二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: フェアリーテイル 〜FAIRYTAIL〜 45話更新 ( No.166 )
- 日時: 2011/01/25 18:43
- 名前: アビス (ID: U3CBWc3a)
46話〜夜に昇る私だけの太陽〜
「あら!ナツ、カムイ。それにチーも。お帰りなさい」
ギルドに戻ったカムイたち。それに一番最初に声を掛けたのはミラ。
「ただいま。なんとか手に入ったぜ、ティア・アップル」
カムイが袋をカウンターへと置く。中身は勿論ティア・アップル。
依頼人の分とは別に頂戴した物だ。
「厨房貸してくれ。家のは使ってないからしっかり動くかわかんねーから」
「分かったわ。じゃあ、さっそく始めましょう」
「あ!ナツ。依頼、手伝ってくれてありがとうな」
カムイは厨房への扉を潜ろうとしたとき、ナツに向かってそう言った。
「ああ?気にすんじゃねーよ。仲間だろ?」
ナツはそう言ってほほ笑むと、ギルドの扉の方へと歩いて行った。
と、そこに丁度ナツのパーティのエルザたちが戻ってきた。
「あっ、ナツ!ただいま〜〜!!」
真っ先にハッピーがナツへと向かう。
「ふむ。ちゃんとギルドで帰りを待っていたようだな」
「ナツにしちゃ〜〜、珍しいわね。てっきり一人で別のクエストにでも行ってると思ってたけど」
「ん??まぁ、カムイと一緒にクエストに行ったけどな」
ナツがあまり興味なさそうに言う。
「そうか。じゃあ、今から新しいクエストに行くぞ。準備しろ」
「おいおい。今、帰ってきたばかりだろ?」
グレイが少しは休ませろと言いたげに言った。
「休みなら、先のクエストの後に十分取ったじゃないか」
「・・・悪い。少し待っててくれねーか?」
ナツはそう言うと、エルザたちの応答を待たずにギルドを出て行った。
「どうしたのかしら?何かナツらしくない」
「あい」
ナツの態度に心配そうに言うルーシィ。それとは反対にグレイは、ははっと笑いながら肩を竦めた。
「どうせ、仲間外れにされて拗ねてんだろ。無視しとけ無視。すぐ何時もの調子に戻るさ」
「そうな風には見えなかったがな。まあいい。ナツが戻ってくるまで休むとしよう」
この時、ナツがどうして態度が可笑しいのか、なんとなくだがグレイ、エルザ、ハッピーには想像ついていた。
それをあえて口に出さなかったのは、それは3人にとっても、良くない想像だったかもしれない。
——————————ガルディア大聖堂——————————
ナツは一つの墓の前で足を止めた。その墓には『LISANNA』と彫られていた。
「助かったぜリサーナ。お前のおかげで命拾いした」
ナツはそう言った後、照れ臭そうに頭を掻いた。
「って、お前に言っても分かんねえか。・・・・結局、あのリサーナも俺だったわけだからな」
ナツは気付いていたのだ。あの時の二人のリサーナ。
『リサーナ』は霧の効果でナツが自分で自分を精神的に追い込むために生み出したもの。
そして、リサーナは自分の中に眠るリサーナの意思が具現したもの。どちらもナツが生み出した幻。
どちらも結局はナツ自身だということ。
「じゃあな」
ナツはそう言うと、リサーナの墓を背にして歩きだした。
—ナツ—
「リサ・・・・!!」
ナツは振り返りリサーナの墓を見るが、勿論そこにリサーナもいず、ただ辺りには、
頬をくすぐる優しい風が吹いているだけだ。
だがナツは、何かに反応するように微笑むと、またリサーナの墓を背にし、歩きだした。
そして小さく手を挙げて、別れの挨拶をしたのだった。
——————————フェアリーテイル——————————
「上手く出来ね—な」
一方カムイはレナに届けるアップルパイ作りに悪戦苦闘していた。
ミラのアドバイス通りやってもどうも納得のいくものは出来なかった。
「料理ってこんな難しいんだな」
「ん〜〜〜。レシピ通り作ってるのに失敗するのは、もう才能の差ね」
「・・・ああ、そう」
ミラの毒舌を無視し、もう一度一から作り直すカムイ。
「作るとき、贈る相手の事を思いながら作ると上手くいくわよ」
「なんだそれ?」
今までのアドバイスとは違った傾向のアドバイスに、カムイは尋ねた。
ミラはにこにこしながら言った。
「料理って、そういうものなのよ」
「ふ〜〜ん」
物は試し、半信半疑のままミラのアドバイスを実行しようとした。が、
「林檎・・・・。焦げちゃってるわよ」
「あ・・・・」
鍋を強火のまま話していたため、輪切りにしといた林檎が黒くなってしまっていた。
「また、最初っからね」
「はぁ〜〜〜」
カムイがため息をついていると、ミラが時間を確認した。そしてカムイに言った。
「あ、今日の夜11時にはアップルパイ、レナに届けてね」
「なんでだよ?」
「その時間にはあの子、もう寝ちゃうから。作ったものは速く届けた方がいいでしょ?」
カムイが時間を確認する。ここからレナのいる町までの距離を考えると残された時間は、
「後、一回分しか作れねーじゃん!」
——————————夜11時前、ミケス——————————
「ミラ・・・届け物ってなんだろう?」
レナは自宅前で一人、顔を俯きながら手に息を吹きかけ待っていた。それにはこういうわけである。
つい数時間前、ミラから届いた手紙。内容はこうだ。
『レナ。悪いけどちょっと渡したいものがあるの。どうしても今日中に渡したいんだけど、
その町までの届けるのちょっと時間がかかるの。
夜11時頃にはそっちに届く筈だから、家の前で待っててくれないかしら?』
「早く来ないかな?届け物」
一人を極端に嫌うレナにとって一人で待つというのは、辛いことだった。
親に一緒に待っててもらおうとしたが、この時間には両親は寝ているため、わざわざ起こすのも悪い。
仕方なく一人で待っているが、やっぱし耐えがたいものはある。
「・・・・・カムイ・・・」
「呼んだか?」
「え?」
レナが顔を上げると、そこにはカムイの姿があった。と、レナは顔を真っ赤にした。
寂しい思いをしている時に思わず呟いてしまった人の名前。それを他の人に、
しかも本人に聞かれたのだ。恥ずかしくないわけがない。
「え!?なんでカムイがここに!?あ・・あの、今のは別に大きな意味はなくてね!!
私はただ、ミラからの届け物を・・・・」
レナはてんぱって早口でいろんな事を喋る。それを見てカムイはなんとなくほっとした。
正直、ここに来るまでレナはこれを受け取ってくれるのか、それ以前に俺に会ってくれるのか。
そんな事を考えていたのだが、レナに合った途端そんな心配が一蹴した。
カムイはレナの頭に手を置いた。すると、今までてんぱってたレナが大人しくなった。
レナにとってカムイは太陽のような存在。それに触れるだけで心は落ち着いてくる。
「レナ。お前がこの町で一番思い出のある場所ってどこだ?」
「え?・・・・・中央公園」
どうしてカムイがそんなことを尋ねてくるか不思議だったが、レナは答えた。
「よし。じゃあそこに案内してくれ」
「・・・・あ、だめだよ。私、ここでミラからの届け物待ってなくちゃ。もうすぐ来ると思うんだけど」
「う〜〜〜ん。・・・チー、もしその届け物が来たら教えてくれ。・・・・これでいいだろ?」
レナは少し考えた後頷くと、カムイはその思い出の場所に連れて行った。
・・・・勿論、ミラの言った『届け物』が『カムイ』であることは言うまでもない。