二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 97章 零度 ( No.178 )
日時: 2017/11/06 20:58
名前: 霧火 (ID: hYCoik1d)

「リーダー。メグさん石頭だから、出血と内出血は無いよ。骨折もしてなさそうだし、脈も安定してる」

冷静に倒れた仲間の容態を確認し、報告した少女に落ち着きを取り戻した男は背を向けたまま口を開く。


「ご苦労。では直ちに、」
「戦闘に参加せよ、だよね?任せて」
「…ルナみたいな賢い部下を持って俺は幸せ者だな」

リーダーと呼ばれた大男、ロブに褒められ少女──ルナは嬉々として自分とメグのボールを投げた。
ルナのボールからは水色で、女性の様な頭をしたサルの様なポケモン──放水ポケモンのヒヤッキーと、
メグのボールからは炎の形をした頭を持つサル姿のポケモン──火の粉ポケモンのバオッキーが姿を現した。

2匹はロブの傍らに立つ緑色のトゲトゲ頭のポケモン──棘猿ポケモンのヤナッキーに頭を下げた。
相性関係無く上下関係が出来上がっているらしい。


(あの餓鬼が指差した途端、メグは壁に頭を打ち付けた…あの時のメグは間違い無く混乱していた。
攻撃を受けた様子は無い、そして特殊な電波や音波を感知するこの機械が反応しないのを見ると…)

レイドを見据え、ロブは持っていた正方形の銀色の端末を胸ポケットに仕舞い、叫んだ。


「てめえ等!このフロアに《怪しい光》を使って餓鬼に加担してる奴が居る!巧みに姿を消しているが、
 餓鬼に攻撃すれば何らかの行動を起こす筈だ!俺は攻撃に専念する、残りは辺りを警戒して、
 不自然な所を見付け次第…徹底的に叩け!!」

「「「了解!」」」

一斉に返事をして散り散りになった敵にレイドは目を瞬かせる。


「へぇ。只の筋肉担当かと思ったら、意外と頭の回転が速いんだね。チームワークも良さそうだ」
「今更気付いても遅いんだよ!ヤナッキー、ローキック!」

感嘆するレイドの足を狙って、全体重を載せたキックが素早く角度を上げて叩き込まれる──が、黄色い壁に阻まれた。


(《リフレクター》!今張ったのか!?………いや、1カ所ヒビが入ってる。最初の攻撃を喰らっても
無事だったのは、こいつのお蔭か)


「残念、届かないね」
「余裕ぶっこいてる暇は無いぜ!瓦割り!」

ヤナッキーが手刀を勢い良く振り下ろすと《リフレクター》はガラスの様な音を立てて割れた。
想定していたのか、咄嗟に距離を取ったレイドに手刀が当たる事は無かった。

しかしロブは攻撃の手を緩めない。


「種爆弾!!」

ヤナッキーは硬い殻の大きな種を数個レイドに向かって飛ばす。
しかし又してもレイドは黄色い壁に護られた。


「ワンパターンだね」
「それはこっちの台詞だ、腰抜け野郎…!」

ギリッと歯軋りするロブに小さく笑い、レイドはヤナッキーを指差した。


「!全員目ぇ閉じろ!!」

ロブは部下に注意を促し、自らも目を閉じた。
指を指されたのはヤナッキーだが部下と、部下のポケモンが対象の可能性を考えた結果だ。


「ぐっ!」
「きゃあっ!」

しかし後ろから聞こえた仲間の悲鳴に振り返り開眼すると、人質の姿はそこに無かった。
尻餅をついて呆然と上を見つめる仲間につられてロブも上を見ると、人質の体は宙に浮いて移動していて、
そのままゆっくりとレイドの後ろに降ろされた。


目を光らせて忙しなく辺りを警戒していたミルホッグが、尻尾でトレーナーの腕を軽く4回叩いた。
《見破る》で何かを見付けたサインである。


「黒い眼差し!」

ミルホッグの瞳が両端からじわじわと黒に侵食されていき、侵食が黒目に到達すると──
黒目が一瞬で黄色に変わった。黒の中に突然現れた黄色は夜空に浮かぶ満月の様だがそれにしては禍々しい。
実際、異様な光景を目撃した野生のポケモンは皆、恐怖でその場から逃げ出せずに居た。
ミルホッグの視線の先に居るであろうポケモンも、例外ではないだろう。


「今よ!」
「任せて。ヒヤッキー、ハイドロポンプ」

ルナの指示を受けたヒヤッキーはミルホッグの尻尾をバネに高々とジャンプして、
頭の房に溜めてあった水を尻尾から放水した。
一直線に放たれた水は空中で見えない何かにぶつかり、四方八方に水が飛び散った。

そして徐々に姿を現したポケモンの正体を知り、ロブは静かに笑った。


「成る程…道理で姿が見えなかったわけだ。だが、正体さえ分かればこっちのモン!てめぇ等やるぞ!」
「ミルホッグ、怒りの前歯!」
「ヒヤッキー、気合い玉。バオッキー、火炎放射」
「ヤナッキー、ソーラービーム!!」

ミルホッグは鋭い前歯を剥き出しにして襲い掛かり、ヒヤッキーは気合いを高めて渾身の力を球状に圧縮して
放出、バオッキーは口から激しい炎を発射し、ヤナッキーは頭に光をいっぱい集めて光の束を発射した。


「守る」

しかしレイドのポケモンは緑色の光で自身を包み、大技から完全に身を守る。


「…彼女が戻ってくる前に決着をつけたいな。今度はこちらの番だ」
「コソコソ姿を隠さなくて良いのか?」

挑発する様に片眉を上げる相手にレイドは表情を変えずに頭を振る。


「必要無い。実力は把握したしこれ以上長引くとまずいから一撃で終わらせようか」
「まずい?何が…それに一撃だと?どういう、」

ロブが聞き返そうとした時、突然自分と仲間のポケモン全てが転倒した。
不自然な転び方に目を凝らすとポケモン達の腕や脚、尻尾に透明な紐状の物が巻き付き、
それがレイドのポケモンと繋がっているのが見えた。


「いつからっ…!」
「貴方は質問ばかりだね。そんなの…知る必要無いよ」

レイドが冷たく言い放つとポケモンの口から冷気が微かに溢れた。
レイドのポケモンとは距離があるのに、少しの冷気でロブ達の体は寒さで震え、鼻水が止まらなくなる。
そんな彼等に、初めてレイドは笑顔を見せる。


そして──



「絶対零度」


-273℃の冷気がロブ達を襲った。




もう待ってくれている方は居ないかもしれませんが…戻って来ました。
かなり長いスランプに陥って今まで以上に文章が思い付かなくなり、それなら気分転換でポケモンと小説から
少し離れた結果、ここの存在を完全に忘れてパスも思い出せないというお馬鹿な失態を犯したため、
連絡しないまま2年近く放置という形になってしまいました…本当に申し訳ありません!
久々なので文章短いし駄文で「キャラも話も覚えてないよ!」と怒られてもおかしくない出来ですが、
また少しずつ書き進めたいと思います。1ヵ月〜2ヵ月の間に1話更新、更新できなかったら報告、これが今の目標です。
こんなどうしようもない者ですが、どうか応援を宜しくお願いします。