二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 『イナGO』-アドニス〜永久欠番のリベロ〜 ( No.25 )
日時: 2012/11/16 18:10
名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)

第十話 『お前はバカか』

天馬に聞くまでもなく、剣城の居場所はつかめた。

【稲妻総合病院】

何だってあいつがそんなところに。
怪我でもしてるのか?
どこぞのスパイ映画のようにおれは剣城の跡をつけた。
気づかれそうになった時は電信柱の陰に横を向いて隠れた。
電柱がなければ壁にへばりついた。

おれも病院に行かないと行けなかったし、ちょうどいいと思って、あいつの行った先も見ることにした。
剣城が病室の一つに吸い込まれていくのが見えた。
その病室の前に書いてある名前は

【剣城 優一】

名字がいっしょだった。
スポーツとナンパ以外に能がないおれにだって分かる。
ガキでも分かる。
剣城は、兄弟の見舞いに来たんだ。

おれはその病室のドアをノックした。

「どうぞ」

蠱惑的なテノールがおれの聴神経に反響した。
やべぇ……。
この声ある意味殺人兵器だろ。

ドアを横に引いて、中を見た。

「えっと……君は?」

両者とも緋色の髪に蜜色の目だ。
おれがつけてた剣城はとげとげしい印象だったが、さっきの声の主は柔らかい雰囲気が漂った人だ。
兄弟でえらい違いだな。

「おれは和藁尊。京介君の同級生です」

一芝居打ったら、優一って人は大人の対応をしてくれた。
つか、‘京介君’て、自分で言っておきながら気持ち悪い。
昼に食った弁当吐きそう。
これが芝居でなきゃ君付けなんかするかっつーの!

「悪いんすけど、京介君借りていいですか?」
「いいよ。ゆっくり話しておいで」
「に、兄さん!おれはこいつと何も——「おれはいいから」……あぁ」

剣城—優一じゃない方—は不服そうだったが、兄の言うことには逆らえないのか渋々といった様子で病室を出てきた。
おれはドアが隙間無く閉まったのと同時に剣城の腕を引っ張って—というか引きずって—屋上まで連れてきた。

「何のつもりだ……」

剣城が虎でもびびる位の目で睨んできた。
お〜、怖い怖い。

「まず最初に言う。お前はバカか」
「いきなりバカとは何だ!!礼儀知らずにもほどがあるだろ!!!」

剣城が牙を生やして怒った。

「おれは色々とコネがあるから知りたいことはすぐに分かるんだよ。お前、兄貴の足を治す手術費のためにフィフスセクターでシードやってるんだって?」
「なぜそれを……!?」

剣城は鋭さを帯びた表情から驚愕の色を乗せた顔に転移させた。

「言ったろ?おれは知りたいことがあればすぐに分かるって」
「………………」
「優一さん?だっけ?あの人が12歳、お前が7歳の時に二人でサッカーやってて、優一さんが足を怪我したそうだな…。
そんでお前は兄貴の手術費をどうにかしようとしてフィフスセクターに身売りか」
「身売り言うな。言い方が生々しいぞ」
「表現としちゃ大げさじゃないと思うぜ。兄のために金を稼ごうと体を売る弟……。感動的じゃねぇか!!」

笑い飛ばしてやった。
おれの価値観から言えば、ばかばかしくてしょうがなかったから。