二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 曇天 ( No.16 )
- 日時: 2008/08/13 12:01
- 名前: 護空 (ID: bG4Eh4U7)
今、江戸は春を迎えつつある。
桜の蕾もふくらみ、咲き誇ろうとしている次第。
至る所で春の芽吹きを感じている。
しかし、春を迎えようとし、春の芽吹きを感じているのは、万屋も同じだった。
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結局、春一番てどれですか。
am8:00
新八は万屋の玄関を元気良く開いて言った。
「おはよーございまぁーす」
玄関で靴を脱ぐと、バタバタと足音をたてて事務所へ足を進めた。
引き戸を開けると、デスクに足をかけ、新聞を広げて偉そう座っている万屋のオーナーがそこにいた。
「おーう新八ィ。春だなぁ、まぁたテロが起きたぜ」
「どんな春ですかソレ。嫌ですよ、僕はそんな春の感じ方は嫌ですからね」
新八がお茶をデスクの脇に置くと、廊下の方の引き戸がガラリと開いた。
「あ、神楽ちゃんおはよう」
「新八ィ、春アルなぁ。私の寝癖が絶好調ネ」
「え、なにソレ。今流行ってるの?ソレ」
銀時は、神楽達の会話に耳を傾けながら、また新聞に目を通した。
《相田茶屋に爆弾テロ》の黒々とした印刷インクが目に焼き付く。今週に入ってこういったテロが後を絶たない。
「春だから、桂が盛ってんだろーな」
「僕、絶対ソレ認めないですからね」
神楽とテレビを見ていた新八が、あきれたような口調で銀時を威嚇する。
当の本人はと言うと、最近反抗期気味の眼鏡を放って置いて,新聞の記事に目を通していた。
テロは好きじゃないし,正直関わりたくもない。ましてや,桂を心配している訳でもないが,ここ最近のテロはどこか引っかかるのだ。
一通り目を通し,問題ないと判断した銀時は、デスクに新聞を放ると、お馴染みの羽織を手にとって事務所の引き戸に手をかけた。
オーナーの妙な行動に目をつけた新八が、外に出ようとする奴を引き留めた。
「ちょっと、どこ行くんですか」
「えーと、煙草買ってくる」
煙草か。と思った新八は、それ以上引き留めなかった。しかし、テレビを見ていた神楽が、銀時が出ていった後に新八に聞いた。
「銀ちゃん、煙草なんか吸ってたアルか?」
「、、あ」
逃げられたと確信した新八は、深くため息をついた。
「最近変な人がいるから、気をつけてって言おうと思ったのに」
「変な人?自分の股間見せて喜んでる奴アルか?」
「なんでそんなの知ってるの。違うよ。なんかテロの起きる場所に必ず現れるっていう侍がいてさ、もしかしたら銀さんか、桂さんのこと狙ってるのかなって思って」
「はん!そんな変態、銀ちゃんが退治してくれるネ」
「だから、違うってば」
外は風が強かった。
世間一般で呼ばれる、春一番と言う奴か。
「煙草なんてすわねーのに」
今頃、万屋は大騒ぎだろうな。と思うと、おかしくてたまらない。
コンビニを曲がり、大通りにでた辺りで誰かがぶつかった。麻の着物を纏い、頭に包帯を巻いた侍だった。侍は「すまねェ」とお辞儀をすると、細い路地へ入っていった。
なにか懐かしい気がして、唖然として棒立ちしていると、誰かが近寄ってきた。
「おい」
「あ?」
聞き覚えのある、ドス低い声が聞こえてきた。不機嫌気味に銀時が返事をすると、そこには瞳孔開き気味の真選組の副長がチラシを持って仁王立ちしていた。
「あれ、多串君仕事サボりですか」
「多串じゃねぇし、今月はテロ防止月間なんだよ」 そういって土方は、手に持っていたチラシを渡した。
「なにコレ」
「最近噂になってる侍だ。テロの起こるところに確実に現れる。みつけたら言ってくれ」
チラシに載っている写真は、麻の紺色の着物を着て、頭に包帯をぐるぐる巻にした男の写真だった。 「あれ?こいつ、さっきココですれ違ったぞ」
「んだと!?おまっ、なんですぐいわねんだよ!」
「ああ!?お前が今聞いてきたからだろ、、」
そこまで言ったところで、背後のコンビニが大爆発した。もの凄い爆風で二人とも吹っ飛ばされる。
とたん、銀時の後頭部に鈍い痛みが響き、目の前が真っ暗になった。