二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケモン〜百合や蝶やと駆ける日々〜
- 日時: 2011/03/17 10:26
- 名前: 希癒 (ID: VzZBhHeS)
はじめまして。
こちらでは始めて小説を書かせていただきます、希癒(きゆ)といいます。
小説を始める前にいくつか注意事項です。
・本作はダイヤモンド・パールを基本に世界観を構成していますが、色々と作者の好きに混ぜたり、いじったりしています。
他作品の世界観(ポケスペとか)とは全く関係ないものと思ってお読みください。
・この作品は少ないながらも、人が死んだり、殺したりといった内容を扱います。苦手な方は読まないようにしてください。
・題名に百合とありますが、そういう要素は全くないので安心してくださいw
最後に応援コメなどなどしていただけると嬉しいです。
完結目指してがんばりますー、では。
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- Re: ポケモン〜百合や蝶やと駆ける日々〜 ( No.1 )
- 日時: 2011/03/17 11:17
- 名前: 希癒 (ID: VzZBhHeS)
窓から下を覗くと、高い木々が鬱蒼と茂るトキワの森が広がっている。
夜ながらも、今夜の月は明るく、したがってトキワの森も明るいはずなのだが、しかし、どこか妖艶な雰囲気を感じるのはこの森の噂のせいだろうか。
ニビとトキワを結ぶこの森は、行方不明者が続出することで有名な森だ。実際、中もかなり入り組んでいて、天然の迷路とさえ言われている。
しかし、この森を通過するものは少なくない。それはもちろん、ニビとトキワを結ぶのはこの森だけだし、迷路といっても、案内板に従って進めば必ず出口に着くよう整備されているからである。
それでも、何故かこの森で行方不明になるものは多い。
「行方不明……か」
あたしは呟いて、すぐに口をつぐんだ。ゆっくりと周りを見渡して——大丈夫、誰もいない。
ほっと、安堵の息をつく。
再び窓の外に目をやって、頬杖をつく。この後の日程を思い出すと、どうしても気分が晴れない。
「あの方に会えるのは嬉しいんだけどね……」
自分に向けて苦笑する。
あたしにとって、こういう一人でいられる時間は貴重だ。一人ならば、自分を偽る必要はない。
今は、自分を偽っているという自覚があるだけまだましかもしれない。しかし、例えば二年後、三年後となれば……どうだろう?
「ユリさん」
不意に、背後からあたしを呼ぶ、鈴を転がしたような可愛らしい声。振り向くと、そこにいたのは栗色の髪を少しカールさせた、十代前半の女の子。フリルのついた服を着ていて、それが異様なほど似合っている。
間違いなく、こんな所にいるような子には見えない。
「もうすぐ、本部に着くそうです。仕度をお願いします」
「ん。ありがと、ニノ」
「いえ」
最後に少し微笑んで、ニノは音もなく去っていった。
昨日までいたジョウト地方で引き入れた女の子。本当は引き入れたくはなかったのだけど……本人が勝手について来たのだから仕方がない。
あたしはニノが歩いていった先を見やって、ゆっくりと歩き出す。その先にあるのは、コクピットだ。
あたしの乗っている飛行艇は、本部の屋上へと着陸した。着くとすぐに、あたしだけが飛行艇を降り、本部内へと入る。
周りには、本部にいる部下達。全員が黒尽くめの服を着ている。
無機質な廊下を、一言の言葉もなく通り過ぎると、やがて重厚な鋼鉄の扉が姿を現す。
その扉は、異様なほど浮いて見え、それゆえに存在感を表している。あたしは、一度息を吐いて、軽く二回ノックをする。
返事はない、が、それはいつも通りだ。気にせず、静かに扉を開く。中はかなり広く、ちょっとしたホールのようで、奥に目をやると、大柄な男が机の上で手を組んで目を閉じている。
思わず緩みそうになった頬を引き締め、静かに歩み寄る。
男との距離が一定になったところで、あたしは片膝をついた。
「ただ今、ジョウトより帰還いたしました」
あたしの声が響く。すると、男は閉じていた目をゆっくりと開き、あたしを見やった。
「ご苦労だった。しばらく休め……と言いたい所だが、お前にはもう少しやってもらわなければならないことがある」
男がそこまで言うと、あたしはポケットに入れておいたチップを取り出した。
「このデータ……ニビの博物館の化石の場所が示されていました」
「そうだ。我々の計画のため、その化石は必要になる。頼んだぞ、ユリ」
「お任せください……サカキ様」
あたしは、力強く返事をしていた。
- Re: ポケモン〜百合や蝶やと駆ける日々〜 ( No.2 )
- 日時: 2011/03/18 10:27
- 名前: 希癒 (ID: VzZBhHeS)
ロケット団本部。
トキワの森の奥深くに、ひっそりと建てられたその建物は、ビルというよりも館という表現がぴったりくる。
本館を中心として、東西南北に一つずつ別館があり、全ての屋上にはヘリポートがついている。
あたしは、本館を出るとすぐに東館へと向かった。あたしの部下も、その多くが東館にいるはずだ。
まずはニビの下調べと、どれだけの規模で動くかを考えなければならない。
ニビにはジムもあるのだから、やはり慎重にならざるをえない。負ける気はないものの……邪魔が入るのはごめんだ。
「ニノ」
「はい!!」
「……やけに元気ね?」
「え!? そ、そうですか〜?」
にやにやと、体をくねらせるニノ。
あたしが男なら、その一瞬だけで惚れていたかもしれないというほどの可愛さだった。
「……偵察は飛ばした?」
「はい! もちろんですっ!」
ふぅ、と一つため息。偵察を飛ばしたのなら、しばらくやることはない。お風呂にでも入ろうかな、と思ったところで、ニノが妙にニヤニヤしながら脇に控えさせていた部下から紙袋を受け取っているのが見えた。
同時、あたしの中の何かが警告を発する。
「ユリさん……着てみませんか?」
満面の笑みで言うニノに、思わず苦笑してしまう。
「自分が着飽きた物のくせに」
「何度も言うけど、違うからね!? ユリのために取り寄せたものだからね!?」
ほとんど一種の決まり文句のようなやり取りをして、あたしは紙袋を受け取る。
中身を一瞥して、思わず眉をひそめた。
「……子供っぽい」
中にあるのは、ピンクのふりふりとか、水色のふりふりとか、オレンジのふりふりとか……どうでもいいが、なぜフリルのついたものばかりなのだろう?
「いや、だってユリは子供……おっと!」
ニノの言葉の途中ではなったローキックは、すんでのところでかわされてしまう。運動神経に関して言えば、あたしよりニノの方が数段上なのだ。
「あんたには似合うかもしれないけど、あたしにこんなのは似合わないっての」
「そんなことない……ですよ! あたしと身長も変わらないし、顔で言えばあたしよりも幼い感じが……わっ!」
予備動作なしの左ストレートだったが、やはり上手くかわされてしまった。
「全く……」
「もうっ、ユリったら暴力的! 野蛮人! 変態!」
「三つとも、特に最後に関してはまったく身に覚えがないんだけど」
疲れたように突っ込むと、ニノはにやにやとあたしの顔を覗き込んでくる。そして、その目を悪戯そうに光らせたかと思うと
「貧乳」
ぼそりと、しかし、わざわざあたしの目の前で言った。
「……」
「あ、あれ……? ユリ……?」
「いい度胸してるね、ニノ。そんなに……死にたい?」
あたしは満面の笑みで言う。すると、すぐにニノはにやにやとした笑みを引っ込め、冷や汗をたらりと流して引きつった笑みを浮かべる。
「あ……えっと、もしかして、地雷踏んじゃった?」
その問いに、あたしはにこりと微笑んだ。
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