二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ぬらりひょんの孫〜月下美人〜 ( No.168 )
日時: 2012/04/17 22:05
名前: このみ (ID: wC6kuYOD)
参照: http://yaplog.jp/momizi89/

第十六話  守るもの



『ううう……』

唸った、その時だった。


ドオォォン!!


『ふっ…』

周りがカッと光った。
辺りが元の明るさに戻ると、そこにはボロボロのぬらりひょんと、すぅすぅと眠る輝夜。ぬらりひょんの手には赤ん坊の姿があった。
雪麗は一番最初に駆けつけた。

「ちょっと!今凄い光らなかった!?大丈夫なの!?」
「ああ、無事じゃ」
「産まれた……の……?」
「ああ」

ぬらりひょんは雪麗に大きな声で泣いている赤ん坊を渡した。

「輝夜には見せてあげた?」
「見せた。すぐに気を失っちまったからなぁ。少ししか見ておらんだろうが……確かに、見ていたぞ」
「そう……。じゃあ、この子、少し預かるわよ?このままじゃ、可哀そうだし」
「頼んだぞ」

雪麗が出ていくと同時に、わらわらと他の妖がやって来た。

「おい、お前ら、通してくれ」

そう言ってぬらりひょんは部屋をあとにした。
自室に戻り、ドカッと腰を下ろす。
座った瞬間、涙がボロボロと溢れてきた。
《産まれた……。ワシと……輝夜の……》
嬉しすぎて、涙が止まらない。
人はこういう時を、「幸せ」と呼ぶのだろう。
グイッと涙を着物の裾で拭うと、着替えてから部屋を出て輝夜の元へと向かった。






「名前は、なんて言うんですかい?」

産まれたのは女。
ならば、輝夜が決めた名前になる。

「月夜(つくよ)だ!」
「いい名前でしょう?」

すっかり回復した輝夜が隣でふふ、と微笑う。
さすが大妖怪、と言いたいところだ。

「名前の意味は……月のような輝きをもち、夜のような落着きをもった女の子になるようにと」

輝夜は自分の腕の中で眠る赤子を見つめ、すっと目を閉じて口の端を上げた。
それは早くも母親の顔で、誰もが見惚れた。

「輝夜は名前を付けるのが上手いのう」

ぬらりひょんはニッと笑うと、赤子の頬をつんつんと突いた。

「あら、起きてしまいますよ」
「すまんすまん。ついな」
「もう」
「まぁ、そう膨れるな」

周りに人(?)がいるのも忘れ、自分達の世界に入ろうとしている二人に半ば呆れながらも、優しく見守る妖怪達。
《ああ、幸せだ》
そんな皆に囲まれ、そう思うのだ。
それはずっと続く。続かせる。
《ワシが、守るんじゃ》
守るものが増えれば、強くなる。
《強く、なるぞ》
改めてそう思った、ある春の日。
奴良組は温かい物に包まれた。