二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ゴ-クリ「前へ進む」*タヒネタ
- 日時: 2011/03/21 20:34
- 名前: ああああ (ID: H1c8Uwl2)
「クリスさん」
授業中、不意に後ろから声をかけられた。
振り向くと、一冊の本が目の前に、
「これ、前読みたいって言ってた本ですけど、あげます!」
声の主は、元気でせっかちなパールくん。
今まであまり話した事も無かったけど...。
「え!? そんな悪いわ」
否定したが、『いいから、いいから』と本を無理矢理渡される。
「でも...」
「コラッ! そこ喋るな! 授業中だぞ!!」
先生の声が教室に響き渡る。
授業中にお喋りなんて殆どした事の無いクリス。
本の世界みたいに、きっと廊下に立たされるのかな。
そんな心配をしていた。
—する必要などないのに。
「ああ。クリスか。すまんな。“お喋り、続けて良いぞ”」
「......」
「クリス。どうかしたの?」
「............」
「クリスさん。どうかしたんですか?」
「..................」
「クリス!!」「クリスさん!?」
「キャッ!!?」
2人の声にビックリするクリス。
ブルーとイエローの心配そうな顔が見える。
「ちょっと考え事してただけ。あのね...」
私はさっきまで考えていた事を話し始める。
「なんかおかしくない?」
「えぇ?」
と苦笑しながら言うのはブルー。
「ふぇ?」
と全然意味が分からないという顔をして言うのがイエロー。
「妙に皆が優しいっていうか...」
前までは『ガチガチ学級委員長』なんてあだ名で呼ばれていたり、授業中に注意したりすれば先生だって怒ってたのに。今日は全然怒られなかった。
ある意味ラッキーであったのかもしれないが、逆に不安になる。
「そんな事よりさー、クリス?」
ブルーは、ニヤニヤとして不適な笑みを浮かべる。
「ゴールドはどうなったの??」
その言葉にドキッとする。
「あっ!! ボクも聞きたいです! ご参考に!」
イエローがぱっと手を挙げる。
「べ、別にどうもなってないわよっ」
顔を赤くするクリスを見て、もっとニヤニヤとするブルー。
「臨海学校の帰りに告ってたんでしょ? 言いなさいよっ」
「え、えっとぉ...」
「ゴールドってば!」
臨海学校でお土産を買い、バスに向かうゴールドをクリスが捕まえる。
「何だ、クリスか。あ!! これはお土産だかんな。あげねーぞ」
「違うわよ」
さっとツッコミを入れる。
「ちょっとゴールドに渡したい物があって...」
『これ!』とクリスの掌には、〈好きな人に渡すと両想いになる〉というお土産物のストラップがあった。
真面目なクリスにとって少し恥ずかしかったんだが、ブルーが進めるので買ってしまったのである。
言うなら... 今しかないッ!!
「わ、私っ! ゴールドの事が... す、すき...なの...!」
「オレっ」
とゴールドが言いかけた時、ワアッと皆が駆け寄ってきた。
「やっと言えたかーっ!!」
「もう、ニヤニヤが止まんないわよ!!」
「感動しましたー!!」
「素晴らしかったです!!」
「面白かったぜー!!」
「...まったく」
「おい、お前も何か渡す物があったんじゃないのか?」
シルバーがゴールドに言う。
「う、うっせえ! クソシルバー!」
「なっ!?」
そして2人の喧嘩が始まる。
「ちょ、ちょっと2人共!!」
クリスの声で『あ、』とゴールドが思い出す。
「あ、じゃあ、あの、帰ったら...分かると思う」
「? 電話でもくれるの?」
そう訊くと、
「そんなんかな」
でも、帰っても電話なんて無かったわよね。
...訊いてみようかな。
「あ、ゴールド」
男子達と話している中からゴールドを呼ぶ。
「あの、...いや、ゴールドの事だから忘れてるんじゃないかと思ってね」
笑いながら話していると、ゴールドが立ち上がった。
「あのよォ...」
「え?」
「オレに話しかけんの、もう無しで。」
............?
「臨海学校の時の事、何にも覚えてねえ幸せモンよ」
教室に帰ると、ブルーとイエローが待っていた。
『どうだったー?』という声を無視し、私は訊いた。
「ねぇ、臨海学校の時に、何かあった?」
シ... ン
今まで普通に過ごしていた皆の動きが止まる。
「ね、ねぇ...?」
目の前で固まるブルーとイエローに恐る恐る話しかける。
「な、何言ってんの! クリス帰りのバスで爆睡してたじゃん!」
あっ。そう言えば。
「何があろうと、私達はクリスの味方だし! ずっと一緒だよ!」
「ええ! ...でも、一応話してみるわね」
と言って、クリスは教室を出ようとした。——が、
「良いよ しなくて」
ガッと腕を掴まれる。
その瞬間、クリスの目の前が真っ青になる。
............!?
何...? 今の。水の、中?
「あ、うん。そうだね」
ブルーに掴まれた腕を見えると、手形が残る程強く掴まれていた。
「ゴールド」
廊下で歩いているゴールドに声をかける。
やっぱり、皆おかしい。
「臨海学校の時の事、教えて。...あの時何があったのか」
「どうしたの?」
バッと振り返る。
其処にはクラスの皆。
「なんでもな...。」
言いかけた時、ゴールドに腕を引っ張られる。
「教えてほしいんだろ?」
私達は、学校を抜け出した。
後ろから『キャーッ!!』『クリスー!!』『ゴールド!!』と声が聞こえたが、振り返らず、走っていく。
着いた場所は—
「臨海学校で行った... 海」
ドクン!!
...え?
ドッ ドッ ドッ ドッ
「どうして...。こんなに、ドキドキするの」
「まだ思い出せねーのかよ?」
するとまた、クリスノ目の前が真っ青に変わる。
そして海の中を、ずっと、浮かぶ私。
ハッと我に帰りクリスの出した答えは——
「私... 溺れたの?」
クリスは臨海学校の時、溺れ死んでしまっていた。
皆気付かれたくなかったから、優しくしてくれていた。
「クリスは、此処に居ちゃいけねえ。だから」
だから...?
「行くんだ」
「嫌ッ!!」
叫ぶ。
「だって、だってずっと一緒にいるって、皆で...」
グイッ。ゴールドに引き寄せられ、抱きしめられる。
「あの時の約束、守れなくてワリィな」
............?
「居たぞ! クリス!」
「クリスー!」
「行かないでぇっ」
「クリス!」
ふわっとゴールドの手で海に落ちる。
その時、私は、何を考えていたんだろう。
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- Re: ゴ-クリ「前へ進む」*タヒネタ ( No.1 )
- 日時: 2011/03/21 20:34
- 名前: ああああ (ID: H1c8Uwl2)
「...リス」
「...クリス!!」
目が覚めた。
此処は... 病院?
隣には、お父さんとお母さん。
どういうこと...?
「ああ、良かった。もう駄目かと。新聞にのってる。臨海学校に行ったバスが、海に落ちて」
バッと私は新聞を取った。
その勢いでベッドから落ちる。
ガシャン。
「うそ...。うそよ、嘘よ!」
私じゃなくて、皆が......。
私は本当の事を思い出す。
バスに水が入って、出ようにも外は海。
だけど、バスの中に居たら死んでしまう。
なんとか窓から出ようとするが、出られなかった。
もう...。
その時、
「おい! 後ろから押すからオメエ出ろ!!」
ゴールド。
「え!? でも...皆は!? ゴールドは!?」
「良いから早く出ろっつってんだ! 俺は後から行っから!」
「本当ね!? 本当に本当ね!?」
「約束する!! ...まあ、守れなかったっつーのも、よくあるこった! 気にすんな!」
最後にちょっとだけ見せた笑み。
そして、
バスは沈んだ。
コロリ。
病院の白い床の上に、小さなお土産物のストラップ。
これは、
「あ、これ、スカートのポケットに入ってたんだけど...」
これは、私がゴールドにあげたのと同じ。
『電話くれるの?
...そんなんかな。』
ストラップを握りしめながら、私は泣いた。
私は退院して、直ぐにお父さんに頼んで、あの海へ連れて行ってもらった。
綺麗な花束を置く。
もう、泣いて何か居られない。
「クリス、もう行くぞ」
決めたんだ。
私は、前へ進む。
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