二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 39章 リオvsアーティ⑤ ( No.76 )
- 日時: 2018/02/13 16:06
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「ヒトモシ、戦闘不能!ハハコモリの勝ち!」
リオはヒトモシに近付き、傷ついた身体を抱き上げる。
自分の身体が浮いた事に気付いたヒトモシは、ゆっくりと目を開け、申し訳なさそうにリオを見る。
『モシ…』
「ヒトモシ、貴女はよく頑張ってくれたわ。戻ってゆっくり休んで」
ヒトモシをボールに戻し、リオはアーティに向き直る。
「最後は貴女に任せるわ…バルチャイ!」
リオの最後のポケモン──バルチャイを繰り出す。
アーティはハハコモリとバルチャイを交互に見て、口を開く。
「お互い手持ちは1体。この戦いも、いよいよ大詰めだね」
「そうですね…でも、私は最後まで諦めません。勝つのは私達です!」
「その意気だよリオちゃん。ボク達も全力で挑ませてもらうよ──ハハコモリ、糸を吐く!」
ハハコモリは口から糸を出すと輪を作り、素早くバルチャイ目掛けて投げる。
カウボーイのような見事な縄…否、糸捌きだ。
「バルチャイ、風起こし!」
バルチャイは飛んで来た糸を空高く飛ぶ事で躱すと、翼を羽撃かせて強風を巻き起こし、
ハハコモリにダメージを与える。
「葉っぱカッター!」
風が止んだ事を確認し、ハハコモリは無数の葉を飛ばす。
翼を顔の前で交差させて攻撃に耐えるバルチャイ。
効果は今一つだが、先端が尖った葉は、確実にバルチャイの身体に傷を付けていく。
「バルチャイ!」
ハハコモリの猛攻に押されかけたバルチャイだが、リオの声に飛んで来た葉を翼で叩き落とすと、
安心させるように片方の翼を上げる。
「まだ…行けるの?」
こくり、と頷いたバルチャイを信じ、リオは攻撃を仕掛ける。
「分かったわバルチャイ!乱れ突きで反撃よ!」
バルチャイは上昇、下降、遠回りに飛んだりしてハハコモリを翻弄し、鋭い嘴を減り込ませる。
(この子は元々特攻が低い。今覚えている《風起こし》は特殊技──いくら効果抜群とはいえ、
この技でハハコモリを打破するのは難しい…それなら物理技で勝負に出た方が勝算はある)
4回目の攻撃が終わるとバルチャイは距離を取るため上昇する。
「逃がさないよ!足に掴まるんだ!」
ハハコモリの頭上から1m上を飛んでいたバルチャイだったが、元々身長が1.2mあるハハコモリ。
ジャンプする事でハハコモリは一気に接近し、バルチャイは片足を掴まれてしまった。
「なっ…!振り落として!」
バルチャイはハハコモリを振り落とそうと必死に飛び回るが、自分より体重が2倍以上あるポケモンに
足を掴まれているため、疲労が溜まり始めていた。
「リーフブレード!」
それを見過ごさず、ハハコモリは片腕の葉を伸ばしてバルチャイを斬りつける。
攻撃を受けた事で自身の足を掴んでいた手が離れ、なんとかハハコモリから解放されたが、
既にバルチャイは満身創痍だった。
「バルチャイ、羽休め!」
バルチャイはフィールドに降り立ち、翼を畳む。
一見するとただ休んでいるだけに見えるが、この技は最大HPの半分のHPを回復する技だ。
リオは態勢を立て直すため、この技を指示した。
アーティはそんなリオと、翼を畳んでいるバルチャイを見て──静かに笑った。
「虫の抵抗!」
小さな虫達がバルチャイに向かう。
(悪タイプだけど、飛行タイプも併せ持つバルチャイには虫タイプの技はそんなに効かない)
そう思ったリオは慌てなかった。
「…?風起こし!」
しかし虫達に集られ表情を歪めたバルチャイに、嫌な予感がして指示を出す。
バルチャイは風の力で虫を引き剥がしたが、疲れはいまいち取れていないように見える。
「何で…!?虫タイプの技が、こんなに効くなんて…」
「《羽休め》は回復技でもあるけど、使用したその時だけ飛行タイプじゃなくなるんだ。
つまり、タイプが〈悪〉だけになったバルチャイに、虫タイプの技は効果抜群というわけさ」
(どうやら回復技という事しか理解してなかったようだね)
目に見えて驚いているリオにアーティは1人で納得する。
「…そうだったんですか。でも、さっきより体力が回復した事は事実です!バルチャイ、飛んで!」
バルチャイは翼を広げ、上昇する。
「よし!そのまま突っ込んで!」
天井近くまで到達していたバルチャイは翼を少しだけ折り畳むと、一気に急降下する。
そして地面スレスレで体勢を立て直し、ハハコモリに真正面から接近する。
「正面から来るとはね…!リーフブレードで迎撃だ!!」
ハハコモリは地を蹴り、両腕の葉を伸ばして斬りつける。
骨に覆われてない脆い場所──顔面を狙って。
しかし、
「『!?』」
《リーフブレード》が直撃する瞬間、バルチャイは身を翻して軌道を変え、ハハコモリの背後に回り込んだ。
(しまった!この技は──)
「騙し討ち!!」
前のめりになったハハコモリの背中を、翼で殴りつける。
直前でこんな動きをされるとは思ってなかったハハコモリは完全に油断していて。
バルチャイの渾身の攻撃をその細い背中に喰らい、地面に倒れる。
「立つんだハハコモリ!」
片足と片腕を突っ張り、なんとか起き上がろうとするハハコモリ。
自分を見下ろすバルチャイと視線が絡み合う。
そして──体を支えていた片腕がパタリ、と倒れたと同時に、ハハコモリの身体が崩れ落ちた。
「ハハコモリ、戦闘不能!バルチャイの勝ち!よって勝者は……チャレンジャー・リオ!」
試合終了を意味する審判の声がした後も、暫く固まっていたリオとアーティ。
先に動いたのはアーティだった。
「…ありがとうハハコモリ。キミの流れるような美しい攻撃の数々、ボクは更にキミを…虫ポケモンが
好きになったよ。ゆっくり休んでいてくれ」
ハハコモリをボールを戻し、バルチャイとリオに近付く。
「おめでとうリオちゃん」
「アーティさん…」
実感が湧かないのか、ゆるゆると顔を上げたリオに微笑む。
「キミとポケモン達の友情、根性ハートには恐れ入ったよ。ボクに勝った証として
このビートルバッジを受け取ってくれ」
手を取って掌に黄緑色に光り輝くバッジを置くと、リオは何回か瞬きして、やがて目を輝かせた。
「ありがとうございます!」
虫ポケモンを見つけた時の自分と同じ顔をして礼を言う少女に、アーティは心が温かくなるのだった。
リオvsアーティは、リオの勝利で幕を閉じました。
正直…かなり長かったですね。執筆している本人も、こんなに長くなるとは思わなかったり←
キレ者(?)同士のバトルという事で力を入れたんですが、リオはあまり頭を使ってない上、
終わりは呆気ないですね……反省せねば。