二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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凍てつき刃を振りかざせ≪第一章完結!!≫
日時: 2013/02/15 15:14
名前: 桜 楓華 (ID: SfeMjSqR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=24284

桜楓華です。

題名:凍(い)てつき刃(やいば)を振りかざせ
少年陰陽師のパラレル話
で窮奇パロ&IF設定です。
詳しくは話の中で説明していきます。


登場人物

安倍昌浩(あべのまさひろ)

あの安倍晴明の末孫。
上に兄二人。
訳け合って藤原道長の一の姫、彰子(あきこ)を安倍の屋敷で預かっている。

相棒は物の怪のもっくんこと十二神将・紅蓮

最近、知らないはずの場所の夢を見るようだが…


昌影(しょうえい)

時折、影とも呼ばれている。
昌浩の窮奇に下った後の呼び名。

実は、前帝の息子。
件の予言を覆すべく、窮奇(きゅうき)の元へと下る。

その後、自らの命と引き換えに紅蓮を救う。

———

同時進行、「不動の願いを突き通せ」と共にこのたびサイト更新となりました。

ペンネームも変えました。

当初は完結まで行こうかとも考えたのですが、
アクセスしようにも、ここのURLを押しても弾かれることがしばしばなもので…。

読んで下さった方、申し訳ございません。

URLは最後の方の『fblg.jp』になっているのです。

最終話のURLでもURL先のサイトの方で直リンをTOPでつけているので大丈夫です。

サイト名は≪夢路に希いを込めて≫(←最近の少陰を呼んでいれば読めます)

RANKはちょくちょく変わりますが、≪陰陽五行説≫様は安定してます。

※サイト内での連載、第二章は完結次第こちらにまた載せます。

今の所、ミジンコぐらいしか進んでないけど……。(汗

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Re: 凍てつき刃を振りかざせ ( No.34 )
日時: 2012/08/23 14:40
名前: 桜 楓華 (ID: K10UiDSA)
参照: http://id12.fm-p.jp/420/atomkun/


伸ばした手、その先の……


「結・・・・・・・・・」
「なっ・・・!?」
子供の声が響いたと思うと騰蛇だけを取り囲む決壊が創成された。
騰蛇と刃を交えていた朱雀は結界の外にはじき出された。
空中で崩れた態勢を立て直すと危なげに着地した。
突然爆風が起こり、視界を砂嵐に奪われた。
腕を交差しその隙間から何とか敵の姿を確認しようとするも、砂塵で何も見えない。
前後左右もわからない。
神気を爆発させて砂嵐を切り開こうとしたときほんのすう瞬視界が開けた。
———時が止まったかのように思えた。
ここに居るはずのない子供が白いものを天掲げるようにして何かを唱ていた
驚きで固まっていた朱雀は再び吹き荒れた砂嵐に飛ばされかけた。
何をしていたのかは解らない。だが、直感が告げる。危険だと。
———止めなければ
朱雀は全霊を振り絞り砂嵐を爆発で吹き飛ばすと子供の姿を探した。
すると、先ほど騰蛇がいた場所にその姿はあった。
その頭上には光に包まれた物の怪がいた。
どういうことだ。そう問いただそうとしたとき、操り人形の糸が切れたようにその体が傾き倒れた。
「昌浩———!」
朱雀は手を伸ばしその子供の名前を叫んだ。



——一番怖いことはなんだ
昔、同胞に聞かれた質問が頭をよぎる。
——それは、伸ばした手が届かないことだ・・・・・・。

Re: 凍てつき刃を振りかざせ ( No.35 )
日時: 2012/08/23 14:41
名前: 桜 楓華 (ID: K10UiDSA)
参照: http://id12.fm-p.jp/420/atomkun/


紅き蓮と白き華





赤毛の神将と屍鬼が刃を交えていると二人を隔てるように障壁が築かれた。

他の神将も同じように結界の外にはじき出されていた。

そして、砂嵐が吹き荒れるとその姿は見えなくなり代わりに目の前にはあの時の子供がいた。

「ほぅ、生きていたか」

異国の服に身を包んだ少年を認めて、残虐に嗤笑する。

「今度こそ黄泉に送ってやる」

禍々しい光を宿した瞳が細められる。

昌浩は具現化した軻遇突智の焔の刃を握りしめると印を組んだ。

「麻加連也、麻加連與、此矢に麻加連」

無数の霊矢が飛来して屍鬼の全身を拘束する

「おのれ小癪な真似を・・・」

無数の炎蛇が襲いかかる。

「散!」

裂ぱくの気合が炎蛇を粉砕する。

「炎に焼かれて死ねよ!」

屍鬼の声が響く。

しかし、昌浩に聞こえているのは別の声。

楽しかった日常。

優しくそしてどことなくさびしい声。

夕焼け色の瞳。白い毛並。

子供のように高い声。

———晴明の孫〜。

いつも、孫言うなと反論する自分の声。

あの時伸ばされた手。

「よせ————!」

言葉にならない叫びと共に刃を振りかざす。

柄越しに伝わる衝撃。

胸元を貫いた焔は内側から魂を灼く。

屍鬼はゆらりと剣を掴んだままの昌浩を見た。

「おのれ・・・・・・このがきめ、よくも・・・・・・!」

その瞬間、灼熱が腹から背へと突き抜ける。

そして、再び衝撃が走る。

それでも、昌浩は話さずうめきにも似た声を出す。が、詠唱をやめない。

「天神…地祇…、辞別けては産土大神、神集獄退妖官神々、この霊縛神法を助け給え…!」

謄蛇に憑依した屍鬼を神の力を借りて束縛し、炎で完全に消し去るため最後の力を振り絞る。

浅い息をするたびに朱霧が零れる。

「困々々、至道神勅、急々如塞、道塞、結塞縛!」

屍鬼の目が大きく見開かれ、瞳孔が開いた。

「不通不起、縛々々律令 ・・・!」

凍てつい屍鬼の額に銀の冠が形成される。それと同時に立ち上っていた炎が消える。

「万魔経服———!」

閃光がほとばしり結界内を埋め尽くした。

Re: 凍てつき刃を振りかざせ ( No.36 )
日時: 2013/02/15 15:33
名前: 桜 楓華 (ID: SfeMjSqR)
参照: http://id12.fm-p.jp/420/atomkun/

懐かしき記憶と涙





白いものがどさりと落ちた。

四肢を投げ出したまま動かない物の怪

「騰蛇・・・・・・・・・」



昌浩は動かない物の怪に歩み寄った。

「騰蛇…とうだ…とう…紅蓮」

“紅蓮”それはずっと呼ばなかった——呼べななかった名前の一つ。

その名を呼びたくてその暖かさに触れたくて。

けれど、それはずっと叶わなかった。

そして、ずっと堪えていた涙が白い毛に吸い込まれていく。

「ねえ、紅蓮、忘れていいよ…。全部おれが持っていくからさ」

抱き上げその体を天に捧げるようにして、昌浩は目を閉じた。

「謹請し奉る———」


 ◇ ◆ ◇ ◆


自分をただ静かに見つめ返す昌浩に高於加美之神は告げた。

「もし、お前がいまの騰蛇を望むのなら」

本当にその覚悟があるのなら。

「お前の心と引き換えに、騰蛇を返してやろう」

魂が灼かれても、心はわずかに残る。

思いから生まれた十二神将を完全に戻らせるためにはお前の心すべてが必要だ。

だが、命と同じものである心をなくせば人は死ぬ。

それでも良いと望むのなら。

騰蛇はありのままの心で還るだろう———————。


 ◇ ◆ ◇ ◆


物の怪の体が白い光に包まれて、ふわりと浮きあがる。

帰っておいで、還っておいで。

「伏して願わくば・・・・・・」

俺の命をあげるから。



俺が招いてしまったその心の痛みは全部、俺が持っていくから。

「・・・あまねく光、魔をはらい清め・・・・・・」

———昌浩。

涙が眦からつたい落ちる。

———それがお前の望みなら、俺はそのために心を砕こう、力を貸そう。

ごめんね、誓い守れそうにないや。

「その魂還らせたもう。されど、悪しき夢幾たび見るならば・・・・・・」

もし、戻ったときに姿が見えなかったら、かれは昌浩を探すだろう。

記憶が残っていたならば今まで以上に自分を責めてつらい思いをしながら永遠に等しい時を生きていかなければならないだろう。

それは生きる時間は違えども、両親や兄たち、尞のみんなも同じだ。

——だから、みんなの記憶から俺と言う存在を消したいんだ、天后、天空。

これは、自分自身の勝手な願いだ。

流石に神相手に永遠の呪は無理だろうけど、ほんの少しの間だけなら可能かもしれない。

次に転生して出会ったならこっぴどく怒られるかもしれないな。

そして、祖父にも……。

もし、あと少しだけ時間があればせめてじい様にだけでも謝りたいな……。

そんな、わがままな願い。

「身におわむ事、願いたもう・・・・・・・・・」

閉じていた眼を開け、涙で霞んだ視界のなか、物の怪を見上げる。

あぁ、やっぱり叶わないよな……たくさんたくさん酷いことをしたし。



再び閉じた目から再び涙がこぼれた。



——もっくんやーい。

——もっくん言うな、晴明の孫!

——孫言うな!



懐かしい無邪気な声が耳の奥で響いて消えた。

Re: 凍てつき刃を振りかざせ ( No.37 )
日時: 2013/02/15 15:45
名前: 桜 楓華 (ID: SfeMjSqR)
参照: http://id12.fm-p.jp/420/atomkun/

最後の願い





白い物の怪がゆっくりと降りてくる。

ほっとした途端腹に激痛が走った。

ああ、そう言えばさっき腹に衝撃が走ってたな・・・・・・。

など度他人事のように思っていると視界がぼやけてきた。

体中の体温が逃げていく。感覚がなくなっていく。

「まさひろ!」

この声は朱雀…

傾いた体を誰かの腕が抱き上げてきた。

「昌浩、この傷はどうした・・・!?」

霞行く視界の中、目を開けると酷い顔をした朱雀の顔があった。

「昌浩、待ってろ今晴明を呼んで・・・・・・」

「い・・・い。呼ばな・・・・・・て、いい」

「昌浩・・・・・・?」

言葉を遮られた朱雀は眉を顰め昌浩を見つめた。

「これ・・・は俺・・・のぞん・・・こと……だか・・・ら」

「・・・・・・!」

朱雀は瞠目した。

のぞんだ?騰蛇と闘う事を、自分が死ぬことを、昌浩が?

「おまえ・・・・・・」

「ごめ・・・なさい・・・」

眦から涙が伝い落ちてく。

「あの時・・・はなさ・・・けれ…よか・・・た・・・」

はっと朱雀は息をのんだ。

抱き上げた昌浩が遠い昔に失った面差しと重なる。

『え…ん、ごめ…ね……あの時・・・はなさ…けれ…ば…よか・・・た・・・』

まさか、と唇が動く。

それは前の天一であり友であった者との最後の記憶と同じ。

もう手を離さないと決めていたのに自分はまた同じ過ちを犯してしまった。

今更悔やんでも悔やみきれない記憶。

今も疼く傷を作った出来事だ。

「っ……」

「昌浩!」

酷く寒い。なのに、頬を伝う涙はひどく熱い。

鈍い咳と共に朱色の息がこぼれる。

瞼が重い。

けれど、懸命に瞼を開ける。

あと少し。

あと少しだけでもいいから時間がほしい。

どうしても伝えなきゃならないことがある。

「昌浩……死ぬな……!!」

それは、祈りにも似た想いだ。

しかし、それは叶わない想いだ。

それは彼も解っているだろう。

だからこそ痛切に希うのだろう。

そんな朱雀の姿を見て昌浩は瞼を震わせる。

大切なだれかが目の前で消えてほしくない。

それは自分も同じ思いを抱いている。

だからこそ、その結末を選んだのだ。

瞬きをすると、溢れた涙が頬にいくつもの筋を作る。

「ねぇ…すざ……つたえ…て……」

最後の力を振り絞り、緩慢な動きで朱雀の頬に手を添える。

「まさひろ…頼む、死なないでくれ…」

ほとんど見えない視界の中、朱雀の顔がまた歪むのが分かった。

震える声が耳朶を打つ。

あぁ、分かっていたけどやっぱりつらい。

皆に最後の最後まで迷惑をかけてしまった。

『あの人』の希いを破ってしまった。

けれど、それが酷いと分かっていても伝える。自分の最後の思いを。

「ごめ……さ…やくそ……ま…れ…なく…て…って……」

その言葉の意味を理解した朱雀は小さくうなずく。

「必ず伝える」

朱雀の強い瞳を見ると酷くほっとした。

目を閉じると昌浩は、体の力を抜いた。

もうこれで心残りはない。

閉じた瞼の裏にたくさんの顔が浮かんでは消える。

そして、ずっと側にいてくれた人の顔が最後に浮かんだ。

夜明けと共にすべての人から自分は消える。

大好きな祖父や初めて好きになった人からも。

自分はもう消えてしまうけれど、皆に幸せになってほしい。

そして、本当にこれ以上悲しい事が起る事のないように願っている。

朱雀、本当にごめんね。そして・・・

「…ぁ………————」

微かに紡がれていた声が、ふつりと途切れた。頬に添えられていた手が滑り落ち赤い筋を作る。

彼の腹部を染める赤が広がるのをやめる。

「”天”……『お前達』は本当に、突拍子もない事をするな…」

昌浩の体を掻き抱き朱雀は自嘲気味に呟いた。

眠るように静かに息を引き取った昌浩の顔は、幸せそうな顔で微笑んでいた。





———伸ばした手。

けれど届かなかった。

失いたくないと思った。

 あれほど痛切に届けと願ったことはなかった…



『…ありがとう———』



H25・2 改正

Re: 凍てつき刃を振りかざせ ( No.38 )
日時: 2012/08/23 14:46
名前: 桜 楓華 (ID: K10UiDSA)
参照: http://id12.fm-p.jp/420/atomkun/


一筋の涙







誰かが立ち止っている。

一人寂しく、寒い場所で。

大きすぎる力で苦しんでいる。

けれど、それは体でなく心・魂が。

——ああ、また一人でいる。

苦笑交じりに呟きその魂に歩み寄る。

——もう一人じゃないよ。俺がずっと側にいるからさ。

 例え記憶になくとも、見えなくとも。

——呼んでもらえなくても、もう一人にしないよ。

だから苦しまなくていいよ“紅蓮”。





——紅い蓮の魂に一粒の冷たい涙が滑り落ちた。

 それは炎を鎮め緩やかな灯にした。

   それは蛍のように淡く小さく儚い人の魂が流した一筋の涙——



       『大好きだよ、紅蓮』




最近、いつも同じ夢を見る。

何処か暗くて冷たい場所に自分と同じ位の男の子が立っている。

纏っている衣裳は異国のもので、神将達が纏っているものに似ている。

その男の子の事は知らないはずなのにどこが懐かしさを感じる。

会うたびにその子は笑う。

けれど、笑っているのにどこが寂しげで悲しい笑み。

その子が消えかけるとき、いつも同じ言葉が聞こえる。

『たとえ視えなくても、たとえ遠く離れても必ず君を守るよ』

その言葉は夢だと解っていてもいつも心のどこかで響いている。



『———・・・・・・≪  ≫・・・?』





淡々と紡がれる声。

これは誰かの始まりの記憶。

煌びやかな衣を纏い、煙管からの煙が筋を描く。

『貴方がその対価を払ったとしても、誰かが犠牲になるのは避けられない。

そして、あなたのその意思次第で未来の道は作られる』

雪のように真っ白で細い手が胸を指さす。

『揺らげばその道は消え、もう一つの道が生まれる。

その道は、前の道より多くの悲しみを残すことになる』

妖艶に微笑むその目は紅い。

『———それでも良いなら、その願い叶えましょう』



————

凍てつき刃を振りかざせ 第一章完結


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