二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 東方魔戒録
- 日時: 2010/12/08 05:14
- 名前: ミカギ (ID: jvWBucyN)
- 参照: http://story.awalker.jp/evihurai/
幻想郷。非常識こそが常識的で、非現実こそが最高のリアルな世界。妖怪、妖精、はたまた神様までもが住まう悠久の常代に、全人類に復讐を誓う悪霊がいた。
死してなお、憎しみに生きる魔女。彼女が復讐者として生まれたのは、遠い昔の記憶。
愛した人間だからこそ、許せない。
愛した人間だからこそ、殺さずにはいられない。
愛した人間だからこそ、まだ愛したままでいたい。
霧雨魔理沙。
願い、嘆く彼女の前に、その少女は唐突に現れた——
さあ、ぐだぐたな小説を書いてくよ!
- Re: 東方魔戒録 ( No.1 )
- 日時: 2010/12/01 03:05
- 名前: ミカギ (ID: j24nS2D/)
逢魔が時。満月が次第に妖艶な光を帯び、太陽の沈む時を待ち侘びる。空に浮かぶ綿埃のような雲は遠くへと流れて行き、寂寥の感情が胸中で燻る。
広大な土地を支配する、大森林。彼らの支配から逃れた先にも、緑が穏やかに夢現の郷を染めていた。
残照に描かれた深緑の美しさを、どれ程の人間が知っているだろうか。どれほとの人間が知ることもなく、線香花火のようにか弱く短い生涯を閉ざしてしまうのだろうか。その自然の美しさに“慣れてしまった”化物を、一体どれくらいの人間が知っているだろうか。
不純物の情報が生む、無意味な疑念に停滞していた思考。それは、容赦のない一撃で覚醒した。
利き腕上腕二頭筋に食い込む、赤茶けた杖。上弦の月を思わせる、淡いアレキサンドライトの装飾を先端に飾るそれは肉を潰して骨を軋ませ、尚も勢いは止まらない。
「——っ!」
刹那、身体が浮き上がった。
敵から遠のく。
身体が、敵から逃げている。
力の差を感じる。
人間の限界を、感じる。
それでも、博霊霊夢は、逃げる気などなかった。
樹々を薙ぎ倒して大森林を抜けたところで、霊夢は平原を転げ、草鞋で勢い余った身体を滑らせる。熱を帯び、焦げ臭くなった草鞋を履き直し、森林から顔を出す忌まわしい復讐者を鋭利に睨んだ。
妖艶な笑みを浮かべる、敵。裾に白い直線を描いた、青いローブに青いクローク。翼のようなシルクを両端に伸ばした、青い円錐の帽子。一見静かな印象を与えるが、それは違った。
杖に装飾される月形の杖と、帽子に描かれた太陽と星の紋様。強大な自然の産物を象ったそれは、自分の力を誇示していた。
彼女は霊夢の無事を知ると、嬉しそうに口元を吊り上げ、ミシミシと軋んだ音を立てながら、背から藍染めの翼を伸ばした。
「魅魔、様……」
よろよろと、力なく森林の茂みから顔を出した、化物の弟子。人間でありながら、人でない存在に染められた、ブロンドの少女。
「……見てな。魔理沙」
化物、魅魔は彼女を一瞥すると腕から燐光を散らしながら掌に旋風を生み出し、構えた。
「これが、お前の答えだ」
その一言を残し、魅魔は満身創痍の霊夢へと飛翔した!
それが何を意味していたのか、魔理沙には分からない。
それが何を望んだことなのか、魔理沙には分からない。
まるで、全てを予め知っていたように。
まるで、全てを清算するかのように。
人間と、妖怪。その戦いは、終止符を打たれた。
- Re: 東方魔戒録 ( No.2 )
- 日時: 2010/12/02 10:57
- 名前: ミカギ (ID: nQqcPBd1)
——そこには、一人の魔女が住んでいた。
辺鄙な森。穏やかな風が木の葉を奏でる、生命に溢れた新緑の世界。妖精が樹の幹で可愛らしく昼寝をしている姿すら見受けられる森に住まう魔女。
とても美しく容姿で、人間を惑わすと噂される魔女。
とても残忍で、関わったら命の保証がないと噂される、魔女だ。それらは自然に溢れる聖域を保っている秘訣、といったところだろうか。人間は怖れて森には近づかず、平穏だけがその森を包み込んでいた。
ただ平凡に流れる、日常。善し悪しもなく、是非もなく、時を刻むための空間。そんな世界に存在する、魔女。腰まで伸びた深緑の髪。紫のローブが魔女という印象を際立て、整った容姿は大樹を見上げ、屈託のない笑みを浮かべた。
「おはよう。今日もいい天気ね」
妖精は枝から眠たそうに目を擦り、朗らかな笑顔を返してくれた。警戒心の見せない、マイペースな森の民。人と関わりを持たない魔女の唯一の親友だ。
「今からごはん?」
「一緒に食べる?」
「うん」
枝から虫のような羽を高速に羽ばたかせると、妖精は魔女の傍らに飛び降り、彼女の桶を手に取って陽気に笑んだ。小さな子供のような容貌で悪戯を好むとされる妖精。しかし、彼女は悪戯好きということもなく、真っ直ぐに魔女を慕ってくれるかけがえのない存在だった。
二人はともに鼻歌を歌いながら彼女らを育む母体を闊歩し、澄み切った音の流れる方角へと足を運ぶ。
誰かが望んだわけでもなく、彼女は今を生きる。己から生命を干渉することもなく、無益な殺生を好むわけでもなく。魔女は、知識を得る娯楽と、命を繋ぐ最低限の水と食料を、森から与えられる。無害という言葉が相応しい、それだけの存在だった。
生い茂る背丈のある雑草を掻き分けた先に、大らかで、ゆったりと流れる澄み切った川が広がる。目を凝らせば幾つも生命の影が見受けられ、自然の存命を知ると共に、魔女はおもむろに指を伸ばした。
「……捕らえろ」
途端、川の表面が盛り上がり、膨張と共に破裂する!
サアァッと一帯に降り注ぐ飛沫。近場の樹で気持ち良さそうに昼寝をしていた妖精達の可愛らしい悲鳴を耳朶に触れながら、魔女は桶を伸ばし、飛沫に紛れた生命を受け取った。
一匹、二匹。綺麗に桶へと投入された銀色の光沢を放つ魚は派手に暴れ、彼女の顔に飛沫を浴びせる。
「ひゃうっ、つめたーい」
全身に飛沫を浴びた妖精はふるふると身体を震わせ、ややあって、川の上流を指差した。
「ねぇ、魅魔。あれ……」
「うん?」
川の流れを固定していた力を解放し、魔女は一匹の妖精が指す方向に視線を移した。
上流からゆったりと流れる、大木。その身体に力なく張り付く、肉の塊。
「人間……?」
ボロの服を纏う、男。機敏に木陰へと逃げる妖精を尻目に、魔女は膜のような鈍い光を宿した手を彼へと伸ばした。
「おいで……」
共鳴するように大木に光が宿ったかと思うと、魔女の手繰るような手の動きに同調して、川の流れに逆らいながら彼女の近くへと男を運んだ。
「なんで。た、助けるの?」
「生きているんだ。放っておけないだろ?」
魚の入った桶を置き、水に身体を沈めながら、流れに逆らい続ける大木から男を引き剥がした。
「酷い怪我……」
男の身体に刻み込まれた無数の切り傷。人の仕業か、妖怪の仕業か。斯様なことなど疑問に持たず、魔女は彼を救うことだけに没頭した。
蒼白になった男は濡れそぼつ身体を震わせ、低く唸る。魔女は彼を優しく抱えると、ゆっくりと川から這い上がる。
「……人間なんて、汚いよ」
妖精の、露骨な軽蔑の言葉。その意味を、魔女、魅魔は知らなかった。
それが、始まり。
魅魔という化物を生み出した、始まりだ。
- Re: 東方魔戒録 ( No.3 )
- 日時: 2010/12/01 03:15
- 名前: ミカギ (ID: j24nS2D/)
朝焼けが重苦しい空をグラデーションし、世界は朝を迎える。
白んだ空を見上げながら軽く身体を伸ばし、半ば夢現だった意識を現実へと引き戻す。誰も阻むことの出来ない大いなる朝の恩恵を全身で受け止めながら、魅魔は気だるい身体を動かしながら深く息を吐いた。
平穏に訪れた、新鮮な刺激。上流から流れてきた、男。黒い髪に、薄地の布を纏っただけの服装。身分の高くない農民といった印象を漂わせる彼は、魅魔の下で傷の治療した。人間に有効な治療法を一から調べ、材料を妖精に調達させ、薬による処置を施した。
「あの人間、まだいるんだね」
大樹の陰から妖精は、不満そうに顔をしかめ、魅魔の前に立つと、鼻を抓んだ。
「分かるんだ?」
「凄く人間臭いもん」
「そ、そう?」
「朝焼けに美しく輝く母親のフローラルな香りが、雨の日に拾った捨て犬の悪臭に染められたという感じかな」
「あはは、いやに語るじゃない」
「だって、この森はわたしの親みたいなものだもん。それに、魅魔だって……」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか。じゃあ、少しは母親の我儘も受け入れてもらうよ?」
露骨に不満の表情に浮かべる妖精に苦笑し、ややあって、思いつめたように神妙に項垂れる彼女に、魅魔は眉をひそめた。
「どうした?」
「……最近、生物の様子がおかしい」
「おかしい?」
「なんていうかな。まるで、闇に干渉されるような、変な気持ち」
「闇?——妖怪の仕業?」
「わからない。けど、まだここにはこない。それでも用心だけはしておくべきかも」
「闇、ね。そういえば、その魔法は研究してないわ」
「ちょっと。きーてる?」
「さあ。どうだろうね」
悪戯っぽく笑みを浮かべた魅魔に頬を膨らまし、妖精は颯爽と茂みの奥へと消えてしまった。
ややあって、家の戸が軋み、戸の奥から、命を救った男の姿が現れた。
「あら。元気になったみたいね」
屈託のない笑顔にやや顔を強張らせ、彼は懸命に辺りを見回し、記憶を手繰り寄せる。それでも続く不安の表情は、欠片ほども記憶のない情景だったからだろう。
「動かないで。まだ、傷が塞がったわけじゃないから」
「……あの、ここは?」
「……魔女の住む森」
刹那、少し弛緩していた表情が瞬く間に硬くなる。人間の脳に埋め込まれた知識。洗脳。それが、男の脳を蝕んでいる証拠だ。
「あたしは、魅魔。実物の魔女だが、怖い?」
「……ちょっとだけ」
「そう。そりゃそうだ」
正直。それがどれだけ面倒な道を歩むのかまだ知らない幼子の答え。魅魔は苦笑いを浮かべながら耳にかかった髪を掻き揚げ、笑顔を作った。
「怪我が治ったら、村に案内してあげる。どこにあるの?」
途端、男の瞳から、生気が消えた。
「……村は、なくなったんだ。妖怪に、襲われて」
身を震わせ、心底恐怖するような弱々しい人間に、彼女は眉をひそめた。妖怪の中には、人間を食う妖怪がいる。故に、食物連鎖の均衡が崩れないために、人間の里を狙うことは人間だけではなく、妖怪を敵に回すことに繋がる。
(分かって仕出かしたのか。それとも……)
「……ごめん」
「なんで君が謝るの?」
「だって、あたし、魔女だし。妖怪と同じような、存在だから」
「魅魔は、違うよ」
「違わないよ。怖いんだろう?」
「魔女は怖いよ。でも、魅魔は怖くない。それじゃ、駄目かな?」
意外な、言葉。
意外な、存在。
その男は、森に住む魔女に確かな契機を与えた。
その男は、魔女の住む森で、確かな“咎”を生み出した。
- Re: 東方魔戒録 ( No.4 )
- 日時: 2010/11/30 06:01
- 名前: えいきっき☆ (ID: JrQ720Id)
おお〜☆
東方だ!魅魔様だ!
すごい面白いです!
がんばってください!
- Re: ありがとうございます^^ ( No.5 )
- 日時: 2010/11/30 17:04
- 名前: ミカギ (ID: j24nS2D/)
ありがとうございます!
頑張りますぜ!
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