二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.40 )
日時: 2012/02/14 18:00
名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
参照: http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/265669/



あの時、私の脳内に送り込まれたデータは、とても役に立つものだった。衣食住はどうしたら良い、とか、対戦のルールとか。
だが、伏せてあり分からない所もある。其処は、幾等問い詰めようとしても頭が回らなくて答えは出て来ない。
そういう物には、例えばエントリーしている魔族の名前や情報がある。最初から全て教えてくれる訳では無いようだ。知りたければ自分で調べろ。だが基礎的な事は、一度見まみえる時に見える場合もあるらしい。


「に、しても。まさか最初にアンタと会うとはねぇ、」

「でも好都合だろ?流石のアタシも虹彩と初っ端からバチ会うなんて思ってもいなかったけど」


此処の“失われた理想郷(ロスト・オブ・エデン)”の地図なんかは、全て脳内に入っている。
私達が歩いているのは多分、最下層部の小惑星だろう。名称を“エウテルペ”というそうだ。辺りを見れば、一面月面の様な地面が続いている。宇宙の中に居るようだが、息は出来るし無重力でも無い。差し詰め、宇宙もどきと言った所か。
此処“ロスト・オブ・エデン”には、エウテルペの様なぶっ飛んだ世界がある。というか、この島自体、数々の世界を無理矢理繋ぎ合せた様なものだ。
此処の様に宇宙や、深海、天空や森、神殿。こういうファンタジーな場所もある一方、人々が賑わう町や村、王国もある。そして、科学発展した都市などもあり、バリエーション豊かである。


「本っ当、何も無い所だな、此処は」

「仕方ないわ。宇宙だもの。小惑星の上だけどね」


先程から気になっているこの人物。上が咲夜梓美。通称アズ、である。アズとは偶々目を覚ました場所が此処で同じだった。
正直、此処でアズとバッタリ会うのは安心出来る。この少女は、私が認める戦友だからだ。私との付き合いも長く、私の考える事が手に取るように分かっているらしい。だから、何時も私が指示を出す間も無く、私の考え通りに動いてくれる。私が危ない時にはサポートしてくれる。とても良い、親友だ。
そして、この『第43次魔聖対戦』も、共に戦う杯を交わした。


「まずは、出口を探さないと、ね」


そうだ。今は其れが問題なんだ。
眼を覚ましてからもう3時間程歩いている。なのに未だ此処から出る術が見つかっていない。これはこれで大問題だ。
気のせいか、先程から同じ所ばかりグルグル廻っている気がする。

3時間も歩いてちゃ、幾等なんでも体力も消耗して来る。別に限界までは遥か遠いから其処は良いのだけれど。
でも消耗して来た身体で歩いている今、敵襲になったらどうする?体力的にはほぼアチラが有利だろう。そんなこんなで負ける私達でも無いけれど。

理由はともあれ、何としてでも此処を抜け出したい訳だ。
もう既に見慣れた景色、既に踏み慣れた地面。こんなの、もう飽きて来た。


「さぁて、本気でも出しますか!」

「ああ!もうアタシもそろそろウンザリして来たんだ!」


残り余った体力。
必死で出口を探す為、私達はこの踏み慣れた堅い地面を蹴った。


 15AA:( 月惑星エウテルペ )


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