二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- エレクトロニック 02. ( No.88 )
- 日時: 2012/04/29 18:55
- 名前: さくら (ID: te9LMWl4)
- 参照: アルファさん「ンNO…拒否は出来ない…絶対に…ボソボソ」
02.
あれから数日が経ち、私と彼は同じクラスだったという事が判明してもう頭の中はお花畑だ。まさかあんなに一目惚れしてしまう様な人が同じクラスに居て其れに気づかないなんて、勿体無さ過ぎる。
彼の事について、少し他の人に聞いてみた。名前を狩屋マサキといって、サッカー部に入っているらしい。彼も私と同じ転校生と聞いて驚愕した。
それから狩屋君の事を聞いていたら教えてくれた人達と仲良くなれた。同じサッカー部の松風天馬、西園信介、マネージャーの空野葵ちゃんだ。皆に名前で呼んでと言われたから名前で呼ばせて貰うけど。
それから葵ちゃんとは親友並に仲良くなれた。狩屋君とはまだ話せてない。というか話せないんだ。誰だって好きな人の前では息が上がる。息が上がって、心臓の鼓動が早くなって顔が紅潮する。まだ狩屋君の事は全然知らないのだけど、ずっと背中を見てきたんだ。やはり改まって話そうとすれば話せない。そんな勇気私には無いんだ。慣れてないからこそ、かもしれない。
「え、嘘。…放課後?」
「うん。あ、また話聞いてなかったんでしょ。今日日直でしょ?明日のクラス会の準備を残ってしなさいだってさ」
「えー。だって今日サッカー部練習あるでしょ」
でも、でもだ。何故寄りによって放課後なんだ。私は担任を酷く恨んだ。だってさ、放課後って、あれから毎日の様に友達とサッカー部に顔出してるんだよ。神童先輩のファンに塗れて、何時も狩屋君を見てる。狩屋君のあの柔軟性は今も健在だった。狩屋君が動くたびに其れはもう胸がトゥントゥクして、今本当にハマリーヨしてるんだ。
さて話が反れてしまったけど、今日は運悪く日直で明日のクラス会の飾りつけを行わなければいけない。放課後はまた何時もの様にサッカー部見に行きたかったんだけどな。
「はあ、本当に、ツイてない」
×
時間が経つのは本当に早いものだ。うかうかしていたらあっという間に放課後になってしまった。帰りの仕度を早めに済ませて教卓へ向かう。
「じゃ、此れ全部飾り付けといてね」担任から説明を受け、担任は職員室へパタパタと翔けて行ってしまった。さて、此れだけ量が多ければ今日は見に行く時間が無いな、と内申ウンザリしながら作業に取り掛かる。
×
作業を始めて20分は経過しただろうか。時計見てなかったから分かんないや。だが一向に作業が終わらない。私の手際が悪いのか、はたまた量が多すぎるのか、多分両者だろう。プラスチックの箱に入った飾り付けの品は中々減らなかった。
壁に大きな花飾りを付けたいけど、げ、背が小さくて全然届かない。あ、小さいとか言うな。棚に上って背伸びをしてみるが、今一とどかないんだ。後少しがもどかしくて遂にはジャンプまでしてしまう。えいっ
「おーい。パンツ見えてんぞー」
あの妙に嫌気がさす、下品な声がして、あーあ可哀相にと同情する。良くアニメやドラマで見る光景だろう。たまにこういう下品な男子が居るもんな、全く持ってデリカシーが無い。引っ掛かる女子の気持ちも考えてみろっての………と、此処まで様々な思考を張り巡らせてから気がついた。此の教室に居る女子は私だけである。そうなると此の声は、
「え、わ、私っ!?」
私に向かって放たれた事になる。恥ずかしくて振り向く事すら出来ない。そろそろと後ろに手を回してスカートを勢い良く押さえれば立て続けに声がした。
「そーそー、隠せば良いんだよー。」
と、此処まで来てまたある事に気がついた。この声は何処かで聞いた事がある、と言うより毎回舐め取る様に聞いているあの声だ。大好きな、狩屋君の声だ。毎回意識を集中して聞いているんだからこの私が聞き間違えるはずは無いだろう。
途端に恥ずかしくなり、持っていた花飾りがはらりと落ちる。何で此処に狩屋君が居るのか、そんな事よりも好きな人に下着を見られたという事実の方が致命的でへなへなと其処に座り込んだ。
「…見た?」
「……否、だから見えてたんだって、」
顔が紅潮し涙が浮ぶ。恐る恐る振り向いて聞けば呆気ない顔をした狩屋君と目が合った。否、もう少し無いのかよ。事故であっても女子の下着見ちゃったんだからさ、赤面して謝るとかさ。慣れてるの?否々、慣れてちゃ逆に怖い。
何か私だけ意識してるみたいで恥ずかしいな。でも折角狩屋君と話せたのに、そのキッカケが此れなんて余りにも酷すぎるだろう。
「でも、お前鼠なんて履いて来るなよな」
「ね、ねずみ…?」
下着の話をしているのだろうか。え、でも鼠?え、は?
「…ミッ●ー…の事?」
「は?」
“あ、知らないんだ”。そう直感的に認識する。でもこの時代ミッキー知らないって如何なんだ。ふと笑いが込み上げて来る。
「……ぷっ…。」
「あ…。ミ、ミミミ●ッキー位知ってんよ!?」
「嘘だあー。絶対知らなかったでしょ」
「う、うっせえ!」
今度は狩屋君が赤面をする番だった。可愛いな、そう思いながら狩屋君に輪っかを渡した。
「折角だからさ、手伝ってよ」
「…お、おう」
夕暮れ時。教室に初々しく影が伸びた。中学一年の夏。
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