二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 戦国BASARA【月に誓う…〜記憶を追い続けて〜】 ( No.743 )
日時: 2010/05/16 10:50
名前: ターフ ◆lrnC2c/ESk (ID: 3c0JYUg8)
参照: http://名前変えたよ★(元はトコ)

葵は無言で荷物作りをしていた。
従兄である政宗には許可を得なきゃいけないのだが、そんなしている場合ではない。
行き成り甲斐へ行くと言ったのはあの謎の声が昨日の晩に言ったのだ。
“甲斐に行けば、思い出すものがあるかもしれない”と・・・・。
葵はこの頃、甲斐に行った事があるような感じはしていた。
幼い頃の友達、弁丸も甲斐の国の者かもしれないと思ったのだ。
「・・・・弁丸」
この名前を言うと何故か葵は恋しくなった。
心が和むと言うか、何故か温まる・・・・。
葵はスッと瞼を閉じた。
心臓の音は一段と少し早くなった。
この気持ちはまだ葵は知らない。
ゆっくり瞼を上げ、途中だった荷物作りを再開する。
政宗には黙っているが、本当は今日の静かな晩に甲斐に行く。
もう時間は無い。
その時・・・・・・・・・・・・・・・・・・———。
「——葵様、小十郎です」
「——!」
自分の部屋の前に小十郎の影が写る。
何か察知して来たか、あるいは・・・——自分を止めに来たか。
葵は少し荷物を隠し小十郎に言う。
「・・・入って良いよ、小十郎」
「はっ、失礼いたします」
スッと音があるか無いかのように小十郎が入ってきた。
葵は少し冷や汗をたらして小十郎の用件を聞く。
「・・・何か用?小十郎」
「えぇ、少し長話しの用ですけどね」
「・・・・長話し?」
おやっと葵は思った。
小十郎は自分を止めに来たのではない。
それは小十郎の態度で分かった。
「・・・話して」
葵はそう言って小十郎の前に正座をして見た。
小十郎は少し咳払いをしてから言う。
「コホン・・・。では、少し長いお話ですが葵様・・・・——貴方は時々、従兄妹ではないと思った事はありませんか?」
「・・・は?」
葵は思わず小十郎を凝視した。
政宗と葵は従兄妹だと幼い頃から言っていた小十郎だが今日に限って“従兄妹ではないと思った事は無いか?”と言ってきた。
葵は少し引きつった笑顔で言う。
「小十郎・・・冗談な事言わないでよ。僕と政宗は幼い頃から従兄妹だったでしょ・・・?」
「えぇ、そうでしたね」
・・・・・“そうでしたね”って・・・小十郎は、何が言いたいの・・・?——。
一瞬、その言葉に疑問が走る。
小十郎はやれやれというような顔をした後、真剣になった。
「葵様が言っている事は確かにそうでした。・・・しかし、葵様は政宗様の・・・・——従妹ではありません」
「——っ!・・・・どう言う事?」
葵は冷静になって言うが、言葉が震えていた。
葵は動揺と不安が走り、思考停止になった。
従兄妹ではないとすると、赤の他人かそれとも何かの選択肢になる。
言葉が震えているのに小十郎は気が付く。
葵は小十郎が気が付くとは思ってもいない為、口を開く。
「・・・政宗の従兄妹じゃないなら・・僕は、なんなのさ・・・!」
「・・・・葵様」
なだめようとするが、葵は怒りが来ていた。
「政宗は・・・!政宗は・・・優しい従兄妹で僕の事を心配してくれる唯一の大切な人・・・。だけど、従兄妹じゃないなら・・・僕は・・・・僕は・・・!」
ガリッと下唇を噛む。
血の味が口の中にジワッと広がるが、葵はもう気にしてられなかった。
小十郎は見ていられなく即座に言う。
「葵様、落ち着いてくだされっ!・・・葵様は赤の他人ではありませぬ」
ピクンとその言葉に反応した。
「え・・・・・?」
小十郎は怒りが止まったのを見て、ゆっくり口調で話す。
「政宗様が十六歳の時に遡ります。葵様が調度良く、部屋に閉じ篭っていた時でした」
「——!」
葵はその時を思い返した。
あの時は、自分の父や母がいなくなり自分だけ何故か城へと戻っていたのだ。
父や母はもう帰って来ないのに、深く傷ついて篭っていたその頃は複雑でしょうがなかった。
笑顔も忘れ、政宗の事も考えず深く後悔したあの頃。
葵はあの頃を思い出すと自分を恨んでしまう為、そっけない言葉で返す。
「・・・忘れたよ、その頃なんて」
小十郎は葵少しきつく見たが葵は小十郎の目に合わせなかった。
「・・・そうですか、まぁ過ぎた事など覚えているはずがありませんよね」
「・・・・・・・・・」
自分が嘘を付いたのに小十郎は葵の事を思って言ってくれた。
小十郎は続きを話す。
「まず、本題に戻しますね。・・・その頃、政宗様が葵様を心配していらした頃に——ある本があったのです」
「ある・・・本?」
「えぇ、今は政宗様が大事に保管をしていますけれども」
付け加えて小十郎は言った。
そう言えばと思い葵は少し前に事を思い出す。
少し前、政宗の部屋をあさっていた所に古ぼけた本があった。
捨てようと思ったが政宗に見つかられてしまい挙句にその本の事まで怒られたのだ。
「その本は・・・・——この伊達家の跡継ぎ名簿だったのです」
「——!・・・跡継ぎ・・名簿」
そう呟くと小十郎は頷いた。
葵はその事を聞いて気が付く。
小十郎に少し驚いた顔をして見た。
小十郎は葵が気が付いたのを見てまた頷いた。
「それじゃあ・・・・僕は!」
「・・・そうです、葵様は政宗様の——実の妹君になります」
その言葉を聞いた葵は何故か分からないが部屋を飛び出して行った・・・・・・・・・・・・・・———。

其の壱百弐拾五東 従兄妹ではなく実の妹