二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 新 モンスターハンター・バロル ( No.3 )
日時: 2009/11/26 16:06
名前: アビス (ID: 7.60N42J)

28話
   優しさ




「サラ・・お前」

スタークが信じられないという顔で言う。
サラ自身もよく分かっていないようだ。でも

「ミルナさん!前に飛んで!」

サラがいう。その声につられてミルナは前に飛ぶ。
すると、その直後ナルガがミルナが立っていた所を通り過ぎた。

間違いなかった。サラは完全にナルガの動きを読めていた。

「詮索は後だ。サラ、とにかくすぐに俺たちに伝えろ。こいつも相当なダメージをおっているはずだ。
このスピードを保ってられる時間はそんなにないはずだ」

ソニックが叫ぶ。その声にサラは

「はい!」

と、力強く言った。



「スターク。しゃがんで!」

「ちっ!」

—ギュン!—


「ミルナさん!横に飛んで!」

—ヒュン—


しばらくこんな状態が続いた。サラが合図をしてくれなくれば完全に
3人はこのスピードの前にやられていた。

だが、ソニックの言う通りナルガのスピードが落ちていっていた。スタークの捨て身の乱舞と
今のハイスピード。体力はどんどん削られていっていた。

現にソニックはサラの言葉に頼らなくても、攻撃を避けられるようになっていた。

「大分スピードが落ちてきたな」

ソニックが頭を下げ、大剣を前に構える。

—ギイイン!—

「もう少し、あともう少しすれば・・・」

ナルガは今も走り回っている。そして、ナルガがソニックに向かって真正面から突っ込んできた。

「来た!」

そう言ってソニックは、ジャンプをした。しかし、タイミングが早すぎた。ナルガもそれに合わして
ジャンプしたのだ。だが、ソニックはこれを待っていたのだ。

体を空中で仰け反り力を溜める。ナルガはソニックの体を引き裂こうと手を伸ばす。
その時、

「魔空・双葬!(まくう・そうそう)」

ソニックは二本の大剣をナルガに向かって投げつけた。大剣は見事両方の翼に刺さり、
そのままの勢いが死なず、大剣ごとナルガは地面にたたき付けられた。

ナルガの両の翼は完全に大剣と言う名の釘で地面に固定されて、まさに手が出ない状態だった。
ソニックは大きく息を吐いて

「サラ、お前の敵討ちなんだ。最後はお前が止めを刺せよ」

「え、私がですか?」

サラは驚いたようにソニックを見る。

「当たり前だろう。俺たちはお前の付き添うなんだからよ」

スタークはミルナに治療されながら言った。サラは覚悟を決めたように
頷くと、ナルガの前まで歩いた。すでにナルガは抵抗を諦めぐったりとしている。

サラはナルガの頭に標準を合わせる。そして、引き金を引こうとしたとき

—ガウガウ!ウォォオ!—

小さな鳴き声がしたかとおもうと、二匹の小さなナルガの子どもが出てきて、
サラとナルガの間に入りこちらを威嚇し始めた。

—ガウガウ—

子どもナルガがこちらに向かって叫ぶ。ソニックは軽く目を見開いたが、すぐに静かな口調で

「『これ以上母さんを苛めるな!』だってよ」

「え?」

サラが目を丸くする。すると、ミルナが

「そういえば、まだサラには言ってなかったね。ソニックはモンスターの心を詠むことができるの」

と、サラに説明した。サラはその言葉を聞くと目を閉じ顔を下に向け

「お母さんって、この子たちはこのナルガの子ども何ですか?」

と、小さな声で言った。

「そういう事だろう。ここまではっきりと声が聞こえたという事は、まだ子どもだからなのか
もしくは、こいつらがそれほど必死なのか・・・」

ソニックがそう答えると、目を開け顔を上げる、そして子どもナルガに近づいていく。
子どもナルガは少しおびえていた。大人ナルガのほうは先ほどまで大人しかったのに、
サラが近づくと、また暴れだした。傷口から血が派手に出でもまったく止めようとしない。

サラは子どもナルガの前までくると腰を下ろした。そしてその二匹の頭をそっと撫でた。
子どもナルガは不思議そうに、サラをみる。

「ごめんね。私の勝手な都合であなたたちのお母さんを奪おうとして。
お母さんがいなくなるのは、モンスターでもいやだよね」

サラはそう言うと大人ナルガの元にいき、深く突き刺さったソニックの大剣を抜き始めた。
少しずつ、少しずつ大剣が上へと上がっていく。

ナルガが苦痛の苦痛の表情を浮かべるたびに

「大丈夫。もうすこしだからね」

と、サラは親の敵である生物に優しく言葉をかけた。
両方の大剣を抜き終わると、サラの手は少しガクガクしていた。
それでもすぐにサラは傷口に回復薬をかけ始め、持っていた包帯を巻き始めた。

意味があるとは思わなかった。それでもサラは何かこの親子のしてあげたかったのだ。
そべての工程が終わり、サラが息を吐くと、子どもナルガがサラに飛びついた。

3人は慌てて武器を取った。いくら子どもでも丸腰で襲われたらひとたまりもない。
だが、その心配は要らなかった。

「くすっ。あははは、ちょっ、止めてって。そんなに舐めないでよ。あははは」

子どもナルガはサラの顔を舐めまわしていたのだ。それに耐えかねてサラは笑っている。
大人ナルガもその傍でよったりと自身の回復を担っている。

「おい、こんな状況ありえるか。いくら子どもでもモンスターだぞ」

スタークがあきれた様に、でも笑いながら言った。

「サラの持っている優しさはモンスターの心も穏やかにする。
サラにはそういう力を持っているじゃないかな」

ミルナが微笑みながらいう。



—キャウキャウ!ク〜ン—

大人ナルガも動けるほどに回復したので別れようとしたのだが、子どもナルガがサラから離れない。
しかたなく、大人ナルガが無理やり引き離す。

「ごめんね。でもいつかまた会いに来るから。その時まで。私のことは忘れないでね」

サラがにっこりとわらって言った。それで納得したのか子どもナルガは大人しくなった。

「こいつらが大人になったら、もうサラのことなんて忘れて立派なモンスターになってるっての」

スタークがそう呟いたとたん、子どもナルガ目が赤く光、スタークに飛びついた。

「うわ、いて。て・・てめ−らよしやがれ!」

「ははっ。『絶対に忘れるわけがないだろう!』ってさ」

「分かったから、離しやがれ!」

スタークなら子ども二匹なんて余裕だが、今は体がまだぼろぼろ。
やられっぱなしだ。


その後ようやく離れて、別れることができた。親子がいなくなった後、
サラは、あっ声を上げて、3人に頭を下げた。

「ごめんなさい。勝手にいろいろしてしまって。せっかく手伝ってもらったのに
無駄骨になってしまって」

「いっただろう。今回俺たちはお前の付き添い。お前がナルガを倒そうが治そうが
それはお前の意思なんだから、謝ることじゃねえ」

スタークはさらりと言った。サラはスタークの顔をみて微笑みながら

「はい。分かりました」

そういった。その後

「実はお願いがあるんですが、私もみんなと一緒に旅をさせて欲しいんです。
お父さんとお母さんが今まで見てきた世界を、その奥まで見てみたいんです。
いいでしょうか?」

サラは最後の言葉を少し自信なさげに言った。

「うん大歓迎。よろしくね、サラ」

「これで大壊龍・ガルドロスを討伐する最高メンバーがそろったな」

ミルナとソニックが言った。けど、スタークは単純に

「よろしくな」

その一言だけだった。だがサラは何故かその一言が一番嬉しかった。

「はい。よろしくお願いします」