二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.111 )
日時: 2012/06/23 23:52
名前: さくら (ID: ZFblzpHM)
参照: http://nanos.jp/10sakura/page/21/


05.



 戦わないといけない。みんなを助けなきゃならない。
 私は一人、おひさま園の皆の反対を押し切って雷門中に登校した。だって、幾ら偽物でも其処にいるのは“彼等”だから。私の大好きな人達だから。きっと心の奥で悲鳴をあげてる。

 黒い沼があった。円堂も風丸も豪炎寺も鬼道も吹雪も、みんなみんな気を失ってその黒い沼に溺れていく。最初は見てる事しか出来なかった。私がみんなを助けようとして下手して溺れたら怖いからだ。沼は汚いから、服が汚れて臭くなるのは御免だった。
 どうせ皆は自分の力で這い上がれる。それだけの力を持っているから。
 だけど皆はどんどん溺れていく。何の抵抗もせずにゆっくりと溺れて沈んで死んでゆく。それが怖かった、同じくらい怖かったけど、真っ先に身体が動いた。自分が助けなきゃ。やっぱりよく考えてみると、一人になるのは嫌だった。
 私は袖を捲って沼に入る。どぷっどぷっ、と脚が底なしの沼に溺れてるのが分かる。私は躊躇問わず飛び込んだ。誰かを見つけなきゃ。深い深い底に沈んでく。そして漸く手に何かが触った。
 腕だ、誰かの腕だ。残りの息を振り絞り、私は上陸した。けど。

 だけど私が持ってたのは、たった一本の細っこい骨だけだった。


「あっれーまた来たの?サクラちゃん」

「・・・吹雪、」


 好きで来た訳じゃねえよ、黙れ。

 だけど全く怖く無かった。最初に来た時とはまるで違う。怖くない、そう、全然怖くない。だから雷門に足を踏み入れることが出来たんだと思う。
 この前と違って丸っきり人気がない。おいおい他の奴らはどうした、勉強は?義務だろ?って私も行ってないから言えないんですけどね!

 そうしたら吹雪が校舎の前に立っていて。右手に釘バットが握られているのは見なかった事にして。


「あ、もしかしてやっと僕等の仲間になる気になった?あれから結構探したんだけど全っ然見つかんなくてね、本当、何処に居たのかなあ?」

「退いて。」

「君の家、悲惨な事になってたねえ。あー本当、悲しい悲しい。君のお母さん、サクラちゃんにまで捨てられたって凄い形相でサクラちゃんの事探してたよ?今度会ったら殺されちゃうかも。」

「退いて!」

「だってもし僕が退いたら君何するの?僕達を殺しちゃう?」

「退けっつってんだろ!」

「無理だと思うよ。今の君の力じゃあ、絶対に。それに、そう簡単に円堂君の所には行かせられないなあ。あの人の所に行きたいんならまずは僕を倒してから行け!って、良く言うでしょ?」

「黙れ、」

「 い や だ 」


 ああああイライラするムシャクシャする。何で言う事聞いてくれないの、何で退いてくれないの。私皆を殺したりしないから。どうしてそう決めつけるの!?
 もうこうなれば強行突破だ。私は退こうとしない吹雪を無理やり押し退けて、走り出した。

 けど。

 あ、れ?


「だから行かせねえつってんだろ。」


 あ、れ?横を見れば吹雪が居る。あれ、でも私動けない。腕を掴まれてる。誰に?分からない。吹雪はそんな私を見て楽しそうに腕を降っているから多分違うだろう。ってか吹雪ちょっと表出ろや。何だその態度。

 壊れたロボットの様になった首をギイ、と動かすと其処には吹雪が居た。

 否、吹雪は居るよ?うん隣にね。だけど私が言っている吹雪は後ろに居るの。あれ?それじゃあまるで吹雪が二人居るみたいじゃないか!うん、だから二人居るんだよ!
 混乱して口をパクパクさせている私を見て、面白そうに笑う吹雪と、そんな私に苛ついて来たのか私を睨みつける吹雪。うん、確かに二人居る。私の目は断じて正常なはずだ。だから私の考えに狂いは無い。そう、吹雪が二人居るんだ。


「あ、敦也—。良かった、助かったよ。サクラちゃんお転婆さんだから無理やり通ろうとして僕転びそうになっちゃった」

「ったく士郎、一人で片付けるから俺には見てろつったのに、何だよ俺出て来たじゃんか」

「そんなの知らないもーん。敦也が勝手に出てきたんだしい」

「てめえ、ぶち殺すぞ」


 うん、本当について行けない!WAKARANAI!
 敦也ってのは、吹雪の弟で何年か前に雪崩事故で死んでたんじゃないの?吹雪の身体借りて完璧を求めてた。そうだ、私吹雪を通してだけど敦也と直接話したじゃないか。
 ジェネシス戦の時、敦也と吹雪は一つになって、吹雪は本当の完璧ってもんを見つけたはずなのに。

 なんで。


「ああ、サクラちゃんにはよく分かんないね。こいつ、僕の弟の敦也。ほら、敦也も宜しくしな」

「・・・ッチ、」

「敦也もね、エイリア石の力で蘇ったんだよ?エイリア石って熟熟凄いね!力を得るだけじゃなくて死んだ大切な人にもう一度チャンスをくれたんだ。敦也にチャンスをくれたんだよ。ほら、敦也を見て?こうやってまた一緒に居る事が出来るんだ。僕はやっぱり一人じゃない。一人にはならない。だって僕にも敦也にもエイリア石っていう素晴らしいものがあるからね!」

「あ、・・・あぁ、あ」

「ほおら、サクラちゃんにも掛けてあげるー」

「いっ、・・・止めて!」


 洗脳されそうになった。うげえ。
 何が掛けてあげるーだ吹雪君よお。首絞めてるじゃん何か出て来そう、超気分悪い。吐きそうだからお願い止めて。止めてください止めてください止めてください!
 うげええええうげええええおえええええ


「・・・ごほっ、けほ、・・・っはぁ、は、っけほっ、」


「エイリア石って、何でも願いを叶えてくれるんだね!」


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