二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.108 )
- 日時: 2012/06/18 19:32
- 名前: さくら (ID: ZFblzpHM)
- 参照: http://nanos.jp/10sakura/page/21/
02.
「あらあら。如何したの?鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をして」
ふふ、ふははは、もう笑いさえも込み上げてくる。
この頭は誰のだ。———父さんだ。母さんが、首から下が無い父さんの頭を持ち上げている。生首だ。母さんに良く似合う薄桃色のフリルがあしらわれたエプロンは、父さんのものだと思われる血がべっとりと付着して真っ赤になっていた。
「あはははっ、夢、だよね…?」
「なあに言ってるの?」
ぐしゃ。興味なさ気に呟いた母さんは、父さんの鷲掴みにしていた頭を放り投げた。嫌な音がする。
すると母さんはくるりと一回転し、真っ赤に染まったエプロンを見せびらかすように、言葉を紡いだ。
「どう?似合うかしら?この赤も母さんに似合うと思わない?」
“可愛いわよね”その言葉を聞く前に、私は家を飛び出した。
母さんが、母さんじゃ無くなった。あんな母さん私は知らない。こんな私なんかの為に腹を痛めて生んでくれた母さんじゃない。
という事は、あそこは私の家じゃない。如何やら私は他所の家にお邪魔したみたいだ。あ、「お邪魔しました、」って言ってないけど大丈夫かな。
じゃあ私の家は何処?何処に有る?早く家に帰ろう。早く早く早く。
「夢だったら、良いのに」
夢だよね。こんなの、皆変わっちゃってるよ。母さんも、円堂も、皆皆。私を置いて何処か行っちゃう。
悪夢だったら良いのに。そして早く目を覚ますんだ。目を覚まして、太陽の光を浴びたい。
何時の間にか、日は沈んでしまっていた。
夢だよね、そうに違いない。だって、皆可笑しいんだ。平気で人を殺したりしない。仲間を殺したりしない。愛する人を殺したりしない。あんな絶望しきった瞳を、していない。
夢だ。夢だ。夢だ。早く覚めろ。覚めろ覚めろ。こんなの間違ってる。飛びっきりの悪夢だったら良いのに。
「あれ、私の家、見つかんないな」
此れマジで駄目だよ。如何しよう、迷っちゃった。ってか、帰り道忘れちゃった。
私の家何処だろう。どこだろ。
ちょ、此れ本気でヤバイよ。え、私今夜野宿?やだよ。
ガチで野宿とか、やっべえ此れ本気でウケナイ。性も無いギャグ止めろよ。
こんだけ家探しても見つかんないんなら、さっきの家、やっぱうちん家なのかな。でも違う人のお母さんが居たよ。ってか、思いっきり殺人現場見ちゃったよ。警察行かなくていいのかな。え?行った方がいい?まじ?
ちょ、本気でヤバいよ。今時女子が野宿だなんて、何処のアニメだよ。
こんなピンクの意味で危ない世の中、通り掛ったケダモノに襲われでもしたらどーすんだよ。三面記事飾るか?最後殺されちゃうかもな、私。本気で三面記事になるかもしれない。
嫌だ。嫌だ嫌だ。えええええええあああああああああもう、嫌だよこれは夢だそうだ夢だ。夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だユメユメゆめゆめ夢。
でも夢なら早く覚めるよね。覚めろ覚めろさめろ。そして忘れたいこんな悪夢。
嗚呼嗚呼嗚呼アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
「何時ものみんなをとりもどす」
そうだ、皆をまもるんだった。こんな所でなにしてんだろ。わたしだ。
嗚呼、もう今日は野宿かな。明日から活動しよう。皆を護ろう。でもどうやって?それはね、また明日決めよう。今はもう眠い。ふあ、おやすみ。
え、でも野宿ってガチで嫌だよ。でも眠いよ。楽になりたいよしにたいよ。
眠い。でも野宿は勘弁。でも行く所がない。
如何しよう。寝よう。そしてまた明日考えよう。ああねむいねむい
「そんな所で寝てんと襲われるぜ?」
はあ、ふざけんな。誰が襲われるって?殴るぞ。
でも今私は眠いんだ。寝かせてよ。私は今夜此処で寝るの。野宿するの。眠いの。腹括ったの。女子だから腹括ったの。
ばいばいじゃあね。誰かさん。
私はその時、既に意識を手放していた。
遠くの方で舌打ちが聞こえた。ふと見えた髪の毛。燃え滾る様に、紅い髪の毛。
「…ったく、仕方ねーな、」
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