二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【東方】Romantic Alice
日時: 2010/05/05 14:32
名前: 花森千風 ◆O6d6xo.9Cg (ID: OnRzE.oe)

 ——そして、アリスは目を覚ます。

  ここは幻想郷。結界により世界から隔たれた地。

  けれど、生きる者は彼女以外になし。


    これは、少女の描いたインターミナブル・フェアリーテイル





初めまして。花森千風(はなもり ちかぜ)です。
映画「アリス・イン・ワンダーランド」に触発されて短編を書くことにしました。
まだまだ掲示板の使い方などよく分かってないので手探りになりますが、
生暖かく見守っていて下さい⊂ニニ( ^ω^)ニ⊃




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 - 登場人物紹介 -
    >>1

 - 目次 -

  Chapter—1 
  >>2 >>3 >>4







原作 東方Project

Not 幻想入り
 
 不思議の国はあなたのもの


Copyright 上海アリス幻樂団 all right reserved

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About “Alice” ( No.1 )
日時: 2010/05/05 13:11
名前: 花森千風 ◆O6d6xo.9Cg (ID: OnRzE.oe)

- アリス -

 この世界のアリスです。
 常に自分の世界を夢見ており、それを心から愛しています。
 いつも本を小脇に抱えていますが、その内容は忘れてしまったようです。


- 見えない声 -

 いつ、どこにいても聞こえてくる声です。
 男か女か子供か大人か、そんなことはアリスにとっては瑣末なことのようです。
 つまるところ、彼女はこの声を好いても嫌ってもいないようです。

Chapter—1 ( No.2 )
日時: 2010/05/05 13:29
名前: 花森千風 ◆O6d6xo.9Cg (ID: OnRzE.oe)


 アリスはぱちっと目を開けました。

 どうやら彼女は知らないうちに寝てしまっていたようです。それも、身体のだるい感じからすると、かなり長い時間をかけて。

「大変だわ」

 そう言って勢いよく飛び起きてみたはいいものの、実は当のアリスには何がどういったふうに大変なのかはよく分かっていません。ただ長い間眠ったままでいたのなら、当然寝た分のご飯は食べられないわけですから、アリスは次にこんな独り言を呟きました。

「えーっと、私は何食食べ逃したのかしら」

 アリスは空を見上げます。頭の上には青くてきれいな空が、じゅうたんみたいに敷きつめられています。雲はうっかり落としてしまった綿あめのようで、ついでに太陽は砂糖をまぶしたハッカの飴玉みたいです。

「あら!」

 アリスは思わずそんな声を上げました。というのも、太陽が彼女の真上にあるのに気がついたからです。

「と、いうことは今はお昼なのね。もしも私が夜に寝たのなら、私はご飯を二回食べ逃してしまったことになるわ!」

 アリスは急いで立ち上がりました。これ以上食べ逃したりしたらお腹が減って死んでしまうかもしれません。早くお家に帰ろう。そう思いました。

 けれどその時、彼女は気づいてしまったのです。


 ここがどこだか、分かりません。

Chapter—1 ( No.3 )
日時: 2010/05/05 13:57
名前: 花森千風 ◆O6d6xo.9Cg (ID: OnRzE.oe)


 辺りを見回してみると、どちらを向いても草、草、草——そしてアリスの近くには後ろから前に向かって川が流れています。アリスはその川に浮かんだ、小さなボートの上にいました。

「でも……どうして私はボートなんかの上で寝ていたの?」

 アリスはなんとか記憶をたどっていこうとするのですが、不思議なことに何も思い出せません。ここがどこだか分からないのは相変わらずで、なんでボートに寝ていたのか、いつ寝ていたのか、最後に寝る前の記憶や、あげくはお家の場所すら思い出せないのです。

 いよいよ困ったことになりました。何しろ今のアリスにとって何も思い出せないということは、何も出来ないということと同じなのです。下手に動き回って迷ってしまってはますます頭が混乱してしまいますからね。

「仕方がないわ」

 散々悩んだすえ、アリスは誰かが通りがかることを待つことにしました。そうすればここがどこだか尋ねることができますし、上手くいけばお家の場所も教えてもらえるかもしれません。アリスはボートの上で川のせせらぎを聞きながら、長い間じっとしていました。

Chapter—1 ( No.4 )
日時: 2010/05/05 14:31
名前: 花森千風 ◆O6d6xo.9Cg (ID: OnRzE.oe)


 どれくらいの間そうしていたでしょうか。

 川の向こうを何気なく眺めていたアリスは、突然聞こえてきた悲鳴に飛び上がりました。

 急いで声のした方を振り返ってみると、向こうから白い色をした何かが走ってきます。多分、あれが悲鳴の正体なのでしょう。それが何なのかはよくわかりませんでしたが、生き物であることには違いありません。悲鳴が人間のようでしたから、喋ることもできるかもしれません。アリスはボートから岸辺へ飛び移ると、迫ってくるその何かに顔を向けました。

「うさぎだわ!」

 アリスは言いました。確かに、その白い生き物はうさぎでした。ぴんと立った耳、丸みをおびた体のどこを見てもうさぎそのものです。ただちょっとおかしなことには、そのうさぎの毛並みは薄いすみれのような色をしていて、目は驚くほど赤く、二つの後ろ足で人間のような走り方をしているのでした。

 何はともあれ話しかけないことには何も始まりません。アリスはちょっと大きめの声でうさぎを呼ぶことにしました。

「うさぎさん」

 ところがアリスが声をかけた途端、うさぎは先ほどと同じような鋭い悲鳴を上げてその場に座り込んでしまいました。前足で頭を抱えて震える姿は、まるで何かを恐れているようでした。アリスは思わず「ごめんなさい」と口走りました。きっとこのうさぎはとても臆病で、話しかけただけでも驚いてしまうんだと思ったからです。

「ごめんなさい」

 アリスは何も言わずに震え続けるうさぎに、もう一度謝りました。

「あなたがそんなに臆病だったなんてしらなかったの。でも」

 そこまで言って、アリスは息を飲みました。うさぎが“臆病”という単語に反応してビクッと身体を震わせ、真っ赤な瞳でアリスを見たからです。


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