二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 『イナGO』-アドニス〜永久欠番のリベロ〜 ( No.14 )
日時: 2012/11/13 20:17
名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)

第五話 『足手まとい』

あの美人監督、—狩部蘭子—に半ば拉致られるようにおれと太陽は新雲サッカー部に入部した。
狩部監督って、アホなのか?
ま、サッカー関係者にアホはいても、悪人はいねぇわな、と思うとずいぶん精神的に楽になった。

入部初日。
紅白に分かれて練習試合だ。
おい、いきなりかよ。
実力が均等になるように狩部監督の方でチーム編成をした。
おれは紅、太陽は白で違うチームになっていた。
……そらそうだわな。
昨日のあれを—太陽とおれがあっさり先輩からカットしちまったこと—見せつけられちゃ、監督も考えるだろうよ。


ピィ—————!!

紅のキックオフで試合開始。
根淵先輩が持って上がる。
ディフェンスを残して、他のMFの先輩達も上がる。
おれは中盤の左端で何もしないで突っ立ってる。

前線でパスに乱れが出て、太陽が逃さずカットした。
太陽が、がら空きになっているおれの右側を抜けようとする。
……おれが逃がすと思うな。

おれは一瞬のうちに地面を10回以上蹴ってハイスピードカメラにも収まらないほどのスピードで動く。

「詰めが甘いぜ」
「なっ……!」

太陽が気づいた時にボールはおれの足下にあった。
すぐ、10番の樹田先輩にパスを出してボールを前線に戻した。

「ねぇ、尊」
「ん?」
「君…"勝利の王子"?」
「確かそんな異名だったっけな〜……。多分」

人差し指を額に突き立てて、あえて覚えてない振りをする。
覚えてないはずがない。
"勝利の王子"ってのは、おれの異名だ。

「ま、試合に集中しようぜ。その話は預けよう」
「そうだね。負けないよ!!」
「おれの台詞取んなよバカ」

太陽は反対側のゴールに向かって戻っていく。
おれはそこから動かずに待機する。

——なぜか。




おれは……シュートが打てない。



打てたとしても、入らない。
つまり、役立たず、足手まといということだ。
身長173㎝で、体格はよくてもシュートが入らないなら、前線にいるだけでチームメイトの邪魔をしてしまう。
ただのでくの坊だ。

だからおれは、相手陣内には入らない。