二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 84章 攻略、《指を振る》! ( No.160 )
- 日時: 2013/12/03 22:35
- 名前: 霧火 (ID: eWyMq8UN)
「ヒトモシ、スモッグ!」
『ヒト、モ〜…!』
ヒトモシは黒い煙を吐き出す。
カビゴンは煙に包まれて、やがて姿が見えなくなった。
漂って来た煙を吸わぬよう、リマはハンカチで鼻と口を押さえる。
「この視界の悪さは厄介ね…吹き飛ばしなさい!」
カビゴンは《弾ける炎》を吹き消した時の様に、大きく息を吸い込もうとした────が。
『ゴフッ、ゴフッ!』
「!」
「毒の成分を含んだ煙の中で空気を吸い込むなんて出来ないわよね!ヒトモシ、煉獄!」
放たれた《煉獄》は煙と混ざり合い、巨大な火の塊となって爆発した。
爆風と自然の風で薄れた煙を払い除けて出て来たカビゴンは、火傷状態になっていないが顔色が悪かった。
恐らく、煙を吸い込んだ時に毒状態になったのだろう。
「目覚めるパワー!」
そこに容赦無くリオは攻撃の指示を出す。
ヒトモシは冷気を帯びた水色の球体を数個出現させる。
球体はある一点──カビゴンの手目掛けて発射され、カビゴンの手は《目覚めるパワー》の氷の力で凍り、
動かせなくなった。
「手を…」
「《指を振る》で出る技を防ぐのは困難…それなら、指を振る事自体を封じれば良い。難しく考える必要は無い、
至極簡単な事だったのよ」
リオの言葉にリマはカビゴンの手を覆う氷を見て、苦笑する。
「残念だけど、こんな薄い氷、砕くのにそう時間は掛からない」
「そうね。でも、砕かれたらまた凍らすまで。氷を砕く事にこだわってたら、体力が尽きちゃうわよ?」
「…カビゴンは負けないわ。全力を出していないヒトモシには絶対ね」
リマの言葉にヒトモシは大きく目を見開く。
ヒトモシはリオに背中を向ける形で立っているので、リオにはヒトモシが今どんな顔をしているのか分からない。
しかし僅かに震えたヒトモシに何かを汲み取った。
「何言ってるの?ヒトモシは全力を出してるわ。こうして傷だらけになっても戦ってくれている…それが答えよ」
「そうかしら?その子の《煉獄》…レベルとタイプが一致している割に随分と脆弱だけど」
指を指されたヒトモシは大きく身体を揺らし、俯いた。
真一文字に結ばれた口は何かを耐える様に震えている。
リマはそんなヒトモシを見つめながら続ける。
「最初は控えめな性格が災いして全力を出せずにいる…そう思ったけれど、ヒトモシが全力を出さない
本当の理由は何なのかしら?」
『ヒ……』
ヒトモシの瞳から雫が零れ落ちそうになった、その時。
「やめて」
リオは母の言葉をピシャリと撥ね付けた。
ヒトモシを庇う様に、リオはリマを睨む。
「…私の事をどうこう言うのは構わないわ。でもヒトモシの事を悪く言うのは許さない」
『モシ…』
「大丈夫よ、ヒトモシ。…大丈夫だから」
振り返ったヒトモシに微笑んでリマに声を掛ける。
「このままじゃ日が暮れちゃうわ。お母さん、バトルの続きをしましょ」
「…リオにも言いたい事があったんだけど、まぁ良いか。時間稼ぎも出来たしね」
「!」
ハッとしてカビゴンの両手を見遣る。
カビゴンの手を覆っていた氷はそこに無く、水滴が地面を濡らしていた。
「この氷は薄いし、氷を溶かす手助けをしてくれる物が目の前にあるから直ぐ溶けたわ。カビゴン、指を振る」
カビゴンの人差し指が青白い光に包まれる。
そして青白い光から一変、指から赤い炎が出現してヒトモシを飲み込んだ。
「この技は…!」
炎の形、動き──それはリオ達が良く知る《煉獄》そのものだった。
違うのは色が赤色なのと、ヒトモシの《煉獄》より遥かに炎が大きい事だけだ。
しかし後者の違いは、リオにはとても大きな差に感じた。
「…っ、目には目を、同じ技には同じ技をよ!煉獄!!」
ヒトモシの身体から荒々しくも神々しい紫色の炎が解き放たれる。
始めのうちは拮抗していた赤と紫の炎だったが、やがて混ざり合って赤が濃い、赤紫色の炎となって
再度ヒトモシを襲った。
炎の勢いが弱まり、姿が確認出来た時にはヒトモシの身体はボロボロだった。
《煉獄》を2回受けたも同然のヒトモシの体力は、最早風前の灯だ。
「ヒトモシ!!」
(そんな…!突破は出来なくても打ち消す事は出来るって思ってたのに、まさか押し負けるなんて…!)
「良く耐えたわね。そんなヒトモシに敬意を表して、最後は大技が出る事を祈りましょう。……指を振る!」
指を振り始めたと同時に、カビゴンのお腹の中心が光り始めた。
巨大なエネルギーを溜め込んでから放出する技で、指が振り終わった瞬間に技が発動するのだろうか──
緊張からリオが唾を飲み込んだ、次の瞬間。
耳を劈く爆音と爆風、そして地響きが起こった。
《スモッグ》と《煉獄》を合わせた時より、ずっと強い衝撃がリオとヒトモシを襲う。
「くっ……!」
飛んで来る小石から顔を守る。
揺れが収まり、飛んで来なくなった小石にリオが恐る恐る目を開けると、真っ黒焦げになったカビゴンが大の字に倒れていた。
「え?」
「あらあら…確かに大技だったけどね〜」
最後の戦いは《指を振る》で出た《大爆発》によりカビゴンが自滅して幕を閉じた…
…と、いうワケで強敵カビゴンとの決着がつきました。
「結局爆発オチか!」とガッカリした読者様は多いと思いますが、ヒトモシを相手にしながら話を考えていたら
《指を振る》で出た技(大技)が《自爆》と《大爆発》が
圧 倒 的 に!
多かったので「あ、これはもうフリ的なアレだ」と悟りました。
ちなみに100回程試して20回近くは自爆系統の技でした。残りは無効技だったり変化技だったり。…跳ねて
どうするんだ、跳ねて。
引きが良い時もあれば悪い時もあって、ランダム技は本当に面白いです。
そしてタイトルが半分詐欺ですね。封じたのは事実だけど直ぐに使われちゃうって言う…
検証話は置いといて、次の更新も1週間以内に出来ると思います。
それでは、次回もお楽しみに!