二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.37 )
日時: 2012/02/13 19:13
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/265669/

「珍しく気合入ってるなぁっ!円堂、」


シュンッ!行き成り筋肉質な足が空を仰ぐ。“ソイツ”は、先程の声の持ち主を確認すると勢い良く蹴りを仕掛けた。だが其れはもう予想済みとでも言う様に、その男は軽く頭を捻り、攻撃を交わした。
賺さずソイツ、ピンク色の坊主頭の輩が今度はパンチを入れて来た。だがそれも其の男、真っ赤なバンダナに茶髪の髪が無造作に生えた少年は軽々しく避ける。
突然ピンク色の坊主頭が飛び蹴りを繰り出した。

———バシィッッッ!!!!

“勝った、”そうピンク頭は確信した。だがその足は、茶髪の少年の手の中にあった。
あれ程の飛び蹴りを、茶髪の少年は難なく止めたのだ。
顔色一つ変えずに。
その瞳だけに、途轍もない殺意とも言える意思が篭りギンギンと輝いていた。


「……ッチ、」

「もう終わりか?お兄さんよォ、」






 +






「あはははっ!!ごめんなーっ。冗談だよ」

「ったく、円堂。…また強くなりやがって、」

「ん?何か言ったか?」


昼過ぎ。天気は晴れ。此処は日本の東京である。東京にしては昔懐かしい薫りがするこの道場。
其処には先程手合わせをした二人の少年が他愛も無い話で笑いあっていた。


「久しぶりだな、染岡、」

「此方こそだな、円堂」


最初に言葉を発した方を円堂守。血の色に染まった赤黒いバンダナから茶色い艶のある髪を無造作に伸ばし、まるで太陽の様な笑顔を作るこの少年。今回の魔聖対戦ではバンダナの色は変えたようだ。先程の殺意剥き出しの顔からは到底想像出来ない。ま、それは戦う時の表情かおといった所だろうか。
恐ろしい程に冷たくなる瞳は、前魔聖対戦の時にその強さと共に勝ち取ったもの。
第42次魔聖対戦の王冠を手にした魔族。頂点に立ったのが、この円堂守だった。
円堂が手に入れたものは、「強さ」。そのままでも充分最強なのに、それ以上の「強さ」を求め、手に入れた。
同時に、持ち合わせていなかった「冷酷さ」をも手にいれた。
それは、戦っている時の円堂の瞳を見れば分かるであろう。

次に言葉を発したのが、染岡竜吾。ピンク色の坊主頭でイカつい顔をしている。
第42次魔聖対戦の王冠を手にした魔族の一人で、円堂の片腕の片腕。
円堂が「強さ」を手に入れてからまるで変わった円堂の事を何処か気にしている。
“竜使い”の異名を持つ凄腕の戦士。
第42次魔聖対戦の時も、その勝利に貢献した。


「明日、だな」

「ああ。いよいよってか」


何故この円堂軍が今回の魔聖対戦にも選ばれたのかは一切不明。
だがこの事を不可解に感じながらも円堂は、皆の前で出生を公表したのだった。

第43次魔聖対戦まで、残すは今日のみ。
明日に備えて、円堂は体術を確認していた所だった。一度魔聖対戦に出生している彼等は、魔聖対戦の事を、怖さを良く知っている。

“これは遊びじゃない。只の欲同士の、殺し合いだ。”
“裏切りは許されない。逃げも許されない。意を決して臨め。”

其れは、最近の円堂の口癖だった。
遊びじゃない。強い者しか生き残れない。逃げてばかりでは、いつか死ぬ。あの悪夢を、もう一度経験する事になった円堂達は、他の魔族より一足早く、準備を進めていた。


「染岡。俺、怖いんだよな。」

「…は?」

「俺、怖いんだよ。死ぬのが。確かに前の“殺し合い”で『強さ』を手に入れたはずなのに、俺の勝利は確実なはずなのに。
 何か、強くなってる気がしないんだ。前回より、魔聖対戦が、怖い」

「……そりゃあ、思い過ぎだ。誰だって怖いだろうがよ。今更お前に何が言える。逃げるか?こんな殺し合い辞めるか?んな事絶対出来ねえだろ。今更言ったって、遅え」

「分かってる。俺達が態々呼ばれたのにも、引っ掛かる。此れは、絶対何かの罠だ。気を引き締めて行かねえと、」

「大丈夫だ。お前には、俺達が付いてるだろ。好きな用に使え。其の為の、俺達だかんな。言える事は一つだ。

                    戦ってるのは、お前一人じゃねえ。」


そうだ。戦っているのは円堂一人では無い。染岡は心の中で呟いた。
俺一人でも無い。俺には、円堂だって、豪炎寺だって、鬼道だって、吹雪だって、風丸だってついてる。仲間が居るんだ。
だが気は抜けない。明日、何が待っているかは分からない。
確かに円堂達は他の魔族より経験値は積んでいるが、何十回何百回もしているベテランでは無い。それだけは忘れないで置こう。
円堂が怖いって言うのも分かる。
円堂が手に入れた「強さ」は偽物だと俺は思う。円堂は充分に強い。それ以上強くなる必要なんて無かったんだ。あの時は、自分の大切な人達を救いたい。そう願い、その「強さ」を手に入れた。
だが、実際はその「強さ」で大切な人を傷つけてばっかりだったんだ。それに円堂は気が付いていない。昔の円堂だったら気が付いていたかもしれないな。円堂は変わった。円堂の考えている事が、分からない。

染岡は、そんな事を考えながら、明日の“殺し合い”に臨んだ。



 13M:( 返り咲けない王者達。 )





240205
久しぶりにティンカーベル更新。