二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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無限のLoopに踊らされない様に(ラクリマpvパロ)
日時: 2010/05/08 08:43
名前: 和也 (ID: .95dj.fM)

はじめまして。ロリオタバンギャの和也と申します。
ロックバンド「La'cryma christi」のプロモーション、ビデオを元に想像を膨らませて、小説を書いてみようかと思います。
ラクリマを知らない人でも楽しめるような内容を目指しますので、気軽に読んで行って頂ければ嬉しいです。

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Re: 無限のLoopに踊らされない様に(ラクリマpvパロ) ( No.2 )
日時: 2010/05/08 08:47
名前: 和也 (ID: .95dj.fM)

その洋館には、本当にたくさんの人がいた。
私が生きてる頃は、若い人も老いた人も、みんな毎日楽しそうに生きていた。なのに、何で…


なんで、私だけその中に入れないのか。


叫んでも、届かない。呼んでも聞こえない。



…誰か気づいて。私はここにいるの。

Re: 無限のLoopに踊らされない様に(ラクリマpvパロ) ( No.3 )
日時: 2010/05/08 08:50
名前: 和也 (ID: .95dj.fM)

俺の名前はTAKA。音楽で一旗あげるのを狙って、この街にやって来た。日本で結成したバンドのメンバーを引き連れ、今日からある洋館で共同生活を始める。日本からの長旅は、俺達の体力をすっかり奪い尽くしていた。館の管理人の声も、どこか遠くに聞こえる。
「…聞いてる?」
「…はっ、はい!」
いけない。すっかり油断していた。俺はリーダーなんだし、これからお世話になる人だ、失礼のないようにしなければ。
「ここはねえ、ちょっといわくつきの物件なんだよ」
「…はい?」
「昔、ここでね…」
そこで、俺の意識は途切れた。

Re: 無限のLoopに踊らされない様に(ラクリマpvパロ) ( No.4 )
日時: 2010/05/08 08:53
名前: 和也 (ID: .95dj.fM)

「…か、タカ!」
「いてっ」
ゆっくりと眼を開けると、バンドのメンバーの一人、ドラムのLEVINが険しい表情で俺の上にのしかかっていた。
「へ、はい?…ゆ、ゆうれいは?」
「しっかりしろよバカ!」
どうやらあの爺さんと話した直後、俺は気絶してしまったらしい。
床から起き上がって辺りを見渡すと、なんのことはない、ただの屋敷の部屋だった。
「よ、よかったぁぁ…」
ぐすぐすと泣き出す俺を、メンバーが不審な顔で見る。
「よかった…やっぱり、幽霊なんて…」




『ねえ、あなた…』



背筋がぞおっと冷えた。奥歯がガチガチ鳴り、足が震える。

『聞こえてるんでしょ?無視しないでちょうだい』

Re: 無限のLoopに踊らされない様に(ラクリマpvパロ) ( No.5 )
日時: 2010/05/08 09:04
名前: 和也 (ID: .95dj.fM)

「大丈夫?かなり顔色が…」
「ごめん、ちょっと出て来る!」
俺は上着をひっかけると、急いで部屋を出た。誰もいないトイレに駆け込み、息を整える。俺は個室に入り、改めて俺を見下ろす幽霊の姿を観察した。長い黒髪、整った顔立ち、真っ赤なドレス。
…やっぱり、さっきの話は嘘じゃなかったんだ!
『ねえ、あなた私が見えるのね』
「へ、は、はいぃ…」
『嬉しい!ここに住む人達はみぃーんな私を無視するんだもの!話し相手が出来て嬉しいわ!』
「あ、あの、ゆうれい…さん?」
『アリアよ』
「アリア…じゃあ、やっぱり爺さんの話に出て来た幽霊なんですね?」
『ええ、不本意だけど…話は聞いてるの?』
「はい、大体なんですけど…」
爺さんから聞いた話はこうだ。
昔、ここに一人の踊り子の女性が住んでいた。名前はアリア。まだ若くて、男から非常に人気があった。だが、彼女はある時、大きな失敗をした。客の男と、偶然知り合った画家の男で、なんと二股をかけてしまったのだ。
『そう、そこまでは合ってるわ』
「で、確か…」
彼女の裏切りを知り、怒り狂った男達は、彼女を刺し殺してしまった。そして、その恨みから彼女はこの洋館に夜な夜な現れ、住人達を震え上がらせて来た…
「……て、聞いてますけど」
『あら、心外ね。私別に殺されたわけじゃないわよ』
「へ?」
『確かに二股はかけてたけど、殺される程深い関係にもなかったわ。私は病気で死んだの。夏の暑い日に、ちょうどあなたが居た部屋のベッドでね』
ぞぞぞぞ、と悪寒が体を走り抜ける。何も知らずにさっき腰を下ろしてしまったベッド。そこにはこんな「死の匂い」がまとわりついていたのか。
「あの、俺やっぱり日本に帰ります!」
『あら、残念…』
「こんな恐い思いするくらいなら、日本で頑張った方がマシだ!」
『あら、でもあなた一人で来たわけじゃないでしょ?』
そこではたと気づく。そうだ、俺には大事なメンバーが4人もいる。彼らを放って日本に逃げ帰るなんて出来ない。俺は、この洋館でこんな幽霊と同居しなきゃいけないのか…!?
『よろしくね、私はアリアよ』
「あ、ああ、俺は…TAKAです」
幽霊がにっこり笑って差し出した手を、俺は思わず握り返してしまった。その手は当然…氷のようにつめたかった。

Re: 無限のLoopに踊らされない様に(ラクリマpvパロ) ( No.6 )
日時: 2010/05/08 11:09
名前: 和也 (ID: .95dj.fM)

部屋に戻ると、メンバーはかなり疲れてぐったりしていた。
椅子に座って天井を見つめているのは、俺の親友であり大事なギタリスト…HIRO。ギター一筋!な感じだが、困った時は相談にも乗ってくれる頼りになる奴だ。床でごろごろと雑誌を読んでいるのがバンドのベース、SHUSE。最年長だが、こんな時は…最もぐうたらな怠け者。その横で子供みたいにはしゃいでいるのが、サイドギターのKOJI。
「あっ、TAKA-!おかえりぃ!」KOJIは俺の頭をぽんぽん叩くと、満足げににいっと笑った。…年下だからって誰でも許すと思ったら大間違いだぞ!…と思い、俺はKOJIを思いきり睨みつけた。そして最後、ベッドに腰掛けて俺を睨むのが…ドラムのLEVIN。
「TAKA、どこ行ってたん?こんな大事な日に…まさか着いたばっかでもうホームシックかかったんか?」
「う…」
ぐさぐさとココロに突き刺さる言葉。コイツは本当にきつい。俺はちょっと…苦手なタイプかも。
「さっきさ、管理人のお爺さんが…名前なんつったっけ」
「知らない」
「まあ、その爺さんがさ…俺達に酒場で唄わないか、って」
「酒場?って…夜?」
「そう、ここは港町だから、週一回の割合で貨物船が来るから、その船員相手に唄え、っちゅーことや」
「はあ…」
「どないする?決めるのはお前やけど、明日まで返事待ってくれるって」
「着いたばっかなのに随分忙しいなあ…」
「当たり前やろ!俺らの全財産幾らやと思うてんねん!早よ仕事見つけんと野垂れ死んでも知らんで!」
「分かった分かった…」
「…たく、ほんまに頼りないんやから…」
LEVINはそれだけ言うと、ぷいっと横を向いてしまった。
俺ははあ…と溜め息をつき、空いてるソファに腰掛けた。当然アリアも、俺に続いて横に座る。
「…他の人には見えないんですね」
『当然でしょ、私もう…死んでるもの』
最後の一言は、とても哀しげに聞こえた。
生きてる者の特権。それを俺が実感するのが、こんなに早く来るとは…遠い異国の地で出逢った幽霊は、思いがけず俺のこれからの運命を変えて行く事となる。


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