二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 紫弓 【銀魂】 ( No.25 )
日時: 2010/01/15 19:21
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:         ——『殺さないで、って素直に言ったらどうだよ』

■━━…弐拾

宙船は、いつも人気の無い港に止まっている。
港の倉庫で薬物の売買なんて日常茶飯事だし、死体が転がっててもおかしくない場所だ。

一般人は寄り付かないし、人が来るのは何か事件があった時だけ。
この前なんて俺が殺されそうになったね。
まぁごくごく普通に返り討ちにしてやったまでなんだけどさ。

俺が連れてきたこの女、鬼兵隊に馴染むどころか恐ろしくて逃げ出すんじゃねェか?

そんな奴が欲しいのか? 兄貴は。
頭イカれてんじゃねーの?

船の前で俺は女を降ろした。
ぽかんとした表情で船を見つめてる泉菟とか言う奴。
コイツが、本当に鬼兵隊の力になるのか、俺は甚だ疑問を感じていた。

「…貴様、何故我をこの様な場所に連れてきた」

俺を睨みつけながらそう問いかけてくる。
知るか、って言いたいとこだけど、俺は大人だから、グッと堪えた。

『えー…っと、俺の兄貴が、アンタが欲しいって言うもんだから』

馬鹿正直に答えたな、と後から思った。
俺の答えを聞いて、女はムッとした顔つきになる。

「我は物ではないぞ。貴様の兄上が何を言おうと、我はこの身を誰かにくれてやる気ない! 帰らせてもらうぞ」

いや正論だよ? 正論だけどさ。
女は俺にそう強く言うと、くるりと向きかえって、港の出口に戻ろうとした。

まぁ俺はこれを止めなきゃいけないワケで。

『いやアンタの言ってる事は正しいよ? けどさ、こっちには事情っていうモンがあってさ。兄貴の命令は絶対なんだよ、守らなくちゃいけないの』

女の前に躍り出て、そう説得してみる俺。
けど、まぁ当たり前に女は聞く耳を持たない。

こりゃあもう武力行使しかないかな?
どうしよう、傷つけんなって言われてるし…

俺の気も知らないで、女はずんずんと進もうとする。

ガシィッ! と俺は女の手を掴んだ。

『待ーてって言ってんだろうが!! アンタを連れてかなきゃ俺が殺されそうになんの! 頼まれて任務はさっさとこなしたいの! それが俺のポリシーなの! 分かる!?』

「分からないし分かりたくもないわ!! 貴様が何であろうと我には関係ないであろう!」

『アリアリなの! アンタが目的なの!! いい加減にしないともう殺す勢いでやんぞ!?』

「してみるが良い! さすれば我も本気で反撃といかせてもらうからのう!!」

大声出したせいで、俺と女はハアハアと息を切らす。
もうなんなのホント。だから女ってイヤなの。
まぁ俺も女だけどさ、さすがにこの女の気持ちは分からないよ。

俺は女の言葉に、『へェ…』と呟いた。

…こんなに手こずったの久しぶりだよ。

確かにコイツは強いさ。
俺もあの扇子の威力見てるからな。
並大抵の人間の能力じゃないのは分かってるよ?
だけどさ。普通にしてたらただの女じゃんか。
俺がそんな女相手にこんなに手こずるってさ。
大恥だよ? 恥ずかしいよ? 俺。

自分を責め続けてると、俺の中で、プチッと何かが切れる音がした。

急に静かになった俺を見て、女も不思議な物を見る様な目で俺を見る。

『……おめーってさ、攘夷志士だろ?』

静かに言った俺の言葉に対して、女はビクリと肩を震わせた。

『攘夷志士なら知ってる筈だ…、俺が、この世界で、何て呼ばれてっか…。よォ?』

女から手を離して、俺は2歩ほど後ろに下ると、ニヤリと不適に笑ってみせる。

『攘夷最強、攘夷一の戦闘能力———なんて言われてんの、俺』

背中の矢筒から弓と矢を取り出す。

女は俺とその弓矢を見て、俺の事を思い出したかの様に顔を引きつらせた。
驚きで口をぱくぱくしてる。何て間抜けなんだろうね。

『最強、なんて呼ばれてんだよ俺。だからさ、お前みてェなひ弱な女1人なんてさ。俺にとっちゃ、蟻んこ1匹指先で潰すくらいに造作もねェんだ!!』

次の瞬間、俺の弓から矢が飛んで、女の肩に突き刺さった。


■━━…