二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【梨本うい】死にたがり
日時: 2011/08/03 20:38
名前: 美海月 奈真子 (ID: tHQCwfdH)

初投稿となります。美海月奈真子です。

梨本うい(梨本P)様の初音ミク(VOCALOID)曲、
「死にたがり」を、勝手に解釈して小説にしてみます!

世界観は人それぞれなので、不快に思われた方は、
直ちにプラウザバックすることをお薦めします。

誤字、脱字、共に多々あることと思いますが、

どうか暖かく見守ってやってください orz

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【死にたがり】 日常 ( No.1 )
日時: 2011/08/03 20:57
名前: 美海月 奈真子 (ID: tHQCwfdH)


* 日常



今日もつまらない位真っ青な空が、
この世界という箱の天井に貼り付けられている。
ゆっくりと動く白い雲。

ありきたりで、平凡な、そんな風景。

そんな風景とは裏腹に、今日も誰かが家に篭り、
『死にたい』と叫んでいるのだろう。

「ねぇ、真美ってば。聞いてる?」

目の前に居る自分の親友と呼ぶべき人が、
ムッと頬を膨らませ、不機嫌そうにこちらを見ている。
どうやら、話をずっと無視していたらしい。

「ごめん亜紀、何だっけ?」

わざとらしくあははと苦笑いを繰り返し、手を横に振る。
すると亜紀はぱっと表情を変え、嬉しそうに話し出す。

「2年生の翔太先輩!めちゃめちゃカッコイイのっ。」

ああやって怒ったくせに、している話は昨日と同じ。
どうしてそう何回も同じことを言ってて飽きないのだろう。
もしかしてそんなに格好良いのか?

「へぇ、そんなに?」

「もう、すっごく!モデル並だよぉ!」

亜紀はそう言うと嬉しそうに鞄から何かを取り出す。
興味深そうに私が見ていると、「じゃーんっ」と自分で効果音をつけながら、隠し撮りの写真を見せる。

犯罪だということを知らないのか。

「ね?ね?カッコイイでしょっ。」

そこに映っているのはごくごく普通の男子生徒。
そこら辺の人よりはカッコイイのかもしれない。
だけど、こんなのが一々モデルになっていたら、
世界の5人に一人はモデルになっているだろう。

これがいつも強制的に聞かされていた
亜紀の『私の運命の人』か。

私が微妙な顔をしていると、
亜紀が雑に写真を鞄にしまう。

「いいのっ、亜紀がカッコイイって思えばいいんだもんっ。」

じゃあ何で見せたの、なんて言わない方が良いのだろう。
誤魔化すように苦笑いをしてみせると、また亜紀は不機嫌になった。
でも、それは一瞬で、廊下に噂の翔太先輩らしき人を見つけると、
途端に目を輝かせ、廊下へ走っていった。

きっと、亜紀は一生死にたいなんて思わないだろう。
ああやって幸せそうに過ごしている人はそうそう居ない。



世界の死にたがりに亜紀の姿を見て欲しいものだ。




Re: 【梨本うい】死にたがり ( No.2 )
日時: 2011/08/20 19:30
名前: 美海月 奈真子 (ID: t7vTPcg3)

*しにたい


突然だが、私は風邪を引いてしまった。

高熱が出て、3日程学校を休んでしまった。
亜紀と翔太先輩の話をしなくていいのは気が楽だけれど、
やっぱり暇だ。つまらない。

やっと治ったかので明日から学校に行く。

何もしていないけれど、一日の疲れを落とすためにお風呂に入る。
湯船に浸かり、ふう、と溜め息を吐くと、
お風呂場の入り口においておいた携帯が鳴る。

誰だろうと思いながらも、入浴を終え、携帯のメール画面を開く。

[*亜紀]
[件名:無題]
[本文:死にたい]

そのメールは亜紀からだった。
今日自分が死にたいと思わないだろうなんて考えていた人物から
突如送られてきた「死にたい」というメール。

何があったのだろう。
一応「どうしたの?」と返信してみたが、
一向にメールは返ってこない。

しょうがない。明日直接聞こうとそのまま眠りについた。



* * * * * * * * * * * * * * * *



「亜紀。」

翌日、教室に入ると、すぐに亜紀が目に入った。
死にたいのに、よく学校に来れるな、と思いながら駆け寄る。

「真美……。どうしよう…。」

亜紀は私を視界に入れると、すぐに私の服を掴み、そう言った。

「死にたいよぉっ……。」

メールと同じことを繰り返すと、亜紀はその場で泣き崩れた。
わんわんと泣き出す亜紀は、そのまま倒れてしまった。
クラスの全員が私を見た。

「どうしたの?亜紀。亜紀っ。」

心配になった私は亜紀を抱え、保健室へ連れて行った。
養護教諭に席を外してもらい、理由を聞こうと、
ベットで寝ている亜紀の隣のイスに腰をかけた。

授業中だからか、凄く静かだ。

ふと、自分の手に亜紀の腕が当たったので、
手を引こうと視線を下にずらすと、
何本もの線が亜紀の腕に刻まれていた。

「え……?」

それがリストカットなのだということは一瞬で理解した。
私が声を出したからなのか、亜紀は目を開けた。

「亜紀…?大丈夫…?」

だるそうな亜紀を起こし、背中を擦った。

「真美…?あれ…。私…。」

「教室で倒れたんだよ。どうしたの?」

「………。」

そこで亜紀は押し黙る。
ぎゅっと握りこぶしを握り、私を見た。

「翔太先輩に…告白したの…。」

消えかかりそうな声で亜紀が話し始める。

「そしたら…

『俺とお前が付き合うとかありえねえ』って笑われたの…っ。」

「泣きながら帰ったら…翔太先輩のファンの子達に…っ、

『あんたみたいなブス、誰も相手にしないわよ』って言って…」


「家のパソコンとかに気持ち悪いメールが届いてっ…

無言電話とか…カラスの羽とか…机に置いてあったりっ…。

教科書とか破られて…机にカッターで文字彫られたし…っ…。」


話していると亜紀の喉が跳ね出す。
泣いているのだろう。

誰の仕業かわすぐ分かる。翔太先輩のファンだろう。
先輩も含まれているから何もいえないのも分かる。
ただ好きな人に告白しただけでそこまでされるとは…

まったく、軽く世の中に失望するよ。

泣いている亜紀の背中を優しく撫でると、
亜紀は「助けて」、「死にたい」と呟き始める。

リストカットはそのせいだったのか。

私が居なかったのは3日。
悪夢を思い知らされるには十分過ぎる。

「大丈夫だよ。亜紀。大丈夫。」

宥めるように声を掛けると亜紀はまた呟き始める。

「いいの…もう…、明日…死ぬから…。

そしたら…こんなに苦しまないで…済むからっ……。」

「そんなっ、死なないでよ。亜紀っ」

薄く笑う亜紀を私は必死で止める。



私は、あの時少しだけ気づき始めていたのかもしれない。
亜紀の気持ちに。本当の意図に。


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