二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 87章 黒いのと白いの ( No.167 )
- 日時: 2018/05/01 20:17
- 名前: 霧火 (ID: fjWEAApA)
夕飯を食べてお風呂を済ませたリオはバトルの疲れもあり、糸が切れた様にベッドの上に倒れ込んだ。
昔の夢を見る事も無く睡眠もしっかり取れたが、目覚めてみると空は薄明で、修行を始めるにはまだ早かった。
完全に覚醒して二度寝する気も起きなかったので、リオは研究所裏の洞窟に立ち寄る事にした。
(旅立つ前に届けたポケモンフードもそろそろ無くなる頃だし、多くあって困る物でもないからね。今回は多めに持って行こっと)
ベッド下にある小さな収納ダンスの鍵を開けて、隠しておいたポケモンフードの袋を引っ張り出す。
リュックの中身を全て出し、いざ袋を入れようと思った、その矢先。
大きく音を立ててドアが開いた。
「大変よ〜リオ〜」
勢い良く開いたドアとは対照的に間延びした母の声に、リオは咄嗟にベッド下に袋を投げ込んだ。
…封が開いていたら、今頃ベッド下にポケモンフードが無惨に散乱していただろう。
「ビックリした…!どうしたの?お母さん」
「?貴女こそどうしたの、そんなに散らかして」
「この先使わない物は今のうちに置いていこうと思って、中身を整理してたの。…で、お母さん何かあったの?」
我ながら上手い言い訳だと、内心自画自賛するリオ。
リマもそれ以上追究せず「あのね〜」と、のんびり話し始めた。
「言い忘れてたんだけど、修行に入る前に必要な物があったの〜」
「?」
「新しいポケモンよ〜」
「新しいポケモン…」
リマの言葉を呟く様に復唱する。
「ポケモンは多いに越した事はないでしょう?その方が戦略も広がるし今の手持ちだけで挑むには、
次のジムリーダーは強過ぎるもの〜」
「…そうだね」
リオの脳裏に腕を組んで仁王立ちした人物が浮かぶ。
(…確かにあの人は強い。お母さんの言う様に、仲間は多いに越した事は無いわ)
そんなリオの心を読み取ったのか、リマはボールを手に取った。
「新しいポケモンをゲットするのに行きたい場所があったら言ってね〜?エアームドに乗せて連れて行くから〜」
「じゃあ、」
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ゴーグル越しに見る空は、相変わらず茶色だった。
リオが乗せて行ってほしいと頼んだ場所は、4番道路だった。
あの時は砂嵐が酷かったのと、早く新しい街に着きたかった為に早々に通り過ぎたが、自動販売機が設置された
場所から続く細い道があった事を思い出したからだ。
幸い今日はそこまで砂嵐は酷くないし、探索に集中出来る。
もしかしたら素敵なポケモンとの出会いが待っているかもしれない。
そんな期待を胸に、リオは砂に足を取られながら黙々と細い道を突き進む。
「こんな所に建物…ゲートがあるとは思わなかったわ…」
細い道の先にあったゲートを見上げながら呟く。
しかし一休み出来る場所を探していたリオには好都合だった。
「おはようございます。この先【リゾートデザート】の名所は【古代の城】となっております」
ガイドさんの言葉に相槌を打ち、椅子に座って途中の自販機で買ったミックスオレのプルタブに指をかける。
ミックスオレ独特の甘い香りと味に目を細めていると、電光掲示板に目が行った。
○遺跡目当ての 旅行者が多い 観光スポットです
○砂漠は 広く 過酷です 準備を整えて お越しください
○砂漠全体に 吹き渡る 砂あらしに ご注意ください
右から左に流れて行く字を目で追いながら、最後の一口を口にする。
(へぇ…お城と遺跡があるのね。旅行者が多いなら間違って遭難、行き倒れ…なんて事にはならないだろうし、
これなら時間を掛けて新しい仲間を探せる)
空になったミックスオレをゴミ箱に入れて外へ出ると、柔道着姿の男が話し掛けて来た。
何故か全身ボロボロだ。
「君も【リゾートデザート】へは鍛えに来たのかい?」
「鍛えに、というか新しい仲間を探しに…」
「そうか。【リゾートデザート】は広い上に地面タイプのポケモンが多くて危険だから長居はしない方が良いよ」
「地面タイプですか。分かりました、ご忠告ありがとうございます」
男に頭を下げて【リゾートデザート】へと進む。
「無理はしちゃダメだよ!…いやー、良いアドバイスしたな、俺!」
(…決めた。新しい仲間を探しながら、ここで鍛えよう)
リオを思っての忠告が全くの逆効果だという事を、誇らし気に胸を張る男が気付く事は決して無かった──
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「…地面タイプのポケモンって、メグロコだけじゃない」
【リゾートデザート】を歩き回ったリオが真っ先に思ったのがソレだった。
リオが砂漠を歩いていて遭遇して戦ったポケモンはダルマッカにメグロコ、イシズマイにシンボラーに
マラカッチ…と種類も少ない上、実質地面タイプはメグロコだけだった。
沢山の地面タイプのポケモンと戦えると意気込んでいただけあって、肩透かしに終わった(メグロコの出現率は高いので、種類ではなく数と考えると男の言っていた事も間違いでは無いのだが)。
「それに親切なドクターが居るから回復には困らないし…」
突然バトルを申し込まれたのには驚いたが、勝ったその後は快くヒトモシ達の回復をして、時々リオの怪我も
治療してくれたので探索や鍛えるのには困らなかった。
では何故、柔道着姿の男はあそこまでボロボロだったのか…
「…まぁ、人にはそれぞれ事情があるわよね」
考えるのを放棄し、リオは目の前の物をじっと見つめる。
「ここが遺跡ね。周りにポケモンの像があるけど、守り神なのかしら?」
遺跡の周りには、丸い形をしたポケモンの像が4体ある。
水をかけたら今にも動き出しそうだと思いつつ、リオは遺跡の中へと入って行く。
「え、古代の…城?」
視界の隅に入ったプレートを見て、リオは目を丸くした。
壁に取り付けられた比較的新しいプレートには【古代の城】と彫られていた。
(…そっか、遺跡自体が城と呼ばれているのね)
遺跡と城がそれぞれ存在すると勘違いしていただけに、少々気恥ずかしい。
リオは頬に集まった熱に気付かないフリをして奥へと歩を進める。
流砂を避けながら慎重に歩いていると──階段近くに人が集まっているのが見えた。
「あ、」
声を掛けようとしたが、口を噤んだ。
何故ならウサ耳付きの黒のパーカーを着た少女が人々を縄で縛り、同じくウサ耳付きの白のパーカーを着た少女が屈んでメグロコに何かを話していたからだ。
(怪しい。物凄く怪しい)
リオが呆然とその場に立ち尽くしていると黒のパーカーの少女が振り返った。
リオの姿を確認して首を傾げた──と思ったら、突然リオを指差した。
「あーっ!!お前、標て「お喋り厳禁」…あっ、そうだった」
白のパーカーの少女に言われ、黒のパーカーの少女は慌てて口を手で隠す。
「私、貴女とどこかで会った?」
全く面識は無いが相手は自分の事を知っている感じだった。
しかしリオが問い掛けると、黒のパーカーの少女は思いっきり首を横に振った。
ワケが分からない──そんな思いで少女を見ていると、メグロコに話し掛けていた少女が立ち上がった。
近付いて来る少女に身構えるリオ。
「私はC」
「!わっ、私はA!」
「「2人合わせて最年少・トレジャーハンター!」」
しかし2人は突然自己紹介を始めた。
突拍子も無い行動に、リオはただ「はぁ……?」と呟くしかなかった。
明けまして、ならぬ明け暮れておめでとうございます。
私情なんですが、今年は色々な事があったため暫く小説を書く気になれませんでした…せめて連絡だけでも
しようと思ったんですが、その気も起きず…
更新停止はしないのですが、小説のストックが無くなりスランプ気味のため、今後の更新が本当に不定期になる事になりました。
今回の様に更新が1ヵ月以上遅くなる事もあれば妙に早くなる事もあります。
更新次第、今まで通りタイトルの所に日付を書くので参考にして下さい。
長くなりましたが、今後も宜しく御願いします。
それでは次回もお楽しみに。