二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 【世にも不幸なできごと】 伯爵と町娘
- 日時: 2012/08/03 16:09
- 名前: ジャネット (ID: wfu/8Hcy)
初めまして。ジャネットと申します。
児童書の二次創作ですが、はたして何人知っている人がいるのでしょうか……?
作中では『作者』として偉そうに語っておりますが、
どうか石を投げつけないようお願いします(^p^:
批評・感想等ありましたら気軽にどうぞ☆
辛口批評も大歓迎です。よろしくお願いします。
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- Re: 【世にも不幸なできごと】 伯爵と町娘 ( No.1 )
- 日時: 2012/08/04 15:38
- 名前: ジャネット ◆a3jxhh.W4s (ID: wfu/8Hcy)
プロローグ
のっけからこのようなお断りで申し訳ないが、あなたが読もうとしているこの物語は、非常に不愉快な代物である。夢と希望に満ち溢れたハッピーな物語をご所望の方は今すぐこのページの左上にある「もどる」のボタンをクリックして、他の作者様の小説を読むことをおすすめする。
なぜ不愉快な代物なのかって?その理由は単純明快。
主人公があの恐ろしい悪者『オラフ伯爵』だからである。
もしあなたが「世にも不幸なできごと」シリーズを読んでいたのならすでにお分かりだろうが、彼の残虐ぶりは思わず目をおおいたくなるほど。本の中で、彼が可愛そうなボードレール家の子供たちにした仕打ちをご存じだろうか。その内容は……ああ、とても多すぎてここには書きつくせないが、もし皆さんのご両親が聞いたら顔を真っ赤にして怒鳴りだすほどの酷い冷遇なのである。
ほんの一例として、
・骨折り仕事をやらせる
・ほっぺをひっぱたく
・目をぎらぎらさせて怒鳴り散らす
・子供たちの財産を奪おうといつも企んでいる
・子供たちの後見人を殺す
・くさい
・汚い
・痩せすぎで怖い
といった具合だったような気がする。
こんな仕打ちを受けたボードレール家の子供たちは本当に不憫で仕方がない。思い出すたびに涙がこみあげてきて、思わずしゃくりあげそうになってしまう。
……さて。
あなたのような夢と希望に満ち溢れた子供(もしかして大人?)が読むには、まず主人公が不愉快極まりないのである。
さぁ、私がこれからお伝えするのは、そんな彼がボードレール家の子供たちに出会う以前の物語だ。といっても、ほんの数年前、すでに伯爵があの悪魔の城のような屋敷に住んでいたころの話である。
くどいようだが、ハッピーなお話をお望みなら、戻るのは今のうちだ。
しみったれで狡猾な男の恋するストーリーだなんて、いったい誰が読むのだろう?と、作者の私ですら疑問に思うのだから。
- Re: 【世にも不幸なできごと】 伯爵と町娘 ( No.2 )
- 日時: 2012/08/09 17:25
- 名前: ジャネット ◆a3jxhh.W4s (ID: wfu/8Hcy)
あのようなプロローグを読んでもなお、私の話を読んでみようと思ったあなたには、本当に感謝せねばなるまい。心の底からお礼申し上げる。
できればもう少しこの作品についてお話したいところだが、そろそろ物語を始めないと他の読者諸兄からヤジを飛ばされる恐れがあるので、この辺にしておくとしよう。
物語の途中でもし気分を害された場合には、すみやかにページ移動することをお勧めする。どうか無理をしないように。
※若干の残酷な描写にご注意を!
第一章 始まり
ロンドンの町が夜の闇に沈み、人々が寝静まったころ。
高い塔の最上階にある部屋の窓辺に、一人の男がたたずんで、美しい星空を見上げていた。
淡い月光に照らされて眩しそうに目を細めるさまは、ともすると詩人のように見えるかもしれないが、彼は詩人でもロマンチストでもなかった。むしろその反対と言っても差支えないだろう。
彼は振り返ると、口元にせせら笑いを浮かべた。意地悪そうに細められた目が、手足を縛られて床の上に転がっている男に向けられると、彼はますますにんまりと笑った。
床の男は体中に痛めつけられた跡があり、薄汚れた服は裂かれ、いたるところに紫色のアザがあった。どれも見ていて気持ち悪くなるような傷跡ばかりだったが、窓辺で不気味な笑みを浮かべる男がその痕跡から視線を反らす気配はない。
暗い部屋の中で、彼の目だけがらんらんと輝いているようだった。
床の男は息も絶え絶えに、傷ついた体をよじって声を絞り出す。彼は泣いていた。
「オラフ……頼むよ……」
オラフと呼ばれた男は、その顔に笑みを張り付けたまま言った。人を馬鹿にしたような笑いだった。
「俺はとっくの昔から気付いていたんだ。お前はまんまと俺の目を盗んで金をちょうだいできたと思いこんでいたようだが、それは愚かな勘違いってやつだ。金庫の中から毎晩金がちょっとずつ消えているのを見て、俺はピンときた」
オラフと呼ばれた男——仲間からはオラフ伯爵とも呼ばれていた——は、すり切れた灰色のコートにポケットに手を突っ込んで、銀色に光るナイフを取り出してみせた。刃の部分に月光が反射して、床の上の男にあてつけるようにギラギラと輝いた。
床の男はそれを見た途端激しくのたうち始めたが、オラフは右手にナイフを握りしめたままゆっくりと近づいてゆく。
「すまなかった! ほんの出来心だ! もうしない、もう二度とお前の前には現れないから!!」
床の男が必死の形相でわめいても、オラフは歩みを止めない。(実はこの時、ドアがほんの少しだけ開いてオラフ伯爵の仲間数人がこの光景を興奮しながら見ていたのだが、オラフは追っ払おうとはしなかった。さほど珍しいことではなかったからだ)
勝手にしてろ、と心の中で吐き捨てて、オラフは床の男のすぐそばまでやってきた。
のたうちまわる男を見下ろして、「チッ、チッ、チ」といかにもセンスがないとでも言いたげな様子で指を振る。
「ああ、かわいそうなジミー。そんなふうに動いてちゃあナイフの狙いが定まらなくて、一発で楽にしてやれないかもしれんなぁ。何度も何度も突き刺してやらないと、心臓にぴったりブチこめないぜ。こまったやつだ」
オラフは自分の言葉で床の男が恐怖で凍りついたさまを、非常にゆかいな気持ちで眺めていた。最高の眺めだった。
しぶれるような強い快楽が全身を駆け巡るのを感じて、彼は震えながら息を吐く。体中の血が騒いでいた。
「助けてくれ、頼むよ、どんなことでもするから! お願いだ、オラフ!!」
「俺に許しを請うひまがあったら————」
オラフは静かにひざまずき、床の男をじっと見据えた。
その目は冷たく輝いていた。
「———ー黙ってろ」
銀色のナイフが空を切った。
ドアからのぞいていた仲間たちは、思わず顔をそむけた。
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