二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【短編集】 True liar 【inzm】 ( No.13 )
- 日時: 2012/04/06 12:21
- 名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)
夜桜様リクエスト
「眩しくて純粋なもの」
昼時のイタリアエリアのグラウンド。そこではフィディオがボールを蹴っていた。
日は高く、かなり熱いだろうが、そんなのお構いなしに個人練習をしている模様だ。
「フィーディオっ!」
唐突に後ろから聞こえた声に聞き覚えがあってフィディオは振り向いた。すると、黒っぽい、でも茶色の綺麗な髪を揺らして少女が走ってくるのが見えた。
最近、あの少女、舞衣香が良く遊びに来る。フィディオからすればとても嬉しいことだ。サッカーが上手いし、話していて楽しい。彼女といる優しい、楽しい時間がひどく好きなのだ。
「舞衣香。今日も遊びに来たのかい?」
「うん!なんかここに来るの楽しくって!」
相変わらず元気だなぁと心の中で思いつつ、足を止めて舞衣香がグラウンドに入ってくるのを見つめていた。
「今日はサッカーしに来たの!ねえやろうよ!」
元気のいい声と笑顔を振りまきながらグラウンドの入り口にある柵を軽々飛び越える。飛んだ反動で綺麗な髪がふわりと宙を舞う。綺麗なその動きに目を奪われてしまう。
ハッとすれば舞衣香はもうすぐそこまで走って来ていた。
「どうしたの?フィディオ」
不思議そうな、そして心配そうな顔を向け、じっと瞳をのぞきこまれていた。
「あ、いや、二人でやるのかなって思って……」
「え?当たり前じゃん。別に大丈夫でしょ?」
そう言ってフィディオの足元にあったボールを手に取る舞衣香。徐にそれを蹴ってドリブルを始めた。
フィディオも舞衣香とサッカーはしたかったから、何も言わずにボールを奪いに行く。が、見事なボールさばきでかわされてしまう。めげずにもう一度。少し足にボールが掠るが奪うまでは行かない。
「あっちが私のゴールね!向こうがフィディオのだから!!」
そう宣言するかのように言ってフィディオのと言ったゴールに向かっていく舞衣香。勝負となれば負けるわけにはいかない。
舞衣香の前に立ちはだかり、抜かせまいとフェイントに何とかついていく。
が、一瞬の隙をついて見事に抜かれ、ゴールに強烈なシュートを叩きつけられた。
* * *
「あ〜、疲れた!!」
吐き捨てるようにそういいつつ、グラウンドの横にある芝生に倒れていく舞衣香を視界の端でとらえながら、フィディオも芝生に倒れる。
ひんやりとした草が、運動したことで上昇した体温を奪っていってくれる。乱れていた息を整えて起き上がれば空を見上げている舞衣香が写った。
「空、綺麗だね」
唐突に呟かれて一瞬驚くが、声はさっきの元気なものとは少し違い、驚くほど優しかった。
舞衣香が綺麗だと言ったから、空を見上げてみる。太陽が高く、雲はほとんどない、透き通った空。吸い込まれそうなほど、綺麗だった。
「そうだな。凄く、綺麗だ」
そう返してみれば楽しそうに笑う君。
その笑顔が眩しくて、綺麗で。太陽も高くて眩しいけれど、君の笑顔もひどく眩しい。
「ねえ、舞衣香」
「何?」
丸い目を向けて、こちらの言葉を待っている舞衣香。桃色の綺麗な目がこちらをじっとみているのが嬉しくて、少し覗き込むようにその目を見てみる。
すると、また一段と目を丸くして不思議そうにする君。
「君はいつもそうだね」
笑いながらそう言ってみる。舞衣香は不思議そうな顔を傾げてこちらを見ている。きっと何を言っている分からなかったのだろう。一瞬、どういうことか言おうと思ったが、やっぱりやめておいた。
分からなくていいと思ったから。そんな純粋な君と一緒にいたいと思ったから。
「もうちょっとサッカーする?」
そう聞けば満面の笑みを浮かべてこちらをみる、純粋な君。
「するする!!行こう!!」
そう言って我先にと起き上がってグラウンドに走っていく。
揺れる髪に太陽の光が反射して輝く。そして振り返ってこちらを見るの笑顔も綺麗に輝いていた。