二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  皓々と照る月 【REBORN】 ( No.13 )
日時: 2012/06/29 17:16
名前: なゆ汰 ◆TJ9qoWuqvA (ID: 6vo2Rhi6)

 夏休み。「今からツナん家来い」と非通知のメールを私のクソ携帯は受信しやがった。何処からどう見てもあの黒い赤ん坊の書いた文章としか思えない命令形のメールにはご丁寧に沢田の家の住所と地図が添付されている。P.S.と書かれた言葉の次には「俺の番号登録しとけよ。あと着拒にしやがったらぶっ殺す」という文章付き。もう泣いていいですか。あの人権ガン無視な理不尽野郎を誰か殺してください。切実に。いやまじで。メールを見ながら辿り着いた先には普通の民家があった。沢田と書かれた表札を3度ほどちら見してから、インターホンを力いっぱい押す。ぴんぽーん。するとあわてたようにぱたぱたと走る音と共に、ドアが勢いよく開け放たれる。そこには、美人な女性(おそらく沢田の母)がにっこり笑いながら立っていた。


「あらぁ?可愛い子ねー。ツっ君のお友達かしら?」
「いえそんな。お母様の方が可愛らしいお顔立ちをしていらっしゃいますよ。あ、私の名前は東城夕です。ところで沢田…いえ、綱吉くんとリボーンくんはいらっしゃいますか?」
「まあ!嬉しいわ〜♪ツっ君とリボーン君は、多分2階にいるわ。あがって、ユウちゃん!」


美人な沢田母が、沢田の部屋へと案内してくれた。てかリボーンくんが呼んだのになぜ迎えに来ない。非常識なやつめ…。と思いながら2階への階段を軽快に上っていく。ツナと書かれた札のぶら下がるドアの前で立ち止まると、沢田母はコンコンとドアを叩きつつ、「お友達がいらっしゃったわよー」と一言。友達!?と中から声が聞こえて、私はドアを開けて中にいる人物を見下ろした。

…沢田、とごっきゅんと、山本と、見知らぬ女の子(かなり可愛い)。


「あっ…!東城さん…!?」
「はろー。沢田、ごっきゅん、山本。」
「ごっきゅんじゃねーって言ってんだろーが!それに10代目を呼び捨てにすんじゃねー!」
「東城じゃねーか!小僧に呼ばれてきたのか?」
「はひー!このビューティフルなレディはどなたですかー!」


…一気に離しかけられても困るんですけど。てか何してるんだこの人たち。何気なく目をうつしたプリントには補習という文字が。成程。こいつ等(獄寺と女の子のぞく)は補習で宿題を配られたけど問題が解けないから私が呼び出されたってわけね。私の状況判断力パネェ。けど、獄寺にわかんない問題が私にわかるわけねーじゃん。と思いながら、床に腰掛けて沢田の手から乱暴にプリントをかっぱらう。


「こんなの私にわかるわけないじゃないか。ナメてんのかコラ」
「逆ギレーっ!?」
「てめえこそナメてんのか!10代目に暴言使うんじゃねー!」
「だってこれ意味わかめ。」
「古ーっ!?」


沢田ってばツッコミ激しいなあ。正直引くわー。若干哀れむような視線で沢田を見れば、沢田はあわてたように「なんだよ!」と叫んだ。いやあなんでも、と意味ありげに答えつつ、目の前の難攻不落の問題とにらめっこ。意味わかんない…。これあれじゃないか?ネコなんたらの公式使うんじゃなかったっけ。まあどうでもいいけど。途端にめんどくさくなった私はそのまま机に突っ伏した。ねむい。てか何のために私ここに来たんだ。ハンモックの上で寝ているリボーンくんに軽く殺意を覚えながら、自らも瞼をおろす。おやすみー。


「…あれ?東城さん寝ちゃった?」
「このクソ女!10代目の机で寝やがって…!今すぐ叩き起こしましょうか!?」
「いや、いいんじゃね?だってさ、」
「はひ!気持ちよさそうに寝てますしね!寝顔キュートです!」





***




「ん…お母さんそのたい焼き私の……。…?んん、あれ。ここどこだ。」


起きたらいつのまにか布団の上に寝かされてた。…?辺りは暗く没していて、数人の寝息が聞こえる。沢田とリボーンくんだ。まさか、あのまま寝過ごしたかんじ?ふと見た机の上には、解き終えたプリント。問7のところには4と書かれてある。…途中式、なくていいのかな。そう思いながらも、私にはさっぱりわからないのでスルーの方向で。なんとなくまぬけな顔して眠る沢田のほっぺたをひっぱって、目を開けたまま寝るという器用なことを成し遂げるリボーンくんを若干の殺気をこめて睨んだ。すると、その殺気に気づいたのか、リボーンくんが私に銃を突きつけた。とくにそのことに驚きもせず、銃口を手で覆う。


「あぶないなあ、リボーンくんてば。」
「……お前か。殺気こめて睨むんじゃねーぞ。せっかく気持ちよく寝てたってのに。殺されてーのか?」
「そんな馬鹿な。殺されたい奴なんてどれほどいるのかね。私がその中に入ってないのは確かさ。」


おちゃらけたように笑っても、リボーンくんは無表情のままだった。私も笑うのをやめて、リボーンくんを無表情で見つめ返す。


「お前、そんなにマフィアになりたくないのか。」
「何いってんの。あったりまえだろーが。私はただの平凡な並中生。私の学力でいけるようなフツーな高校はいって、アルバイトして、できるなら大学入って、就職して。それなりのお金がたまったら収入もそれなりに悪くない人と結婚して寿退職。子供は2人くらい。ごくごくフツーの人生を歩むはずだった。…どうしてこうなったんだろうか。いつから道を間違えたんだろうか。」
「オレはファミリーに入れると決めたらマジで入れるぞ。もうそんな人生は歩めねえ。諦めろ。お前はマフィアになって非凡な人生を歩むんだ。それがお前の運命ってモンだぞ。」
「…こんな、はずじゃなかったんだ。どうして、平凡に生きさせてくれないんだ…。どうして、」


——私なんだ。その声は、あまりにも小さすぎて、誰にも拾われることは無かった。ただ、これからの人生に絶望を感じた。それだけ。リボーンくんに聞けば獄寺も山本(本人は遊びだと思ってるらしいが)も、望んでファミリーになったそうじゃないか。ご苦労なこって。けど、私はイヤだ。無理だ。望んでファミリーになるなんて。


「…ユウ。オレが、憎いか?」
「憎くは、ない。けど、嫌いだよ。お前なんて。」
「……そうか。オレは結構お前のこと好きだけどな」
「………嬉しいよ。ありがと。」


そう笑うと、リボーンくんはだんまりと口を閉じた。それでいいと思う。これ以上話せば、私はリボーンくんを責めてしまいそうだから。どうして私をマフィアになんかしようとするのって。


——憎んではない。けど、嫌い。あまりに不完全で一方的。それが、私たちの関係。


「どうしてこうもうまくいかないのかな…」


こんな理不尽な世界など、消えてしまえ。


@黒く塗りつぶされた運命の行方(標的10)