二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 戦国BASARA【月に誓う…〜記憶を追い続けて〜】 ( No.771 )
- 日時: 2010/05/25 07:16
- 名前: ターフ ◆lrnC2c/ESk (ID: 8keOW9sU)
- 参照: http://名前変えたよ★(元はトコ)
☆特別番外編1 第二章 〜忘れた笑顔〜 ☆
雪に拾われたあの日から三日が経った。
葵は恩を返す為、テキパキと働く。
今葵がやっている家事は朝食作り。
「あら、やっぱりお早いお目覚めなのですね葵様」
「・・・まぁ」
曖昧な返事で返すが、雪は気にしない。
葵は無言で朝食を作っていく。
まるで元は農民育ちの者のように雪は見た。
手際の良い包丁の使い方、米の炊く時間など正確なのだ。
「・・・・良し、これで良いね」
すぐに茶碗を取って来ては入れていった。
「葵様は、料理がお上手なのですね」
「・・・うん、まぁね」
少し苦笑したように雪からは見えたが、葵的には笑えていない。
いや、笑えないのだ。
葵は笑顔をどうやるかを忘れてしまったのだから・・・。
「それよりも・・・“様”付けは・・やめてほしい」
「え?そうですか?」
雪は意外な言葉に少しキョトンとした。
今まで侍は“様”付けではないといけないのだが、葵にとっては嫌らしい。
葵様は・・・・・変わったお方ですね・・・——。
少しクスッと雪は笑った。
葵は笑ったのに気付いてなかったらしい。
「朝食・・・・食べようか」
「はい、そうですね」
こうして三日の朝の流れが始まる・・・・・・・・・・・・・・・———。
☆****☆
「フゥ・・・疲れました」
雪は額の汗を拭き取る。
その時・・・・・・・・・・・・・・・・・———。
ズキンッ・・・・・・・・・・・・・・・———。
「——っ!」
行き成り痛み出した胸を押さえ込んだ。
彼女は急いで薬を取り出す。
そしてゆっくりと飲んだ。
実は彼女、雪は心臓病で余命をかなり前から宣告されていた。
両親が幼い頃からいないが、二つ分かれた兄が薬代を送ってくれる。
・・・・葵さんには・・ばれないようにしませんと——。
彼女は一人で生きてきた。
他の人の助けを貰うと何故か嫌になってしまう。
そんな彼女、雪は外を見た。
またチラチラと雪が降ってきた。
・・・・・母様、雪は・・——。
そう思っていた時・・・・・・・・・・・・・・———。
「——雪、入るよ?」
「——あ・・・」
ガラッと開ける葵の目線がピタッと薬の方へと見た。
「・・・・薬?」
「あ・・・えっと・・・;」
薬の種類を見破られそうになり雪は焦る。
「こ、これは、貧血の時に飲むものなので!」
「・・・・・・・・・・」
スッと一歩一歩近付くのに何故かギュッと目を瞑った。
何故か分からないが怖くてしょうがないからだ。
そして怒鳴られるかと思ったら・・・・・・・・・・・・・・・———。
ナデナデ・・・・・・・・・・・・・・・・———。
「——?」
何故か葵に撫でられていた。
少し悲しい色を浮かばせている葵を見る。
葵は口を開く。
「・・・・心配させないで、雪。・・・一応、居候の身だしね」
「・・・・葵さん」
雪は少し馬鹿な事したなと言う悔いを残す。
葵はそれを見抜かない。
心の渦に少し巻き込まれているのだ。
まるで雪が母のように見えるのは葵の情けとも言えるだろう。
「・・・・・僕は、大切なものを見つけたかもね」
ボソッと言った言葉を雪は聞き取れなかった。
だが、“大切なもの”だけは聞き取れた。
葵がここに来るまで何かを失くしたのだろうと雪は悟り自分と重ねる。
そうするとなんだか同じ立場の人がいると思うと何故かクスッと笑ってしまった。
葵はすこし驚く。
「・・・・なんで笑うのさ?」
「あ、いいえ。ただちょっと・・・私と同じかなぁって思ってしまったので」
雪は綺麗な笑顔で葵を見た。
葵は少し留まっていたが、何とか少し笑えたような気がした・・・・・・・・・・・・・・・・———。
(自分の大切なものを見つける時間・・・。だが、魔の手はすぐそこに・・・)