二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 戦国BASARA【月に誓う…〜記憶を追い続けて〜】 ( No.659 )
- 日時: 2010/05/05 13:26
- 名前: ターフ ◆lrnC2c/ESk (ID: 3c0JYUg8)
- 参照: http://名前変えたよ★(元はトコ)
——甲斐——
「・・・・お館様」
幸村はあの時言われた言葉に引っ掛かっていた。
それは、今川義元が織田信長に討たれた後の小田原城の日に遡る。
その時、幸村が尊敬する武田信玄が北条氏政を破っていた。
幸村はすぐさま信玄に祝いの言葉をかけようとしたが、忙しそうなので氏政の槍が立っている場所へと移動してみていた。
夕日が槍の陰を伸ばす。
幸村はその槍をそっと触ろうとし、手を伸ばした時・・・・・・・・・・・・・———。
「——幸村よ、その槍はそこに立たせておけ」
「——!、お館様・・・!」
信玄の声の方に振り向いて信玄に近付く。
「今回の上落、誠におめでとうございまする!!」
「うむ」
信玄は氏政の槍を眺めるように見る。
幸村も信玄と同じく見た。
ふと信玄は呟くように幸村に言う。
「幸村よ・・・織田信長をどう見る?」
「!・・・織田信長でございますか?」
聞き返すように言うが信玄は頷くだけだ。
幸村は少し俯いて、信玄にちゃんと言った。
「先ほどの戦い・・・この幸村、戦場で強き者と相まみえて心が滾らなかったのは初めてでございまする・・・」
幸村は自分の胸にトンと拳を置く。
信玄はただ見守るように幸村を見ていた。
幸村は続けて言う。
「第六天魔王である織田信長は・・・この世のものとも思えぬ凄みと殺気と言っては生々しいものでありましたでござる。・・・しかし、伊達殿は魔王に迫りながらもよもや背を向けるとはこの幸村、見損なったのでござる!」
幸村は強く己の心で思った事を吐いた後、また俯いた。
信玄はその幸村に近づいて言う。
「幸村よ」
「はっ・・・・・」
顔を上げるのと同時に・・・・・・・・・・———。
ドゴゥッ・・・・・・・・・・・———。
「ゴフッ!!!」
「この、大馬鹿者めがっ!」
後ろの塀まで幸村は飛ばされた。
幸村は信玄に殴られたのだ。
少し呻って立つ。
「お・・・お館様・・・!」
信玄は息を吸って幸村に言う。
「幸村よ!!恐れを知らぬのは愚の極み!恐れを知る事もまた武人には必要にして不可欠なものじゃ!」
幸村はよろけて一歩一歩信玄に近付いて聞く。
その言葉に幸村は少し声を震わせる。
「し、しかし強い敵を恐れては・・・・!」
ドゴゥッ・・・・・・・・・・・———。
「グハッ・・・・!」
また信玄に殴られて呻った。
信玄はまだ続きがあるように言う。
「幸村よ!お前は何故この戦乱の世に槍を振るう?何故戦うのだ?」
簡単な質問だと幸村は思って大きく言った。
「それは無論!お館様のお役に立ちたい一心にて!某は武田第一の家臣でござる!我が魂そして我が槍は、全てお館様の為に・・・・。ひいては、お館様に天下をお取りいただきこの日の本をすべていただきたく存じまする!!」
ジリッと手に力を入れて、幸村は拳を作る。
信玄は黙って幸村の姿を見ていた。
そして・・・黙っていた信玄が口を開く。
「・・・それが成った時、お前はどうする?」
「——!」
幸村は少し驚いた顔で信玄の顔を見る。
信玄は真面目な顔で返した。
幸村は少し考え、言葉を口にした。
「・・・もちろん、某はお館様のお傍にいて生涯お館様の」
途中で行き成り言葉を切らした。
理由は目の前にいる信玄が腕を振り絞ってまた拳を当てようとしていたからだ。
「——ッ!」
グッと幸村は目を閉じた。
某は・・・・・また殴られる・・・・——。
そう思って衝動を待っていたが・・・来ない。
「・・・?」
幸村は恐る恐る目を開くと、目の前でピタッと拳が止まっていた。
「お・・・お館様・・・・?」
信玄はふいと後ろを向いて幸村を見ずに言う。
「・・・いずれお前にも分かる日が来よう」
そう言ってその場からいなくなった。
幸村はその言葉の意味がまだ知らなかった・・・・・・・・・・———。
其の壱百壱拾四成 言葉の意味