二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 紫弓 【銀魂】 ( No.16 )
日時: 2010/01/15 19:06
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:         ——『殺さないで、って素直に言ったらどうだよ』

■━・・・拾壱

今日は兄貴と俺で、江戸の様子を調べに、船から降りてきた。

俺とか大体船内とかで仕事してるから、勝手に外出ると必ずまた子にカチ怒られる。
だから、兄貴と2人で、江戸に出てこれるのは地味に嬉しかったりする。
俺は、いちいち江戸とかの様子なんて鬼兵隊の総督がわざわざ出てくる必要は無いと思うんだけど、兄貴がいつも

「稜、行くぞ」

って言うから、着いていかなきゃいけない感じになっちゃうし。
ま、俺は楽しいからいいんだけどさ。

いつもは武器の仕入れ所とかチェックしたり、隊士達が喜びそうな酒買ってったり(それは俺だけだけど)、いろいろするんだけど、今日はする事が終わっても、兄貴は帰ろうとしなかった。

『兄貴、帰らねェの? もう夕方だぜ?』

もうお日さんは沈みかけてるし、何か港とは反対方向のかぶき町の方に兄貴は進んでってるし。
俺が言ったのも無視して、兄貴は静かに歩く。
いつもは短くても、必ず返事を返してくれるのに。

何か変だな…

俺はそう思いながらも、兄貴の後ろに着いていく。

店じまいする団子屋の店長とか、そろそろ家の中に入れって怒られてるガキとかを兄貴は睨み散らしてた。
恐ろしくて真っ青にした店長やガキ達は、急ぎ足で家の中に入っていく。
機嫌悪いのかな。だとしたら、俺はそんなに話しかけることが出来なくなる。兄貴に。

早足で進みだす兄貴を、俺は慌てて追いかける。
そんな兄貴が、急に足を止めた時、俺は勢いで前にのめった。

『おい兄貴、急に止まるとか…。さっきからおかしいよ』

俺は半ば真剣に言ったんだけど、兄貴はまたもや無視する。
すると、俺達の後ろから声が聞こえた。

「今夜は鍋にしましょうか。あったまりますよきっと」

「肉たっぷり入れるネ! そしてその肉は全部ワタシがもらうアル」

「オイてめー肉はあまり食えねェ貴重なモンなんだぞ、独り占めされてたまるか。酢昆布鍋でも一人で囲んでやがれ」

「一人じゃ囲めないアル!」

「囲む気満々なの神楽ちゃん…」

なんて、気が抜けるような会話が聞こえてきた。

あーあーいいねェ平和ボケした市民達は。
俺は今でさえ兄貴の機嫌気にしなきゃいけねェんだから。呪縛から開放されねェよ、ッたく…
お鍋いーなー。

俺もポワポワした事考えてたけど、兄貴の周りの空気はピリピリしてた。
そんでもってそのピリピリが、ビリビリに変わるのが、次の女の声を聞いてからだった。

「銀時、酢昆布は既製品の菓子ゆえ、鍋に入れてもダシは出ぬぞ」

あんな冗談にマジな考えで返す女の言葉。
銀時、っつー名前にちょっと聞き覚えがあったけど、俺は忘れた。

「そんな事分かってますー! ったくお前は冗談通じねーのな! 生真面目な性格直しやがれ泉菟!」って、男が女に言ってるのが聞こえる。

つか、こんなんどーでも良い俺としては、早く帰ってまた子の作った味噌汁が飲みたかった。

そんでもって兄貴はビリビリとした空気を発しだす。
もうなんなの、俺わけ分かんない。

兄貴は急にぐるんっと後ろを向いてきた。
その目線の先には俺じゃなくて、その会話の声の主とされる人物達が居た。

ちっさいチャイナみてェなガキと、
普通過ぎて地味なガキと、
白髪でクリンックリンの髪型した男と、
藍色の髪をした女。

そいつ等は自分らの会話に忙しいらしく、目の前に居る俺と兄貴は見えてなかった。

兄貴はソイツ等の顔を1つ1つ確認してた。
中でも、藍色の髪した女の顔は、ジーッと見てた。

え、何、どうしたの兄貴。
ちょっと気持ち悪い。え、それ言ったらおしまい?

何秒間か経って、兄貴はまた前を向いて歩き出した。
しかし、今度は港の方向に。俺の中は、1日中兄貴に振り回された感で満たされてきた。何なの、ホント。

船に帰っても、兄貴は甲板の上でずっと月を眺めてた。

なーんか問題起きそう、なんて、俺は其の時冗談半分で思ってたけど、まさか本当に大変な問題が勃発する事なんて、当たり前だが予想してなかったわけで。

とりあえず俺が気付いたのは、あの藍色の髪の女が、攘夷志士だという事だけだった。


■━━・・・