二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 13章 激闘、マルチバトル! ( No.29 )
日時: 2020/06/25 14:54
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

「行くのだ、マメパト!」
「ミネズミ、行くがよい」

泥棒(ややこしいので以降プラズマ団と表記)が繰り出したのは、小鳩ポケモンのマメパトとミネズミだ。

「マメパトか。イーブイ、頼んだぜ」

アキラは持っていたボールを仕舞い、後ろに控えていたイーブイに声を掛ける。
イーブイは頷き、前に出てマメパトと向かい合う。

「私はこの子で行くわ。シビシラス!」

リオはシビシラスをボールから出す。
出た瞬間にリオに擦り寄るシビシラスだが、リオがミネズミを指差している事に気付き、
自分を睨み付けるミネズミと対峙する。

「イーブイとはまた珍しいポケモンだな!」
「我等が勝ったらそのイーブイも頂戴するとしよう」
「はっ!寝言は寝て言えよオッサン」
「イーブイは渡さないわ!そっちこそ、私達が勝ったらチラーミィを返して貰うわよ!」

天井の水滴が、水溜まりに落ちた。

「ミネズミ《体当たり》」
「こっちも《体当たり》よ!」

その音を合図に、ミネズミとシビシラスが激しくぶつかり合う。
暫く拮抗していた両者だったが、シビシラスの方が浮いている分有利だ。
ミネズミの後ろ足が音を立て、少しずつ後ろに動き始めた。

「シビシラス、下がって!」

シビシラスは攻撃を止め、後ろへと下がる。

『!?』

急にシビシラスが体を離した事によりミネズミの体は前のめりになり、足元がふらついた。

「ここだ!《スパーク》!」

無防備になったミネズミを電気を纏ったシビシラスが突進して吹き飛ばす。

「押して駄目なら引いてみろ、という事か。中々やるな」
「敵に褒められても嬉しくないけど……とりあえず、ありがとう」

リオは複雑そうに頬を掻きながら、礼を言う。

「マメパト《エアカッター》!」
「《電光石火》で躱せ!」

一方のアキラはマメパト相手に苦戦していた。
マメパトに攻撃しようと思ってもすぐに上へ飛んで躱され、上空から攻撃を仕掛けられる。
持ち前の身軽さで攻撃を避けているイーブイだが、それも時間の問題だろう。

小さく舌打ちしたアキラだったが──


「シビシラス、マメパトに《電磁波》!」

それに気付いたリオが標的をマメパトに替え《電磁破》でマメパトを麻痺状態にする。

「ははっ……サンキュー、リオ!」
「どういたしまして。このまま一気に攻めるわよ!」
「ああ!《目覚めるパワー》!」

イーブイは水色の透き通った球体を作り出し、ミネズミとマメパトの頭上へと飛ばす。
ぶつかり合った球体は弾けて雨の様に降り注ぎ、2匹を濡らす。

「ふはは!何処を狙って── 「今だ、リオ!」 ……あ?」
「ええ!シビシラス《チャージビーム》!」

シビシラスは体内で蓄電した電気を束状にして放つ。
電撃はミネズミに命中、マメパトは飛んで電撃を躱そうとしたが麻痺の効果で翼を広げられず、
為す術も無く電撃を浴びてミネズミと共に地面へと倒れる。

ミネズミは先程の《スパーク》のダメージがあり、マメパトは効果抜群の電気技を受けて
共に戦闘不能となった。

「何故!?《チャージビーム》は2体同時には攻撃出来ない技のはずっ……!」
「ばぁか。その為の《目覚めるパワー》なんだよ、オッサン」

狼狽えるプラズマ団の1人をアキラは鼻で笑う。
本当に男の人には厳しいな、と思いながらリオは口を開く。

「アキラのイーブイの《目覚めるパワー》のタイプは水。水は電気を良く通すから、ずぶ濡れで
 密接してた2匹に電撃が当たったの。使い方によっては攻撃技が防御技にも補助技にも
 変わるから、本当にポケモンバトルは奥が深くて面白いわよね」
「てか、水が電気を通す事くらい分かるだろフツー……」

子供に丁寧に説明された挙句に馬鹿にされ(馬鹿にしてるのはアキラだけだが)、リオ達が現れてから
ずっと狼狽えていた方のプラズマ団員は怒りと羞恥で顔を真っ赤にさせて、目を回している
マメパトを戻すと別のボールを手に取った。
もう1人はその様子を横目で見て静かにミネズミを戻して別のボールを懐から出す。

「くぅっ……叩きのめせ!ドッコラー!!」
「生意気な態度は改めさせねばな。シママ、行くがよい」

プラズマ団が最後に繰り出したのは角材を持った筋骨ポケモンのドッコラーと、シマウマの様な姿で
雷に似たトサカを持つ帯電ポケモンのシママだ。

「格闘タイプか。下がれ、イーブイ」
「シビシラス、ご苦労様。1度戻って」

リオ達がポケモンを戻したのを見たプラズマ団は口角を上げた。

「ふははは!我々のポケモンの姿に恐れをなしたか!」
「無理もあるまい。我等は今まで負けた事が無いのだから。降参するのなら今のうちだ」

「ふっ……まさか。行くのよ、ヒトモシ!」
「誰が降参なんてすっかよ!行くぞムンナ!」

リオが繰り出したのはパートナーであるヒトモシ。
アキトが繰り出したのはバクのような姿で、体に花柄の模様がある夢喰いポケモンのムンナだ。

「その子がアキラの新しい仲間?」
「ああ。サンヨウでは活躍させてやれなかったからな……ムンナ!思う存分暴れて良いぞ!」

ムンナは目をキリッとして頷くが、すぐに眠そうに欠伸をした。

(やる気があるのか無いのか、掴み難い子ね…)

「ムンナ!ドッコラーに《サイケ光線》!」
「シママ、ムンナに《電光石火》」

ムンナは欠伸するのを止め、目から七色の不思議な光線を出してドッコラーを攻撃する。
しかしその前にシママが光の速さで距離を詰め、ムンナの体を吹き飛ばした。
大したダメージは無いが、突然の攻撃により標準がズレて《サイケ光線》は不発に終わった。

「追撃だ。《スパーク》」
「《弾ける炎》よ!」

続けて攻撃しようとしたシママの背中に向かって、ヒトモシが火花を帯びた紫色の炎を放つ。
躱すには距離も時間も短くて不可能で、このまま攻撃が当たると思われた。

「《スパーク》を中断。《ニトロチャージ》で防御」
「!」

しかし咄嗟に攻撃を切り替えて全身に炎を纏ったシママには、ヒトモシの炎技は大したダメージを
与えられなかった。
完全に隙を突いたつもりだっただけに、リオとヒトモシの衝撃は大きい。

「ムンナに《スパーク》」
「《サイケ光線》で迎え撃て!」
「遅い」

《ニトロチャージ》で素早さが上がったシママの攻撃をムンナが躱すのは至難の業だ。
アキラもそれが分かっているからこそ回避ではなく迎撃を指示したが、シママは電気を纏ったまま
七色の光線を軽々と避けてムンナに激突した。

「今だ!《催眠術》!」
「!……後退だ」

シママが後退る前にムンナはシママの鼻先に引っ付いて目を閉じると、花柄の模様から
ぽわぽわと桃色の淡い光を発生させてシママを包み込んだ。
ムンナがシママから離れるとシママは腰を下ろし、そのまま横たわって寝息を立て始めた。

ポケモンの状態異常の1つ、眠りだ。

「ドッコラー!角材でぶっ叩いてシママを起こせ!」
「滅茶苦茶な命令だけどさせない!ヒトモシ、ドッコラーの足元目掛けて《目覚めるパワー》!」
「意味無いわ馬鹿め!水溜まりなんて物は踏み付けてしまえ!そのまま直進だ!!」

角材を振り回しながらシママに駆け寄るドッコラーの進行方向の地面の色が水色へと変わる。
ドッコラーはトレーナーの指示通りに直進して、そして……

『ドッコー!!』

コケた。
水色の地面を思いきり踏んで、前屈みになって、顔を強打して。
それはもう、盛大にコケた。

「何故だああああああ!!!」
「地面に出来た水溜まりが、偶然普通の物よりずっと滑りやすかっただけじゃないかしら。
 ヒトモシ、シママに《弾ける炎》!」
「ムンナはドッコラーに《サイケ光線》だ!」

膝を折り、頭を抱えて絶叫するプラズマ団に驚いて目覚めたシママに火花を帯びた紫色の炎が、
必死に起き上がろうとジタバタと藻掻いているドッコラーに七色の光線が命中する。
当然シママもドッコラーも攻撃を避けきれずに吹き飛ばされて、壁に叩き付けられた。
衝撃で、辺り一面に砂埃が舞う。

「……終いか」

プラズマ団の1人は目を閉じて静かに呟く。
砂埃が晴れるとそこには戦闘続行不可能な、目を回しているシママが居た。

「よし!」
『モシ!』

リオとヒトモシはガッツポーズをするが、そこに生まれた隙を敵が見逃すはずが無かった。


「敵を討つぞ!ドッコラー、ヒトモシに《岩落とし》!」

砂埃に身を隠して移動していたのか、ドッコラーは持っていた角材で壁の岩を削り落とすと
そのまま岩を持ち上げてヒトモシへ投げ付ける。
落ち着いた状態のヒトモシなら生命エネルギーを辿ってドッコラーの居場所を察知出来たし、
リオも即座に気持ちを切り替えて次の作戦を考えて指示を出す事が出来た。

しかし盗まれたポケモンを取り戻すという強い想いと、初めて対峙する悪党との初マルチバトルで
ヒトモシもリオも気持ちが昂っていた。

息がピッタリ合うリオとヒトモシの良さが今、裏目に出ていた。
気付いた時には岩がヒトモシの炎の先端に触れそうな程に迫っていて、リオとヒトモシが息を呑む。

「しまっ…… 「《思念の頭突き》だ!!」 !」

ムンナは思念の力を額に一点に集中させ、ヒトモシを庇う様に前に出て岩を砕いた。
そして勢いはそのままに、岩の欠片が四方八方に飛び散る光景に驚き反応が遅れたドッコラーに
頭から突っ込んだ。

「ドッコラー!」

効果抜群の技を受け、地面へと伏せたドッコラー。

「あ、ありがとアキラ。それに……ごめんなさい」
「気にすんなよ。さっき助けて貰った礼をしただけだ」

リオが御礼と謝罪の言葉を同時に伝えると、アキラは笑顔でリオの頭を撫でた。
ぼさぼさになった髪を抑えながら、リオはうつ伏せになっているドッコラーを見つめる。

(ムンナの攻撃力は低い。だけど、効果抜群の技をマトモに喰らったんだから、もう動けないわよね)

「……ゲームセットだ」


そう言って、アキラはプラズマ団を指差した。