二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 曇天 結局、春一番てどれですか。up ( No.20 )
日時: 2008/08/14 22:49
名前: 護空 (ID: bG4Eh4U7)

 真っ暗な視界が、徐々に晴れてきた。
 まだ、後頭部に二日酔いの時のような鈍い痛みが響くが、ゆっくりと目を開けてみた。「…。あれ」
 さっきまで外にいたはずの銀時が目を開けると、視界に広がったのは青空ではなく、日に焼けた白い天井だった。
 わけもわからず寝たままでいると、視界に見慣れた栗色の髪がちらつき、そいつが自分の顔をのぞき込んだ。



 たまの怪我だもの、チヤホヤされたい。


「もしもーし、俺が誰だかわかりやすかィ」
「沖田総一郎君」
「あー、駄目だこりゃ。完全に脳をやられちまってらァ。みなさァァん!残念ながら御陀仏でさァ!!」
「おーい、勝手に殺さないでよ総一郎君」
 すると、沖田の声を聞きつけ、部屋に数珠を持って近藤と土方が入ってきた。
「んだ?全然平気そうじゃねぇか。嘘つくんじゃねぇよ総悟」
「土方が死ねばよかったのにねィ」
「んだと!」
「二人ともやめろ、一応怪我人だぞ」
「一応ってなに、ゴリさん。つか、お前ら用意周到すぎない?総一郎君が呼ぶ前から死んだて決めつけてたろ」
 とりあえずすべて突っ込んだ後,銀時は近藤の言葉にはっとし、キョロキョロと辺りを見回した。どうやら、ここは病院のようで、まだ痛い頭には真新しい包帯がきちんと巻かれていた。
「俺、何時間くらい気ィ失ってた?」
「あ?」
 銀時は、ベッドの横の椅子に腰掛けた土方に聞いた。土方は左手の袖をまくり、腕時計をのぞき込んだ。
「今、正午だ。ざっと、3時間か」
「やべ。今日花見に行く約束だったんだ」
 ベッドから降り、フラフラとおぼつかない足取りで部屋を出ようとする銀時を近藤が引き留めた。  
「ちょっ!あんた怪我人だよ!?そんな花見行きたいの!」
「新八のお姉様、約束破ると怖いんですぅ」
「なにィ!お妙さんがいるのなら話は別だ。すぐ行こう、今行こう」
「おいゴリラ、もう少し粘れや」
 土方の言葉も空しく中に浮き、二人は足早に病院を部屋を出ていってしまった。すると、沖田がしめたと笑い、近藤達の後を追った。
「あーあ、いっちまいやしたねィ。近藤さん追いかけなくちゃァ」
「あ!てめェこらァァ!!」
 土方は大きなため息をつくと、渋々後を追いかけた。
「俺、転職しようかな」
 
 銀時達が向かったのは、大江戸西公園。毎年、見事な桜で人々を集め、混雑する桜の名所なのだが、様子がおかしい。中はがらんとして、人一人見あたらない。
「あれ、確かにここなんだけどな」
 銀時が首を傾げていると、土方の懐で携帯電話が騒ぎ出した。標示された名前を確認すると、《山崎》の名前と携帯番号が出ていた。慌てもせず、会話ボタンを押す。
「おう、俺だ」
『俺だ。じゃないですよォ!!何回アンタに電話したと思ってるんですかァァァ!!』
 受話器の向こうから山崎の馬鹿でかい声が伝わってきて、土方の耳をおそった。
「っるせーな!なんだよ!!」
『大江戸西公園で攘夷派のテロが起きたんです!!人質を全員、花見やぐらに集めて殺すって喚いてるんですよ!』
「は、今どこっつった」
『え、だから、大江戸西公園…』
 土方は受話器から耳を離し、目の前にある看板を見た。《大江戸西公園》でかい文字で、ご丁寧に黒々と。しかも、スピーカーで「殺す」とか聞こえてきた。
「アレ、向こうが騒がしいですぜィ」
「あっちでやってんのか」
 土方はまた、受話器に耳をつける。
「土方さん!早く来てください!!」
「…おー、30秒で行く」
「はや!ふざけてるんですか!!アン…」
 土方はめちゃくちゃすごい勢いで携帯ブチ切ると、猛ダッシュで公園に入っていった。「あ!!トシ抜け駆け!」
「大串君が一番はしゃいでら」
「ガキですねィ」
 ああ、なんかもう、泣けてきた。