの顔…何か打開策を見付けたようね。…情けないわ。実の娘を相手にして緊張して、まして恐いと
感じるなんて)



「行くわよ、ヒトモシ!」
「最後まで楽しみましょうカビゴン!」

小さな挑戦者達が見出した打開策。
それは果たして決まるのか、そして勝利の女神はどちらに微笑むのか。


全てが分かるまで、あと少し。




皆さんお久しぶりです。霧火です。
1ヵ月以上更新も、更新停滞の連絡も出来ずすみません…
言い訳になってしまいますが、最後の更新から2週間はポケモンXYの方をプレイしながら
ちまちま小説を打っていたんですが…その後に風邪をひいてしまい、治っては移りの繰り返しで
文章を打つ気も、ネットに繋ぐ気も全く起きませんでした…

漸く風邪が治ったので、次の話は近いうちに更新したいと思います。