二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.41 )
- 日時: 2012/02/13 19:02
- 名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
- 参照: http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/265669/
あれからまた何時間か歩いた。未だに出口は見つかっていない。結構キツイ。体力を消耗し、一旦休もうかと隣のアズと話していると、アズが一人の少女を見つけた。
そんな事より今は早く出口を見つける方が先でしょ。興味無さ気にゆっくりと顔を上げるとその少女が眼に入る。
何処か、神々染みた雰囲気を醸し出す子だった。瞳は虚ろで最後まで開かれてはいないが、確かに宝石の様な素晴らしい程に輝かしい蒼い瞳が此方を捉えていた。
そして、此処の偽宇宙で煌びやかな銀髪で長さは肩に掛かる位。派手でも無く地味でもない洋服と和服を組み合わせた様な衣装を身に纏っているが、本当に何処か神秘的なイメージなのは、その少女本人が醸し出すオーラからなのだろうか。
「誰、あの子」
「否、アタシに聞かれても知らねぇよ。でも、」
未だにあの子は私達の事を凝視したままだ。如何しましょう、先程から眼が合って仕方が無い。
「———若しかすると、若しかしたらだけど。
此の変な偽宇宙から、出られるかもしれない」
アズがニッ、と不適に笑い、私の手を引く。
彼女に近づこうとすれば、その行動は私達よりも彼女の方が先に私達の元へやって来た事により、遮られた。
そして、虚ろな瞳で私達をしっかりと見つめ、私達の意を悟ってか、囁いた。
「…、こっち」
本当に、なんて綺麗な蒼い瞳だろう。ジュリアの瞳も蒼く綺麗だが、この瞳は、ジュリアよりも明るく、そして深い。光に満ちていて、煌びやか。
それはどんな色の瞳にも勝る、綺麗な瞳だった。
私達は、その少女の後を黙って追い、そして遂に出口へ辿り着く。
「ねぇ、貴女、貴女は誰なの?何者なの。何故出口を知っている?」
「……それは、必ず教えなければならない?」
「えぇ。一応、教えてくれると助かるわ。この先の安全の為にもね、」
すると、少女は押し黙る。何か、まずい事を聞いてしまったか。だが、私は名前を聞いただけだ。なら、何者かという質問がまずかったか。否、何故出口を知っているという質問だったか。
そんな私の心配も見ず知らず、少女は重々しく口を開け、「…紗輝」とだけ呟いた。名前か?“紗輝”というのが名前なのか?
「神宮寺、紗輝。私は、貴女の敵でもあって、味方でもある。虹彩さん」
そう続けた紗輝は、私にその綺麗な蒼い虚ろな瞳を向けて、微笑んだ。
敵でもあって、味方でもある。如何いう事だろうか。だがそれより、「虹彩さん」そう彼女は呼んだ。虹彩とは、明らかに私の名だ。何故私の名を知っている。彼女に、名は名乗っていないはずなのに。何故。
すると、
「此処から出られる。」
後ろから、紗輝の声がした。何時の間にか、私達の方が前を歩いていたらしい。
「また会おうね、虹彩さん」
「———紗輝ッ!!」
振り返ると、其処に紗輝の姿は、無かった。
私とアズだけが、出口の光の中に埋もれていった。
16AB:( 神の使い。王冠の生贄 )