二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.110 )
- 日時: 2012/06/18 19:34
- 名前: さくら (ID: ZFblzpHM)
- 参照: http://nanos.jp/10sakura/page/21/
04.
燃え滾る様な紅い髪の毛を持った男の子の頭の上には、見事なまでに立派なチューリップが咲き誇っていた。否、そんな堂々と咲かれても。
何故この目の前の男の子は“頭の上で”チューリップを栽培しているのだろう、
今の流行なのか?
否、おい待て。そんな事実があって溜るか。
この目の前の男の子は別として、誰が悲しくて頭の上でチューリップ育てなければならんのか。
下手して花を摘み取り(捥ぎ取りとも言う)でもしたら、その部分だけ“禿げる可能性もあるんだぞ”。
「ってお前、バーンじゃないか!エイリア学園の!」
「お前、今絶対失礼な事考えてたろ」
「えっ。別にそんな」
必死に誤魔化す。くそっ、コイツ中々鋭いな!
私はまだ少し重い身体を慌てて起こした。だがそれもそうだ。
何故なら、起きたらベッドの上に寝かせてあり、目の前には見知らぬ男子、おまけに昨夜の記憶が全く無い。
別に疚しい事を考えて居る訳でも無いし、況してや期待して居る訳でもない。
何故彼が頭の上でチューリップを栽培しているのかは置いといて。
「はっ、安心しろよ。別に捕って喰ったりはしねえよ」
「ぁ…、」
「お前は胸も尻もちと足りんからなぁ。接吻の味も知らない若造ちゃんだよな」
「し、失礼な!」
女の子目の前に何を言うかこいつは。どんなケダモノだ。
ベッドからふと見えた空は、綺麗な夕焼け色をしていた。如何やら今日一日、殆ど眠っていたらしい。本音はもう死ぬまで目を覚ましたくなかったけど。
此処は、おひさま園。
×
それからグランこと、基山ヒロトと、ガゼルこと、涼野風介も後から続いて此方に来て、詳しく今回の状況を説明してくれた。
円堂達があんなになった訳。雷門中やお母さんに何があったのか。全て話してくれた。
「全ては、エイリア石の所為だよ」
「エイリア石…?で、でも、あれは消滅したんじゃ…っ、」
「其れがしてなかったんだ。君達雷門イレブンが僕達ジェネシスに勝利して、エイリア学園は無くなった。だけど研崎が幾つかのエイリア石の欠片を持ち去ってたんだよ。」
その後、私はジェネシス戦で負った怪我の為、一週間安静として入院していた。だから其の後は詳しく知らない。皆が全然お見舞いに来てくれなかったから、可笑しいとは思っていたけど。皆忙しかったんだ、そう片付けていたけど。
当時、吉良星二郎の後釜を狙っていた、研崎竜一は持ち去った最後のエイリア石の欠片結晶を晒し、風丸率いる“ダークエンペラーズ”を結成させた。それが最後の戦いだったらしい。雷門イレブンは、監督の指揮を瞳子監督から響監督へと戻し、ダークエンペラーズと激突。
ダークエンペラーズは初代雷門イレブンの面々を中心にして出来ていた。風丸、染岡など、離脱して勧誘された恐れもあるらしい。
「円堂君達は、勝った。同時に風丸君達の心も救ったんだよ、一度はね。僕は、その時円堂君達の試合を見てた。だけど、最後円堂君は敗れたんだ」
“円堂君達は、勝った。同時に風丸君達の心も救ったんだよ、一度はね”。この言葉が妙に心に響いて、無意識のうちに聞き返す。
一度は、って、如何いう意味?試合を2回したの?タイムトラベルでもしたの?本当何なの?話の辻褄が全く合わないんだけ、ど…。
「円堂君が、風丸君の首に掛かってたエイリア石を引き千切ろうとしていた、その時。エイリア石が再結晶した」
エイリア石の再結晶。一つの欠片結晶を元にして復元されたエイリア石の結晶。
「さ、いけっしょうって、まさか、」
「勿論そのエイリア石は一番近くに居た円堂守に感染した。…取り付いたと言った方がしっくり来るかな」
変わって風介が話を続ける。彼等は元エイリア学園。それも、マスターランクチームを率いる主将であった。エイリア石の事は頭に叩き込まれている為、その生態から増殖まで全て、良く知っている。最も、今まで明かされた事実しか学んでいないが。
エイリア石は、再結晶するとランクが一上がるらしい。今まで成せなかった感染増殖。そして、取り付き洗脳能力が高くなっている。
洗脳された人間は、力に満たされた様な快感を得て、戦闘能力など数々の能力が開花、アップする。
「つまり、円堂守は洗脳された。あんな石ころにな、もうアイツは、今までのアイツじゃねぇ。」
「そんな、」
「君の母さんが可笑しくなったのも、多分そのエイリア石の所為だろう。エイリア石は、欠片を肌身持っていないと洗脳されない訳じゃないからね。多分、今頃町中に広がっていると思うよ。勿論、感染する人と感染しない人が居るから、君も私達もこうやって正気のままで居られるんだけど」
「だから、お前が円堂を救ってやれ。今のアイツにお前が如何見えてるかは知らんが、アイツ等を救ってやれんのはてめえだけだろ」
頭の上にチューリップを咲かせた人間にしては、今とても良い事を言ったと思う。
勿論、あんな変なお母さんの居る家に戻る勇気も無い為、当分安心出来そうな此処で寝泊りする事に決めた。
偽お母さんはお父さんを殺していた。あんなに仲良かったのに、あんなに愛し合っていたのに。絆ってのはこんなに簡単に壊す事が出来る。
とても、怖い。そう思った。
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