二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: フェアリーテイル 〜FAIRYTAIL〜 43話更新 ( No.155 )
- 日時: 2011/01/01 17:11
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
44話〜降り注ぐ悲しき刃〜
『ふふっ。どうだいこの姿?君の中で一番印象の強い姿だけど、気に入ってもらえたかな?』
くすくす笑いながら『リサーナ』が言った。それを見て歯を強く噛みしめるナツ。
『名前はリサーナっていうのか。君とは随分と仲良しだったみたいだね』
『リサーナ』はそう言うとナイフを取り出し、ナツへと襲いかかった。
「・・・・!!」
目の前の状況の処理に時間がかかり、交わしきれず頬をかすめる。
『随分と反応が鈍いんじゃない?そんなんじゃあっという間に死んじゃうよ』
『リサーナ』が更に襲いかかる。
「止めろリサーナ!お前何やって・・・!!」
ナツは自分で言ってハッとなった。ここは自分の頭の中。つまりは現実ではないってこと。
目の前にいるリサーナは誰かが生み出した幻想にすぎないってことに。
『どうしたのさナツ君!?いつまでも避けてるだけじゃ死んじゃうよ』
「なめんなぁ!!」
ナイフを交わし、『リサーナ』の顔を殴るナツ。『リサーナ』は倒れたままピクリともしない。
ナツは『リサーナ』を殴った拳を見つめ、強く握りしめた。
「くそっ!偽者って分かってても仲間を殴んのはきちーな」
「酷いよ、ナツ」
「!!!」
ナツが『リサーナ』を方を向くと、『リサーナ』は立ち上がり殴られた頬を押えていた。
「仲間の顔、こんなに強く殴るかな?まあ何時もの喧嘩とは違って今は戦闘中だもんね」
さっきまでの『リサーナ』は外見はそっくりだった。だが醸し出す雰囲気や声は別物だった。
だが今の『リサーナ』は姿も声も雰囲気もまるっきりリサーナ本人だった。
ナツの顔色を見て、『リサーナ』は笑顔を向けた。
「どうしたのナツ?そんな顔して。らしくないよ」
「っ!!!!」
『リサーナ』のする行動全てがナツの神経を支配し始めていた。
目の前にいるのは偽物なんだ。とっととぶったおしてここから出てやる。
頭ではそう思いこんでも、目から入ってくる映像が目の前の『リサーナ』を本物と叫んでいる。
死んだはずのリサーナに。
「ねえナツ。覚えてる?2年前の事」
「!!黙れ!!!てめーはリサーナじゃねーんだ!!!偽物が語ってんじゃねーぞ!!」
ナツは正直もう自分でも何を言っているのかが分かっていなかった。本能で信じようとする自分と
理性で偽物だと言い続ける自分に頭が一杯になっているのだ。
「相変わらずせっかちね〜〜。少しくらいお喋りさせる時間ぐらい頂戴よ。
女の子の話も落ち着いて聞けない男の子は嫌われちゃうわよ」
「・・・!!この・・・!!」
一々こちらの記憶を抉る様な事を言う『リサーナ』。ナツが大人しくなったのを見て『リサーナ』が語りだした。
「2年前、ミラ姉の付き添いとして私とエルフ兄ちゃんはS級任務『ザ・ビーストの討伐』に行った。
その時にエルフ兄ちゃんが全身接収に失敗して暴走。私はそれを止めようとして死んじゃったんだよね。
その性でミラ姉もエルフ兄ちゃんも辛い思いをした」
「だから何だ。んなことはフェアリーテイルの皆知ってるぞ。ミラとエルフマンだけじゃねえ。
フェアリーテイルの皆がお前の死を・・・」
ナツはそこで言葉を切って、自分の不甲斐無さに舌打ちをした。俺は今、目の前のこいつを
本当にリサーナのように扱ってしまった、と。
「うん。私も逆の立場だったら本当に悲しんだと思う。ギルドの皆は家族当然だからね。
・・・ねえナツ。私が死んだ時こんな風に思わなかった?」
「ああ?」
「『俺が一緒に行っていれば』って。『そうすればエルフマンの暴走も俺が止められたかも』って」
ナツは拳を血が滲むほど強く握る。それを見て『リサーナ』は笑い声をあげた。
「あははははっ!!やっぱり図星なんだね。まあ誰でも思うよね。
俺がいれば、私がいれば、って。・・・でも」
—グサッ!—
何かが刺さる音がした。ふと音の発生源を目でたどるとそれは自分の腹部だった。
ナイフが深々と突き刺さっている。気付いてから起こる激しい痛み。ナツは膝を地面に着け、吐血する。
投げたのは『リサーナ』だった。
「こんな攻撃も避けられないじゃ無理だよナツ。それにあの場所にはミラ姉もいた。
そのミラ姉ですら、私を救う事は出来なかった。だからナツがいたぐらいじゃ現実は変わらなかったよ」
「う・・るせえ」
「じゃあナツは勝てたの?『魔人』と言われてたあの頃のミラ姉に?」
「・・・・・」
ミラは今でこそあんなおっとりとした性格だが、2年前、リサーナが死ぬまではナツとかと同じく問題児の一人だった。
今とは正反対に口調も粗暴で好戦的、あのエルザをライバル視していて喧嘩を絶えなかった。
そんなミラが変わったのはリサーナの死。それ以降はミラは現役を引退し、今に至っている。
「さてと・・・」
『リサーナ』は再びナイフを取り出すとコツコツと一歩づつナツへと近づいていく。
「ちっ!」
ナツは立ち上がろうとするが足に力が入らない。と、いうより全身が金縛りにあったかのように
身体が動かなくなっていた。
「じゃあね、ナツ」
いつの間にかすぐ傍で来ていた『リサーナ』。そして今まさにナイフをナツ目掛けて振り下ろす直前だった。
「ばいばい」
『リサーナ』がナイフを振り下ろす。ナツはそれを見ている事しかできなかった。
—バチンッ!—
・・・突然『リサーナ』は吹き飛ばされた。ナツは何が起きているか分からなかったが、後ろから声が聞こえた。
「もう〜〜。何してるのナツ!ほら、立って」
後ろから伸びてきた手がナツに刺さっているナイフを抜き取った。不思議と痛みがなく、金縛りも
いつの間にか解けていた。立ち上がったナツは誰だと後ろを振り向く。と、そこにいたのは。
「ほら、とっととあの偽物倒してカムイの所に戻ろう!」
「・・・リサーナ」