二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 11章 アキラvsポッド ( No.23 )
日時: 2020/06/24 15:34
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

「勝ったの……?」

リオは実感が沸かないのか、呆然とフィールドを見つめたまま呟く。
しかし嬉しそうにリオの胸に飛び込んで来たシビシラスと、ボールから出てリオの足元で飛び跳ねる
ヒトモシを見て、徐々に顔が綻ぶ。

「勝てたんだ、私達……!ありがとうヒトモシ、シビシラス!」

ヒトモシとシビシラスを抱き締めて喜ぶリオに、コーンは静かに笑う。

「参ったな……このコーンが敗れるとは。負けて悔しい筈なのに、今はそれ以上に清々しい気分です。
 これも全力で戦ったからなのでしょうね」
「コーンさん……」
「おめでとうございます、リオさん。僕に勝った証として、このトライバッジを——」

コーンがリオにバッジを手渡そうとした時、ジムの扉が勢いよく開いた。


「待たせたなリオ!俺達が応援しに……って、もう勝負ついちまったのか!?
 バッジを持ってるって事はその人はジムリーダーなんだよな?え、つまり勝ったのか!?
 何だよ、折角俺達が全速力で修行を終えてお前の応援に駆け付けたってのに!
 俺達の熱い友情パワーを込めた応援無しで勝つなんて、凄いけど薄情な幼馴染だよお前は!
 なあ、イーブイもそう思うだろ?」
「アキラ……」

登場して早々マシンガンの様に喋りまくる幼馴染に、呆れた眼差しを向けるリオ。
しかしそれに臆するアキラではない。

「まっ、終わっちまったんなら仕方無ぇな。俺もジムに挑戦しに来たんすけど、
 今は無理っすかね?」

アキラの言葉にデントが応待する。

「いいえ、大丈夫ですよ。君は確か最初に選んだポケモンがイーブイの方でしたよね?」
「そうっすけど」
「では、僕達の中から戦いたい相手を選んで下さい。彼女と戦ったばかりの青髪の……コーンと
 戦いたい場合は、申し訳ありませんが回復が終わるまで待っていただく事になります。
 しかし、僕かポッドなら今すぐ挑戦を受けられます」

(そっか、イーブイの弱点は格闘タイプ。デントさん達のポケモンじゃ弱点はつけない。
だから挑戦者が戦う相手を選ぶのね)

一体誰と戦うのかとリオが見守る中、アキラは1歩前に出る。

「いや、俺の戦う相手は決まってます。……アンタだ!」

アキラが指差したのは——ポッドだった。

「俺の返答にノーリアクションだった上に、若干俺とキャラが被ってるのが許せねぇ。
 だからアンタと戦うぜ!」
「どんな理由よ」

リオはアキラの人選理由に呆れる。

「オレか?良いぜ!コーン達のバトル見てて、ずっと暴れたかったんだよなー!イヤッホー!
 兄弟で1番強いオレ様と遊ぼうぜ!!」

ポッドは特に気にせず笑ってボールを手に取るが、リオはポッドの言葉に首を傾げた。
何故なら、コーンもリオと戦う前に自らを「3人のトップ」と語ったからだ。
トップのコーンに対抗してポッドが同じ事を言っているのか、コーンが嘘を吐いたのか。
しかし、そんな事は良くある事だとリオは自己完結して、アキラとポッドを見る。

「男と遊ぶより女の子の方が良いけど仕方無ぇな!リオより強い俺に驚くなよ!」
「……にしても、赤の他人なのに似た者同士ね」

少しだけ失礼なアキラの言葉に苦笑する。
斯くしてアキラvsポッドのバトルが始まるのだった。



「凄いですねぇ」
「彼、今までジムで戦った経験は?」
「このジムが初めてのはず、なんですけどね……」

ポッドを対戦相手に選んだアキラは苦戦を強いられ……という事は全く無く、バトルはアキラの方が
圧倒的に有利だった。

まず最初にポッドが繰り出したのはコーンの時と同じヨーテリーで(デント曰く3人共持ってるとの事)、
アキラはイーブイを繰り出した。
リオは接戦になると予想していたのだが、イーブイはヨーテリーの攻撃を持ち前の身軽さで悉く避け、
疲れた所を《噛み付く》と《電光石火で》で倒してしまった。
しかも、イーブイはノーダメージだ。

コーンとポッドのポケモンが同じレベルなのかは不明だが、ヒトモシが苦戦したヨーテリーに
無傷で勝ったという事は、それだけイーブイのレベルが高いという事だ。
まさか「リオより強い俺」という大袈裟だと思われた台詞が真実だったとは。
リオはアキラの3倍程の時間を修行に費やして漸くコーンに辛勝しただけに、短時間で
ここまでパワーアップしたアキラ達が不思議だった。

「私がジム戦してる20分弱の間に【夢の跡地】で一体どんな鍛え方をしたのかしら?」
「あの場所で修行したなら、大体予想はつくね」
「そうですね。運が良ければ強くなれるからこそ、僕もこの街の人も【夢の跡地】について
 触れるんですよね」

コーンとデントは合点がいった様だが、リオにはさっぱり分からない。
修行中リオはトレーナーの他に野生のポケモン達とも戦った。ポケモン達と言っても出会ったのは
特徴的な黄と赤色の鮮やかな目をしたハムスターの様なポケモン——見張りポケモンのミネズミと、
紫色の体の子猫の様なポケモン——性悪ポケモンのチョロネコだけだったが。

(デントさんが運が良ければ……って言ったし、私の知らない強い子でも居たのかしら)

ポッドが高温ポケモンのバオップを繰り出して、アキラは引き続きイーブイで戦っている。
ヨーテリーと戦っていた時と同様に、素早い動きでバオップを翻弄するイーブイを見て確信する。

(このまま行くと十中八九、アキラが勝つわね)

リオはそこでアキラから視線を外し、テーブルに置いてあったカップを手に取り、紅茶を一口飲む。
アキラとポッドのジムバトルが始まる前「お前は俺達の応援無しで勝ったんだから、俺もお前の
応援無しで勝ってやるからな!あ、応援いらないって言ったからって無関心は無しな!」と、
アキラに釘を刺されたので最初は立って試合を見ていたが、デントとコーンが紅茶とお茶菓子を
用意してくれたので、ご厚意に甘えて今は椅子に座って試合を見ている。

因みにジムリーダーにも休憩時間や休日はあり、サンヨウジムの場合は午後3時になると
ジムの扉を閉めて3人で御茶会を楽しむそうだ。響きがとても優雅である。
少し前に御茶会の時刻になった為ジムの扉は閉められ、デントとコーンも今はリオと同じ席に着いて
クッキーを片手に試合を観戦している。

「そういえばリオさん、そのアクセサリー綺麗ですね。どこで買ったんですか?」

デントがリオの首から下がっている透き通った雫の様な形をした飾りを見つめる。

「あ、これですか?これは買った物じゃなくて、ポケモンの尻尾から落ちた物なんです」
「「ポケモンの尻尾から?」」

驚いた顔をするデントとコーンにリオは頷く。
リオは旅に出る前に見た事が無い馬の様な姿をしたポケモンと出会った。
そしてそのポケモンが立ち去る際に、尻尾から落ちた水色の雫の形をした毛。

「綺麗だし神秘的なんで、私とポケモン達のお守りとして肌身離さず持っていたいなって。
 それを母に話したら、丈夫な紐に通してネックレスにして首から下げてくれたんです。
 こうすれば何時までも貴女達と共に居られるし、辛くて苦しい時に勇気をくれると思うから、と」
「優しく、素敵なお母様ですね」
「はい」

柔和な眼差しを向けるデントに、リオは目尻を下げ嬉しそうに笑った。
そんなリオを微笑まし気に見つめるデントとコーンには気付かず、リオは紅茶で喉を潤すと
再びアキラの試合に目を遣った。


「イーブイ《噛み付く》!」

アキラの指示にイーブイはバオップの頭上を飛び越えて背後に回り、小さな口を大きく開けると
バオップの尻尾に噛み付いた。

『〜〜っ!!』

余程痛いのか、バオップは尻尾を激しく振ってイーブイを引き剥がそうと試みるが、
イーブイは中々離れ様としない。
そうしている間にもバオップのダメージは蓄積していき、顔には少しずつ疲労の色が見え始めた。

「くっそーッ!バオップ!《焼き尽くす》ッ!!」
「させねぇよ!そのまま上へ放り投げろ!」

イーブイは噛み付いたまま後ろ足に力を入れると、ハンマー投げのようにバオップを振り回し、
天井へと放り投げた。

為す術も無く天井に叩き付けられたバオップは最早体力の限界だろう。

「《目覚めるパワー》……は、流石にやり過ぎだな。イーブイ!《電光石火》で決めてやれ!」

イーブイは地を蹴ると、光の様な速さで落ちて来たバオップの鳩尾に全身でぶつかった。
バオップとイーブイはそのまま加速しながら落ちて行く。

「バオップ!!」
「——イーブイ」

イーブイはアキラを見て頷くと目を回しているバオップを背に乗せると、地面に直撃する前に
《目覚めるパワー》で数え切れない程の球体を出現させて、地面に向けて一気に放った。
1個の球体だけだと脆いが、沢山の球体を集結させる事でクッション代わりとなり、落下した際に
イーブイは足がずぶ濡れになってしまったが、無事にフィールドに降り立つ事が出来た。
その様子を呆然と見ていたポッドだったが、すぐに我に返りバオップに駆け寄って抱き上げる。


「バオップ戦闘不能、イーブイの勝ち!よって勝者は、挑戦者アキラ様です!」

審判の判定が終わるとアキラは罰が悪そうな顔をしながらポッドに歩み寄る。

「悪ぃ、やり過ぎちまった……バオップは大丈夫か?」
「これぐらい平気だッ!オレもバオップも強いからな!……でも、」

ポッドは言葉を切り手を前に差し出す。

「助けてくれた事には礼を言う。ありがとよ」
「男から感謝されても嬉しく無ぇんだけどな。それに助けたのは俺じゃなくてイーブイだしな」

イーブイを抱き上げて頭を撫でるアキラに、リオは誰にも気付かれない様に微笑んだ。


「それでは改めて……リオさん、アキラさん」
「ポケモンリーグの決まりだ、このバッジを受け取ってくれッ!」

コーンはリオに、ポッドはアキラにそれぞれバッジを手渡した。

「ありがとうございます!」
「これで1つ目だな!」


1つ目のバッジ——トライバッジは、2人の手の中で光り輝いていた。



はい、話からお察しのとおり、前回あとがきで書いた【忘れかけてたあの人】とはアキラの事です。
忘れていた人も居るんではないでしょうか?(自分は忘れてました←

題名の割にアキラとポッドのバトル描写が少ないのは、前回かなり長引いてしまったためです……
ご了承下さい。
因みにアキラのイーブイがここまで強くなったのは、夢の跡地に出てくるピンクの悪m……
否、ピンクの天使のお陰です。

あとがきが長くなりましたが、次回、ジム戦を終えた2人が事件に巻き込まれます。
それでは次回もお楽しみに!