二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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夏目友人帳 _________記憶ノ欠片_________
日時: 2010/07/15 17:36
名前: 黒猫 (ID: l2kw0s63)

初めまして、黒猫といいます。
今回は僕の好きな漫画の、【夏目友人帳】を書かせていただきます。

夏目友人帳が好きで、時間に余裕のある方、暇つぶしにでもどうぞ。

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Re: 夏目友人帳 _________記憶ノ欠片_________ ( No.1 )
日時: 2010/07/15 17:49
名前: 黒猫 (ID: l2kw0s63)

____________ふーん、そう。 あなたの棲んでる処、春には桜が綺麗なのね。
 ...............私? もちろん、桜なんて興味ないわ。
あんなの、人間が見て喜ぶものでしょう?

 ...........でも、そうね。
そんなに綺麗なら、興味が出たらあなたの名前を呼んで、連れて行ってもらうわ。

____________________________じゃあ、興味が出たら。まったね〜。



銀色の髪をもつ少女が、小さく上げた手を振った。
そこには桜は舞っていなかったけれど、
小さな約束を残して、澄んだ空と重なる道に、
彼女は笑いながら消えていった。

Re: 夏目友人帳 _________記憶ノ欠片_________ ( No.2 )
日時: 2010/07/15 18:14
名前: 黒猫 (ID: l2kw0s63)

_______________________春。


草花が咲き乱れ、
春の訪れを知らせている。
空には幾つもの桜が舞い、
ヒラヒラと舞い落ちては、
地へと還っていった。

そんな道を、夏目は一人歩いていた。

「先生、祭にはたくさんの人が来るんだから、ちゃんと猫らしくしてろよ。」
夏目がぼそりと呟く。
「分かってる、全ては桜餅の為だ!!」
そう答えたのは、夏目の細い肩にのった、
愛嬌のある_________しかし可愛いとも言えない、
奇妙な招き猫のような太った猫。
彼の細い肩にのっていられるのは、
ほぼ奇跡に近いだろう。

「全く…桜餅の為だけに付いてくるなよ。
また太るぞ、ニャンコ先生。」
「太ってなどいない!!」
ギッと自分を睨む先生を、
夏目は見て笑った。

友人の話によると、
どうやら今日近くの自然公園で祭があるらしく、
それに行ってみることにしたのだ。
………半分先生の我儘だけど。

もちろん友人というのは人間ではなく、
普通の人には見えないあいつらのこと。
でも祭は人間がやってるみたいだし、
楽しそうなので、興味本心で行ってみることにした。

「さっさと歩け、グズめ。」
「なら自分で歩けよ。」
「この私に歩かせる気か!?この高貴な私を!?」
「はいはい。」
少し遠い所に、ざわめいている人の影が見える。
「おっ、あれだな。」

夏目は銀色の髪をなびかせて、
祭の会場へと走った。
その反動で、先生は地面に転がり落ちた。
「こら!!待たんか夏目!!
私をおいてく気か!?」
「ははッ」

笑い声が空気を揺らし、
空に響いた。
風が頬を撫でると同時に、
桜の花びらを散らせた。

Re: 夏目友人帳 _________記憶ノ欠片_________ ( No.3 )
日時: 2010/07/15 18:59
名前: 黒猫 (ID: l2kw0s63)

「あれ?意外と人少ないな…。」
会場を見た夏目の言葉。
確かに、祭にしては人が少ない。
「当たり前だ。」
肩に重い感触が戻る。
「先・生………でも何故?
桜が綺麗でいい処なのに。」
「ここには、昔から神が棲んでいるとされているのだ。」

桃色の浴衣を着た可愛らしい少女が、
目の前を通り過ぎて行った。
「この祭は、その神の怒りをおさめる為にやるんだ。」
「怒り_______?」
夏目の不思議そうなトーンの声が、
先生の耳に届く。
「あぁ、そうさ。
中央に大きな桜があるだろう?」
先生に促され、中央に目をやる。
そこには、今までに見たことのないような、
大きくて、美しい桜の木があった。
しかし、花をつけていない。
「あの桜の木に伝わる言い伝えさ。」
先生が、こんな話をした。


遠い昔、あの桜の下で一人の神様が休んでいた。
そこへ一人の女性が通りかかった。
女性はそれはそれは美しく微笑んで、゛こんにちは゛
とその神に挨拶をした、彼の正体も知らずに。
彼はその女性に恋をし、
あるひとつの約束を彼女とした。

゛この木が花を咲かせたら、また会わないか?゛

彼女は微笑んで頷いた。
その日から彼は次の春を楽しみにし、
木に花が咲き乱れるのを待った。

「…」
「しかし桜の木はもうすでに果てていて、
約束の時に花をつけることはなかった。」

彼はその事に嘆き、そして怒った。
桜の木を斬りおとしてしまおうとさえ思った。
しかし彼女との思い出の木を、
彼はとうとう最後まで斬ることはなかった。
そして今でも、その力で木を守り続けている____________。


「女性はどうしたの…?」
「さぁな、私には関係のないことだ。」
「ふーん……。」
゛レイコ゛
声がした、今にも消えてしまいそうな声。
夏目は先ほどの桜を見やる。

漆黒を思わせる黒い生地に、
白い桜を散りばめた着物を着た男が、
木の枝に座っていた。
顔は白いキツネの仮面をしていて、
表情を窺い知ることはできない。
゛............名.........を..........゛

「妖か…?返してほしいなら返してやる。
でもここじゃ人が多すぎる、他の場所で…」
゛何故だ?何故.........名を呼ばない.........?゛
言葉を遮られた。
とても……悲しそうな呟きに。
゛レイコ゛
「俺は…レイコさんじゃない。」
夏目は男を見つめて、そう呟いた。
「夏目、ここでは他の人間も巻き込むぞ。」
夏目がハッとし、辺りを見回す。
確かに…ここで争ったら、
他の人にも迷惑がかかる。


ふと夏目は目を桜の奥にやった。
大きな桜の奥……そこなら誰もいない。

「あそこなら…ッ!!」
夏目は地を強く蹴り、走り出した。
地に下りていた花びらが空を舞い、
風に少し流されたかと思うと、
自分の母なる桜に身を寄せた。


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