二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: Monster Hunter ep2 古龍達の慟哭へ ( No.2 )
- 日時: 2009/11/30 10:05
- 名前: 哭辿 (ID: 74FX0tZA)
今までのストーリー(粗筋+貼り付け出来る奴)
〜前回までの粗筋〜
最近生まれた森と砂漠の狭間に有る小さな寒村イギラ村。そこの専属のハンター教官によりギルスはイギラ村に雇われた。
然し,ギルスが来て以降数ヶ月,一向に新たなるハンターも現れず現状を厳しく見たイギラ村の村長マドラカムは苦悩していた。その苦悩を見たギルスは大陸一大きくハンターの多い街であるダリスヴェンドへと金を使ってでもハンターを雇おうと向かった。そして,ダリスヴェンドで人外の者達と出会いヴォルトを師匠とし暫く町に居座る事を決める。
ヴォルト・ギルス・ノーヴァ・ワルキューレによるフルフル狩りから四日ほど過ぎてまた彼等は狩りにでるのだった。今回の標的は………
Monster Hunter ep2 古龍達の慟哭へ 第九話「大地を揺るがす竜 Part2」
ガタンゴトンガタンゴトン
アトノプスによる馬車があぜ道を悠々と通る。その中には右から大柄で堀が深い独眼の男・そして,銀の長髪の面長の顔,鮫の様に鋭い目をした肩に龍のタトゥーの男・眼鏡を掛けた翡翠の瞳が特徴的な色白の男・茶の短髪で緑の瞳・鍛えられた無駄な筋肉のない立て眼鏡の男・白い肌の気だるげな真紅の瞳と綺麗な結ばれた金髪が特徴的な美人の5人が乗っていた。
夫々,右からヴォルト・ジル,ワルキューレ・ヴァズノーレン,ゼクト・レッドニール,アーチャー・B・ヴェルナゼブル,ノーヴァ・ヒュールンと言い皆この大陸にて勇名を轟かせる人外の者達の一員だ。
ガタガタ…ワルキューレ「何だぁ?ヴォルトテメェまさか恐くて震えてんのか?」
ポタポタ…ヴォルト「んな訳ねぇだろ!!これは武者震いだよ!」
ワルキューレは注意深くヴォルトの表情や発汗率等を見て微苦笑して応える。
ワルキューレ「ふっ!そんなしかめっ面で冷や汗ダラダラで良くそんな嘘がつけるな!」
ヴォルト「………あんたは恐くないよなぁ…何せ俺なんかとは」ガシッ
ヴォルトの言葉に苛立ちワルキューレはヴォルトの胸を強く掴み冷たい目を向ける。
ワルキューレ「恐くないだと?恐いに決まってんだろ!!今にも此処から逃げ出してぇさ………だが,恐かろうがやばかろうが俺達はダリスヴェンドの連中にとっては最後の防波堤だろうがよ!!恐くて何が悪いって言いたかったんだよ俺ぁ…恐怖を抱かず自殺する為に自分から飛び掛って逝くほどに錯乱してねぇか心配だったから言ったんだよ……」
ヴォルト「………」
ワルキューレの言葉を聞きヴォルトは俯き暫く黙り込む。有る程度以上の恐怖は確かにハンターに必要なものなのだ。恐怖が有るからこそ痛みにより教訓を覚え其れにより逃げる事や道具を使う事を覚える。
然し,恐怖が過ぎると人はその恐怖を飛び越え自ら圧倒的な相手へと飛び込む。それは蛮勇ではなく唯の自殺……その相手の攻撃を喰らえば何の痛みも無く一撃で逝けると言う確信………
其れを持ち一時最高潮を超えて静まった恐怖を棄てるため永遠の死を目指し大型モンスターに向かっていき無残な死骸を残したハンターも数知れない。
アーチャー「然し,困ったものですね。戦う前から是では使い物になりそうに有りません」
ノーヴァ「………兎に角,邪魔だけはして貰いたくないです。皆が全力を出さなければ勝てそうに無い相手ですからね…
足が震えて正常な判断が出来なくて邪魔になるようでしたら一緒に来るのはお薦めしかねます。」
アーチャーとノーヴァの言葉は厳しかった。然し,彼等の言葉は事実その通りだ。相手は今までに無く強大なクシャルダオラ……攻撃力や防御力・生命力などあらゆる点で並の数倍を行くとされる存在。
既に多くの腕利きのハンターとギルドナイツを葬り去ったとされている怪物だ。ギルドナイツたちの先遣隊により大きな損傷は与えたらしいがそれでも今では相当癒えているだろう。
相手の実力を考えると戦う前から恐怖に歪む存在など外すに越した事は無かった。戦う前から足を震わせるほどでは狩場に行って正気を保てるとはとても思えない。
レッド「……今回のクシャルダオラについてだが吹き荒れる風の範囲,攻撃力・装甲の厚さ・生命力ともに並のクシャルダオラの二倍から三倍は有るらしい。しかも其れだけじゃない。
ハンターを網に張り罠に仕掛ける賢さや並のクシャルダオラと余り変わらない…否,それ以上の速力と反射能力を兼ね備えているという。ギルドナイツ達は少ない情報からもその卓越したセンスと実力で是を一度討伐寸前まで追い込んだが………」
アーチャー「どうしたのです?」
レッド「その直後にフォルサーミアとザンデスを残して全滅したそうだ。良く大型モンスターには瀕死状態での切り札となる業を持つ物が居るが……
今回の巨大クシャルダオラの其れをまるで強大な爆発のようだったと聞く。」
ノーヴァ「聞けば聞くほど化物ですね」
レッド「………それでもやらねばならんさ。幸い,クシャルダオラはギルドナイツ達の屍を見下し逃げてからまだ数日。ギルドナイツ達のつけた甚大なダメージは半分も回復してはいないだろう。」
アーチャー「逆を言えばまだ半分近く有りますがね」
ワルキューレ「気弱な事言ってんなよ,やるっきゃねぇだろう?」
アーチャー「えぇ…所でレッド,ヴォルトは?」
レッド「あぁ………残れ。馬車じゃないよ……休憩場所にな」
ヴォルト「………マジかよ!?冗談きついぜ俺も!!」ギロリ
ゾクゥ…ヴォルト「………」
アーチャーの質問にレッドは厳かに冷たく言った。レッドは優しく仲間思いな人間に一見見えるが本当は仲間を何時でも切り離す事の出来る冷徹さと任務への完遂を何よりも優先する意思が有る。
それの邪魔となるであろう物は何が有ろうとも即断で切り離す。その判断力が有るのだ。その判断に実はヴォルトは喜んでいた。其れを悟られまいと業と反抗して見せるがヴォルト自身今回の相手を荷が重いと戦う前から感じていたのだ。それに自分に経験させるために町長に何時間も詰めよってくれたレッド自身の言葉だ。従わざるを得ない。
ヴォルトは俯きながら心の中では笑っていた。恐らくはどこかで自分が戦わずともこの四人なら倒せると思っていたのだ。寧ろ自分が足手纏いになると……
___然しこの先奇跡が起きる…
End
Monster Hunter ep2 古龍達の慟哭へ第十話「大地を揺るがす竜 Part3」
ハンター達のメッカと呼ばれるこの大陸最大の町の最大の狩猟所,巨大狩猟所アルカラスタ大地を鳴らし見慣れぬ青紫の鱗の鳥竜が走り抜ける。まるで何かから逃げるかの様だったと其れを黙認したハンターは言っていた。そのハンターによればそれらが走り抜ける前のエリアでも見慣れぬモンスターに遭遇したらしい。走り抜けていった小型の鳥竜達とは比べも物にならない威容の怪物だった。
異様に発達した顎と強靭そうな足腰の熱を吸収しそうなタイプの赤茶色の鱗を纏っていたらしい。どうやらそれは大空の王リオレウスと戦い陸上を主戦場とする其れはリオレウスの空中殺法に一方的に攻撃を受け息絶えたという形のようだ。決して脆弱な体ではない。愛称の差で大空の王は勝っただけだろう。
後にそのハンターは街中を聞き込み其れが陸続きに有る東の大陸に生息するモンスター:ウラガンギンとバギィである事を知る。ギルス達がアルカラスタに狩りに出た日の事だ。
男はギルス達が狩りに向かった日に街に付いた。男はそれなりに実力と知識の有るハンターであれらを危険と考え直ぐにギルドへの調査と聞き込みを開始した。そして彼等の正体は直ぐに分る………
そう,東の大陸のモンスター達は既にギルドの知る所だったのだ。然し,東の大陸のモンスター達が此方に侵蝕してきたなどと言う情報はギルス達は知る由も無かった。
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ガタンゴトンガタンゴトンと畦道をアトノプスの馬車は進む。そんな何時も感じている筈の振動がギルスの体には妙に強く響き渡った。それ程緊張しているのだ。
フルフルの時も自分は結局は1人では討伐は出来なかった。そのフルフルクラス,それ以上が4体今回の狩猟対象にいるのだ。体が震えないわけが無い。ギルスはガタガタと落ち着き無く貧乏ゆすりした。
実は先刻の夜も魘されていたのだ。寝言で「死にたくない」等と言っていたのはライトに聞かれていたらしい。夢の中で彼は父に会った。その夢の父は「恐いのなら死ね」と言った。
自分の中の父は冷徹で強くて一流のハンターだったから………
ガタガタガタガタ…ライト「情けないですね?全く…こんなで狩場にいって使えるんでしょうか?」
ギルス「分らない……でも,俺が駄目そうな時は見捨ててくれ」
ギルスは自らを支えてくれた人達の姿も忘れながらそう言った。自らとイギラ村で交わした約束も何も忘れて足手纏いになる位ならどうせ大型モンスターの強力な一撃で一思いに死にたいと。
死樹「何を言っておるのだギルス殿!?見捨てられる訳がなかろう!!」
スッ…レオナ「ていうか呆れるわね。あんた,イギラ村って村に強いハンターを送ってくれって約束してるんでしょ?死んで約束破るとか最低よ?」
ギルス「何がだ!!俺はこんな任務聞いて無いぞ!!そんな事言うなら何でこんな酷い任務を!?
俺の装備を見ろよ!!どう考えたってこんな馬鹿げた任務で活躍できる訳ないだろ!!」
レオナ「…………装備の強さで全てが決まるのか?確かに生き残る確率や狩りを成功させる確率を高くするには装備を強化するのが一番よ!でも,それだけじゃないでしょう!!」
ギルス「………戯言だ!あんた等はそんな凄い装備をしてるからなぁ!言えるんだよ!!」
ギルスはモンスター達の姿を思い浮かべながらそしてモンスター達に一息で潰される自らを思い浮かべながら言った。何の事情も知らずライトの口車に乗った自分の浅はかさも彼等の優しさも無視して……
彼等の装備する武器は確かに今のギルスでは天地がひっくり返っても手にすることが出来なそうなものだった。ギルスは彼等がその武具に救われているのだと思い込んで言った。
本当はそんな筈は無いのだ。最初からエリートとして強い装備を貰う等と言う事を彼等はしていない。皆,自らが苦労して狩猟場を駆け巡り手に入れた材料で手に入れた武器と防具なのだ。
ライト「酷い事言いますね?まるで僕等の防具と武器は貰い物だと言っているようだ。」
ギルス「違ってもよ……普通,普通1番弱い奴に合わせた任務にするだろう!?」ズン
死樹「小僧が常識を語って気で居るなよ?人外の者達の宮に居るのなら最初から其れ相応の任務に繰り出される事も有ると心得よ!良いか…拙者達は特別な任務を請け負う階級の者達じゃ…」
恐い顔に反し何時も冷静で易しい対応をしてくれる死樹が怒った事にライト達が驚く。それ程に死樹が怒る等と言う事は珍しいのだ。ギルスの言う事は最もだ。だが,常識通りに行くのが世ではない。
特に人外の者達のように高難度任務ばかりを請け負う集団はハンター初心者級でも多くが上級任務に借り出される。ハンター初心者等と言うのは中核ではない弟子のメンバーのみだがそれで命を落す弟子は今まで殆ど居なかったらしい。それだけ皆が仲間として護ってくれたからだろう。
だが,それでもギルスは恐い。目の前の死樹やレオナを認めていない訳ではないが…
レオナ「………安心なさい,無茶な任務なのは分ってるからあんたに出来ることをやれば良い」
ギルス「出来ることなんて……………」
レオナ「有るわよ…探せば絶対ね」
そのレオナのギルスに対する期待にも似た言葉を聞いた瞬間,状況は急転する。アトノプスの馬車の小さな窓をふと見やるとケルビやアトノプス達が逃げ惑っていたのだ。
戦闘力の乏しい草食獣達が逃げるのは大型モンスターが現れる前兆だ。直ぐに其れを確認した死樹達は武器を構える。そして,馬車の運転手にアトノプスを止める様促す。
死樹「どうやら,急襲らしいの。何時も何時もキャンプまで馬車で行ける訳もあるまい?」ダン
男「あのケルビ達が逃げてるんですが何か!?」
ライト「大型モンスターが近くに居るみたいですね!僕達は此処で降り大型モンスターの足止めを貴方の為にしますのですぐさま逃げてください!」
そのライトの言葉に「あわわ」と怯えながら男を馬車を急停止させ彼等が降りるのを待った。死樹,ライト・レオナ,最後にギルスが降りる。其れを確認して男はアトノプスに逃げるよう促す。
レオナ「ちょっとあんた!アトノプスに乗って逃げる気!?走った方が速いでしょう!!」
男「でも,こいつは俺の相棒で…」
ギルス「うわあぁぁぁぁぁぁぁ」
何を血迷ったのかギルスはアトノプスにハンターかリンガで切掛かる。ギルスが切掛かった理由それはアトノプスが死ねばこの男が走って逃げ出してくれるかも知れないと言う勝手な思い込みだった。
ギィン…ライト「何馬鹿なことしてるんですか!?アトノプスを斬ってその人に返り血でも注がれたら其れこそその人が歩く事も出来なくなってしまいますよ恐怖で…」
ギルス「ちっ!じゃぁ,どうすれば……」
死樹「揉めている間に来たな」ズンズン…
地平線の向う,霧掛かった山の間に大きな影が現れた。赤い鱗に覆われた翼膜と足の両方の能力を持っていそうな足と巨大な牙をぎらつかせながら轟竜ティガレックスが姿を現す。
ティガレックス「ぎゃおぁぉおぉぉぉぉぁぉぉぉぉぁあぁぁぁぁぉぉおおぉあぁ!!!」
死樹「し方がないのう…馬乗りよ,此処から一歩も動くでないぞ…拙者達が貴君等には触れさせもせず奴,ティガレックスを退治してみせる!」
死樹は手持ちの太刀鬼哭斬破刀・真打を構えティガレックスと正対しながら皆に言う。ギルスは冗談がきついと言う風に訝しがった。その隣では安堵仕切った男が居た。
一般人たちにとって彼等の強い言葉はそれだけの力がある。詰りそれだけの評価を受けているのだとギルスは改めて知る。そして,自分の場違いさも。
そんなギルスの隣でレオナは何故かナイフに手をつけていた。
ギルス「えっ!ナイフなんて…」
レオナ「黙ってみてなさい!」ビュビュビュビュビュン!!
ドスドスドス…ティガレックス「ぐぅ?」ズンズン
レオナの構えた総勢八本の投げナイフが全て巨大な獲物であるティガレックスに命中する。毒ナイフと麻痺ナイフと眠りナイフ夫々だ。然し,ティガレックスには殆ど聞いていない。
八本ものナイフを瞬時に投げ全て甲殻の間に当てる手際は凄まじいが効果が無いのでは意味が無いではないかとギルスは歯噛みしながら思う。その思いを読み切ったようにライトは言う。
ライト「凄いでしょう?レオナさんのナイフの技術…多分,世界中探したってあれだけの投擲技術を持ったハンターは指の数程度だろうねぇ……どうだいギルス君?」
ギルス「素直にすげぇけど……効いてねぞ!」
ギルスが驚いている間に既に死樹はその場には居なかった。ティガレックスの死角に入り突進の動きを止めた滑らかに鬼人斬りを決める。ティガレックスが死樹の存在に気付き死樹を向く。
然し,其れを読んでいた死樹は再び死角に入りまた鬼人斬りを決める。ティガレックスは溜らず仰け反り怒り出す。其処にレオナが構えたゲイルホーンの雨が降り注ぐ。一度に三つも装填している。
其れも尋常では無い速度で先に投げたナイフに当てるように居ている。すべてがナイフに当たる訳ではないが殆どがナイフに辺り少しずつナイフをティガレックスの肉の中にめり込ませる。
ギルス「すげぇ……何であの速さで居てあんな小さい的にあてれるんだよ!?」
ライト「それが彼女の嘆きの雨たる所以さ……人外の者達とは良く言った物だよね?」
ギルス「化物共め!!」
ギルスは恐怖からくる畏敬の念からそう呟いた。
ティガレックス「ぐぎゃあぁぁぁぁ!?」
レオナ「そらっ♪ナイフの痛みを感じ始め更には麻痺が効いてきたみたいだ♪
ティガレックスは分厚い皮膚を破り体内にまで侵入したナイフの痛みに耐えかね更に際限なく通常の数倍の量送り込まれるナイフの麻痺毒により体が動かなくなる。
其れを見逃すことなく死樹は鬼人斬りを出来る限り繰り返す。ティガレックスは心の底から嫌そうな顔で死樹を睨みつける。然し,ティガレックスの麻痺も時間により解ける。
ティガレックスは怒りに任せて尻尾を振り回す。それを死樹は体を回転させて地面すれすれを行きかわす。尻尾と死樹の体との距離は数センチ程度だった。無論死樹はそれを予想していただろう。
ティガレックス「があぁぁ!」ガクン
ガツン…死樹「今度は眠りナイフが貫通したか……悪いな,止めだ」ドッドッドッドッド
死樹の二の腕の筋肉が爆ぜる。全ての体の緩急運動を限界まで生かし太刀により発揮できうる最大の威力の斬撃を死樹はティガレックスに放った。この斬撃の名を「死滅斬」と死樹は付けた。
誰にでも出来るわけではない。一流の死樹だから出来る攻撃をティガレックスの頭まともに受ける。頭の頭蓋が砕け散る音がギルス達の所まで届いた。戦いは終った。
眠っていたティガレックスは痙攣する事もなくその場でピクリとも動かなくなった。ティガレックスが動けなくなった事を確認したアトノプス乗りの男はアトノプスに乗って去っていった。
ザッザッザッ…死樹「ふむ,中々良い素材が取れたわい♪」
ライト「尻尾切断出来なかったのは残念ですね…」
死樹「あぁ,尻尾の切断は頭に入れてなかったからな…そもそも今回はその余裕も無かろう?」
ライト「ですね…アトノプス乗りのお方が見てましたからさっさと討伐するべきでしたもの」
男「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ドドドドドド
ニコヤカにライトは不器用な死樹のフォローをする。瞬間,アトノプスとアトノプス乗りの男の悲鳴が彼等の後ろから響き渡る。そして,砂埃を発しながら大地を踏みしだく見慣れぬ鳥竜があわられた。
死樹「………バギィだと?我が故郷東洋の者達が何故此処に!!?」
唯,その鳥竜達の存在を痛い程知っている死樹は瞠目して言った。
End
Mosuter hunter Ep2 古龍達の慟哭へ 第十一話「異邦の影達 Part1」
死樹の口によりバギィと呼ばれた深い青の鱗の鳥竜達は誰かから逃げるかのように必死にギルス達の横を勢い良く走り去っていった。死樹は思案した。自らの故郷で一体何が有ったのかと。
通常バギィ達は肉食竜達の間では最も下位に属し大きな危険が迫ると真っ先に逃げる存在ではあるが陸続きになっているとは言え異国である此処まで逃げてくるのは異常な事だ。
死樹「何が起こっておるのだ?」
レオナ「死樹さん?」
死樹「何でもない…然し,護ったつもりの存在がこうやって無残な死を遂げるのは気分が悪いな」
ギルス「………俺も逃げてたらこうなっていたのか…」
ライト「こうなると独りで逃げ帰るより僕達と居た方が遥かに安全ですね?」
ライトはにこやかに笑いながら言った。ギルスは初めて人の死骸を見る。始めて見た人の死骸は今日此処にアトノプスを引いて自ら達を運んでくれた人だった。
骨が飛び出し脳髄や腸が飛び出しバギィ達に踏みしだかれたのかもう,見る影は無かった。
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その頃,自らのハンターとして在籍していた復興途中の村イギラ村にも異国の影が忍び寄っていた。
其れに一番最初に遭遇するのは運が良く昔人外の者達に在籍していた猛者深い堀の緑の瞳の男ベンサムだった。彼は年老いた体を押してマドラカムから入ったクエストに向かっていた所だった。
場所は彼が歩き回り発見し自らの名前を其のまま付けた場所だ。ベンサム山……ゴツゴツと出た岩肌が特徴的な樹木のほとんど無い山だ。其処に彼は黒狼竜イヤンカルルガを狩りに来ていたのだ。
ベンサム「……久々の狩りだな!相手は少し不足しているが血が騒ぐわい!さて奴の姿はこの辺で目撃されているらしいな……此処で待つか…?」ドクン
そう言いながらイヤンカルルガが居ないことを見回し確認したベンサムは飛竜刀(椿)を背にして座り込もうとした瞬間,ベンサムの瞳に見慣れぬ物が飛び込んできたのだ。
それは,美しい毛並みで鳥竜種である事は見て取れた。喉に喉仏の様な物を付けた見慣れぬ鳥竜にベンサムは聞き覚えがあった。彼は異邦の侍死樹龍三郎の師匠でもある。
ベンサム「こやつは,彩竜クルペッコ!?なぜ,この様な場所に…死んでおる!死因は喉もとのこれか」
ベンサムは歩き回りながらクルペッコの状況を汲まなく調べた。結果,クルペッコは自ら以上の強敵に会い戦闘の末絶命したのだと分かった。恐らくはイヤンカルルガだろう。
ベンサム「………我輩じゃなくて良かったな…もしこやつとカルルガの戦いに一般人が」バサバサ
ベンサムの真上から羽ばたく音が聞こえた。それがイヤンカルルガだとベンサムは直ぐに影のシルエットで気付いた。クルペッコとの戦闘の末だけ有り傷だらけであった。
イヤンカルルガ「グルルルルルル!」ズゥン
スッ…ベンサム「その傷だらけの姿で我輩に向かってくるとは見上げた根性だな!気に入ったぞ!!」
ベンサムは息が上がりながらも自らを睨む彼を見て敬意の念を込め太刀を振るった。
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レオナ「ふぅ,所でさぁ……馬車の中での話,続きしようか?」
ギルス「何もこんな所で!!」
レオナ「あら,良いじゃない。モンスターの気配もないし…あたし達ハンターなんて何時死ぬか分からない生き物なんだから確執ってのは直ぐに解いて置いた方が良いのよ」
ギルス「それはそうだけど…」
レオナ「先ず言わせて貰うわ?ギルス君の言ってる事は間違ってないと思うわよ?防具の質により任務の成功率や生存確率は間違いなく上がるものね。そもそも相手の動きの分からない内は防具がしっかりしてないととても立ち回れない物よ……モンスターの隙も分からず唯立ち尽くしてるしか出来ないしね?」
レオナは滔々と述べた。防具や武器の重要度を……防具の良し悪しがハンターの心に何を生むかを。
ギルス「そうだろう!俺は間違ってない!!」
レオナ「確かにね?でも,正論ばかりが通るとは限らないのが現実よ?私達人外の者達は最強の称号を傘に来て豪遊している訳じゃないのよ?今年こそそれ程緊急任務も無かったけど…
本当ならいつも緊急の並みのハンターじゃ任せられないような任務ばかり飛び込んでくるの。その中で,弟子を育てるにはどうしたって師匠のクエストが優先されるのよ。
だって,緊急のクエストを弟子が居るからって蹴ったりしたらそれだけで人外の者達の称号は傷つくの?弟子の弱さに情報していちゃ人外の者達の栄光も長続きはしないと思っちゃうでしょう。
人々は大型モンスターによる不満であふれてる。特に此処古龍大陸の様な大型モンスターの聖地じゃね……だから,私達の弟子になった者たちは否が応でも自らの実力相応以上の任務に借り出される覚悟を持たなければならないわ!!はっきり言って皆…それを理解したうえでふざけたクエストに率先して立ち向かって行くのが普通なんだから…」
ギルス「………何だよ…俺は常識知らずだってか!!?でもよぉ,何で実力の低い奴なんて」
レオナ「それは最強の座を持つ者は来る者を拒まずそして其れを相手が納得するまで育て上げるが義務が有ると創設時に決められたからよ……」
ギルス「俺は…レッド隊長に……レッドさんに言われたから」
レオナ「あんたが………入りたいって目が言ってたから彼は放って置けなかったのよ。あんたがレッドの師匠のイヴァリスさんの息子だからってのも有るでしょうけどね?」
ギルスはレオナの言葉を一通り聞いた後押し黙った。父の名前が突然に出てきて逡巡したのも有り先ほどまでの内容を整理しようと頭を回した。レオナの言っている事も確かに理解できた。
彼等は最強の看板を背負い街のそれどころかこの大陸全体から全幅の信頼を受けているのだ。なればこそ容易くクエストを断るなど当然出来ないしましてや弟子が未熟だ等と言う私的な理由で断る事は出来ないだろう。何せ,彼等以外に達成できる者が居なくてそれで居て街の危機に関わってくるようなクエストばかりなのだろうから。
クエストの数が12人の正規メンバーの枠内で納まっていれば別の話だが任務の数が多い時はそうは行かないだろうし弟子が危険を考えて弟子達をだけをディナーズに置いていって其の時緊急クエストが来れば断る事敵わぬ弟子がクエストを受けなくてはならなくなる可能性も出てくる。正直な話,運び込まれる緊急クエストの量の多さから考えれば弟子も分不相応の危険な任務に出ざるを得ない覚悟をするのは当然だ。
何せ,何時も何時も師匠が緊急クエストで姿を消していては師弟関係の意味が無い。
<人外の者達は唯のハンター稼業ではなくて最強を掲げる組織なのだと今になって気付く……>
然し,ギルスには更に幾つかの疑問が湧いた。そんな危険な任務ばかりする組織なら何故,最初から弟子等取るのか?成熟した屈強な名の有るハンターを雇えば良いのではないか…更に防具や武器が弱くて嘆いているのなら自ら達の持つ強力な武器を渡せば良いではないかと言う事だ。
ギルスは一時父の事を忘れて素直に質問を口に出した。
ギルス「人外の者達の任務は危険だ。なら,何で最初から名の有るハンターを雇わないんだ?」
ライト「其れに関しては僕が言わせてもらいます。大体の名の有るハンターは最強の座の厳しさと言う物を理解していますから敬遠したがるんですよ…要するに殆どの名の有る人達はその位置の名声で満足して最強と言う言葉に見向きもしない訳ですね……
まぁ,そんな人達の中にも人外の正式メンバークラスは殆ど居ませんけどね?大体の大人は一見耽美なる最強と言う言葉の裏に潜む厳しさを理解して其れから逃げようとしてう居る…
なら,スカウトする対象は自ずと血気とその言葉を羨望する若者達に絞られてくる訳ですよ。勿論,才覚も必要ですけどね?後は親を早くに亡くした孤児達に人外の者達としての使命を教え込み修行して鍛えて行くと言うのもオーソドックスな遣り方です。孤児達は殆どがモンスターにより家族を失った者達でモンスターへの憎しみが強くて強いハンターになる事を望む者が多いですからね!」
ギルス「モンスターに恨みを持った孤児や最強になる事を望んだ若者が人外の者達の元って事か」
ライト「それだけではないですけどね?ギルドナイツの裏側を見て嫌悪感を感じて止めて辿り着いた者とか自分の強すぎる力に行き場をなくして此処に流れ着いた者なんてのも居ますから……結局強すぎる力は同じ場所に集まる物なのでしょうね…?」
ギルス「強い奴が強い奴の所に集まるってのは否定しないよ。でも,俺は弱い……」
レオナ「今はね?」
ギルスはライトの言葉を聞きながら歯噛みした。自分は唯,才能の有る男の血を受け継いでいるだけだ。才能の有る男の血を持っているからと言って才能が開花してくるとも限らない。
父は確かにこの大陸中に名を轟かせた最高の双剣使いだった。でも自分は双剣を振り回す事すら今だ敵わない凡人に見えている。そんな男が孤児として受け容れられモンスターを怨みながら上進してきた者達や最強の座に付こうと血気を燃やしてきた天才達……力が有りすぎて行き場を失ったハンター達などに太刀打ち出来るのかと……震えが止まらなかった。
<今は………俺に何を期待してるんだ?>
少しも成長の兆候の無い自分を恥じてギルスは俯き加減に思った。然し,それを口に出していたらレオナ辺りに呆れられるのだろう。ギルスはまだまだ若いのだ。ハンターの才気が開花するのは通常20歳半ばからと言う。ギルスは遠すぎる父の残影に焦りを感じていた。
ライト「まだ,質問ありそうですね?」ピクッ!
ギルス「そうだ!あんた等は凄い防具も武器も沢山持ってるんだろう!?だったら,あからさまに弱い装備している奴には良い装備を渡すとかしたらどうだって!」
死樹はその言葉を聞いて厳かに頷いた。ギルスの言う事は間違いでは無いのだと思ったのだろう。今度は死樹が其れについて答を述べた。
死樹「確かに優れた武器や防具は有る。然し,おぬしの実力にはクックシリーズで十分じゃ」
ギルス「どういう…」
死樹「ハンターとはどうしても分相応以上の力を与えられると舞い上がる物じゃ。貴君にそれ以上の装備を与えたら恐らくティガレックスに突っ込んでいたやも知れん。」
ギルス「しねぇよんな事!!」
死樹「本当にそう言い切れるか?力の魔力とは恐ろしい物じゃぞ。自分の力ではなく簡単に手に入れた今まで以上の強力な力を直ぐに試したいと思い敵う筈の無い者達に挑み散る………
幾ら拙者達が護ろうとしてもそれでは間に合わぬではないか?如何なる装備で身を固めようと所詮は人間。飛竜や古龍達から見れば紙切れ同然じゃ!思い一撃を喰らえば死ぬ!!」
ギルス「………じゃぁ,其れをしないのは弟子の暴走を防ぐためとでも」
死樹は厳かに頷いた。人外の者達の意外な形をギルスは見た様な気がした。ギルスが沈黙しているのを見て取り死樹はギルスに問い掛けた。
死樹「所でギルス殿…貴君,馬車の中で見捨ててくれ等と言っていたな?何故,その様な事を」
ギルス「夢の中で親父に言われたんです……怯えるような奴にハンターの価値は無いって…」
ピキッ…死樹「そこでイヴァリス殿の名を出すか!!全くお主は父の事を其処まで理解していなかったと言うか…拙者の知るイヴァリス殿は決して仲間を見捨てぬ弱者を放っておけぬお方じゃった。
先も言ったな……護れなくなると!拙者達は弟子達を分不相応の任務に連れて行かねばならない事が有る代わりに全力で弟子を護る義務が有る!人外の者達に入ったからには其れは家族も同然じゃ!!
其れに………未来を担う逸材になって貰いたいのじゃ…」
レオナ「………煙草,ライト君取ってくれる?」ズキッ
ライト「あの技は脳に負担大きいですからね」スッ
レオナの技は相手の骨格大きさ癖を的確に読み取り次の動きを予測して打ち込むと言う物で常に頭脳を回転させなければならない業だ。故に技を使った後に強力な頭痛が襲う。
レオナは其れを抑える為に煙草で一服する癖が有る。
そんなレオナ達を横目にギルスは死樹の言葉を聞いて歯噛みした。自らの描く冷徹で優秀な父が本当は仲間思いで情に厚い男で有る事を目の前の男が言うのだ。何と父の事を知らなかったのだろうと恥じる。
強いハンターになると誓った時から夢の中で早く強いハンターになれと急かす様に言ってきた彼の残影は脆くも崩れた気がした。それは碌に知りもしない自分の中の父の影なのだから……
ギルス「………何であんたが俺の親父を知っている様な事を」
レオナ「そりゃぁ,知ってるわよ,あんたより全然……なんたってあの人は人外の者達のリーダーだったからね?今はイヴァリスさんの弟子のレッドがリーダーをやってるけどね?」
ギルス「何だ………それ!知らなかったぞ!!」
死樹「やれやれ……イヴァリス殿は息子にそんな事も伝えておらんかったのか…あの人らしい」
自らの知らない父を知る面々を見てギルスは突然ヒシヒシと父に付いて知りたいと言う気持ちが湧いてきたのが分った。今まで,父を知る事は諦めてきた。家族は無論,身近な親戚も居なくて誰から聞けば良いのかと言う状態だったのだ。
其れを深く知る者達が目の前に居る。それらを纏めていた存在が父だったと知る。父の事を知りたいと同時に急に人外の者達の正式メンバーに本気でなりたいと思えてきた。
ギルス「俺……親父の事全然知らなかったんだな?知りてぇよ……もっと」
ライト「だったら……死樹さんやレオナさんよりイヴァリスさんの弟子だったと言うワルキューレさんやレッドさんに聞いてみてはどうでしょうか?無論,この場を生き残らないといけませんが!」
ギルス「……畜生!やってやるぜ!!」
レオナ「まぁ,ギルス君はあたし達の後ろに居るだけで良いけどね?」
ギルス「はっ!?」
レオナ「狩場で強力な相手の威圧感を感じながらじっとしてるって結構大変な事よ?それに武器を奮わなくたって罠を使わなくたって相手の技を盗み敵の攻撃パターンを見る事位は出来るわ……
其れを見て自分の中で研磨していくのが私達人外の者達の弟子の最初の仕事!」
ギルスは漸くレオナの言葉の意味を知った気がする。馬車の中でレオナはギルスの活躍にも期待していると言っていた。だが,それは本当はギルスが自ら達の戦いを見て新たなる戦術を開花させる切欠を見つけることを期待していると言っていたのだ。自らを護ってくれるとも言う。
ギルス「護られるだけ……か」
死樹「仕方が有るまい!少しずつ少しずつ経験を重ねて強くなるしか結局はないのじゃ。
最初の仕事がそう長く続く訳もなし!何時までも見てるだけが続く訳も無しと心得て置け!」
ギルス「はい!」
死樹の言葉にギルスは頷いた。本当は途轍もなく恐かった。心の奥底でどうせ弱い自分ならメンバー達が護ってくれると思って入ったから……こんな自分を護る余裕もなくなりそうな任務で……
それでも彼等は護ってくれると言った。少しずつ成長していく姿を見てくれると言った。然し,ギルスはイギラ村との約束も忘れていない。死樹の言葉に大きく返事をした後ギルスは言った。
ギルス「俺決めましたよ…俺は絶対イギラ村にあんた等人外の者達を定住させるって!」
死樹・ライト・レオナ「……………」
その言葉に皆が沈黙した。数秒の沈黙,その後笑い声が聞こえた。
レオナ「あはははは♪レッドに言ってみなよ?何時でもOKだって言ってくれるよ?」
笑いながらレオナは言った。レオナはレッドが今のディナーズオルディアに其れ程興味が無くて何時でも陣営を移動する気が有る事は知っているのだ。こうやってレッドの師であるイヴァリスの息子であるギルスに言われれば容易く心を動かしディナーズオルディアを後にするだろう。
人外の者達が定住すると言う事で建てられた施設は今までにも幾つか合った。ディナーズオルディアも何れは棄てられ彼等はまた新しい場所で人外の者達の仕事をするだろうと最初からディナーズオルディアを建てた町長も知っている。だから,本当は何時でも人外の者達ディナーズを去ることが出来た。
ギルスは余りにも簡単な応えに少し拍子抜けした。だが,それは仲間が皆揃った時だから暫くは掛かるだろうとライトが添えた。
然し,レッドの其れを言うだけで順風満帆とはとギルスは思わずには居られなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
彼等が話をしていた頃,北の森林地帯でバギィ達が何者かと戦っていた。羽毛の様な物に体を覆った鳥竜種…鋭い嘴と爪が特徴の催眠ガスを持つ眠鳥ヒプノックだった。
青い鱗に黒の縞模様の入ったバギィ達の中に際立って大きな体とトサカを持つ個体が4体居た。その内2体既に絶命しているが…この4体が約50のバギィを率いてこの地に来たのは間違いないだろう。
バギィ「ギィギィ!」
ドスバギィ「ぎしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」グバァ
ガブゥ…ヒプノック「ぐがああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ブンブン
体中血塗れで怒り心頭のヒプノックの喉元に手加減無くドスバギィは噛み付いた。痛みに耐えかね首を振り回しヒプノックはドスバギィを近くに有った樹齢300年は下らなそうな樹木に叩き付けた。
樹木が倒れドスバギィは堕ちる。
ズゥン…バギィ「ギギィ……」
残りのバギィの数は8体程度ボスのドスバギィも一体と成った。傷だらけながらもヒプノックはまだ闘志を失わずバギィ達を睨んでいた。ヒプノックが食事をしている所に彼等は走りこんで来たのだ。
ヒプノック「きしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」グルン
バキィ…バギィ「ギガッ!」ガッ
ヒプノックの尻尾による薙ぎ払いにより三対のバギィが吹飛ぶ。吹飛びながらも当たり所が良く立ち直ったバギィに鋭い爪による蹴りをヒプノックは浴びせた。そして,ドスバギィに向けて鋭い嘴をむけ嘴を開く。口内から毒々しい色の何かが出てきてドスバギィを襲う。
サァ〜…ドスバギィ「!!?」ボグゥ!!
ヒプノック「ガッ……ガギャアァァァ」ドサッ
ナルガクルガ「ぐおおぉぉぉぉぉぉ〜〜!!!」ビクンビクン
その瞬間だった。ドスバギィは交わしきれずヒプノックのブレスが当たる事を覚悟した。受戒の縫い間から突然黒い顔と牙が姿を現しヒプノックの首を噛み砕いた。ドスバギィの顎の数倍は頑強そうな顎により発された噛み付きはヒプノックの羽毛を抉りヒプノックを絶命に至らした。
ナルガクルガは勝誇ったかのように唸りを上げる。その足元でヒプノックの死体が痙攣している。
かくして,ギルス達の標的の一匹であるヒプノックは皮肉にもギルス達のもう一つの標的のナルガクルガにより絶命させられたのだ。ギルス達にとっては運の良い話だ。
更に,ナルガクルガも気の立っていたバギィ達の攻撃によりほんの多少だが損傷を受けた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その頃ギルス達はリオレウスとウラガンギンの戦ったエリアの近くを通っていた。リオレウスは餌を取る時は同じ場所を行ったり来たりするのが定石で子供の為に餌が必要な時は休み無しで動く。
当然,ウラガンギンにより付けられた傷も気にせず餌を獲る事に専念していた。そんな折,餌場にギルス達の姿が見える。リオレウスは手頃な餌と思いギルスたちに降下する。
バサバサッ…ライト「リオレウスだ………ボロボロですね?」
ギルス「運が良いな!」ズゥン
ギロリ…リオレウス「ぐるるるるる…」ゾクゥ
リオレウスに一瞬睨まれギルスは恐怖で体が焼かれるような感覚に襲われた。それは人間の持つ根源的な恐怖で克服しようの無い物だろう。人外の正式メンバーである死樹達さえそうだった。
リオレウス「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉお!!!!」ドン!
死樹「来るぞ!」
End
Mosuter hunter Ep2 古龍達の慟哭へ 第十二話「炎妃龍出現 Part1」
悠然とされどどの様な攻撃がきてもかわせる様警戒しながらリオレウスはギルス達に向かって行った。その速度は遅く見えたが近付くにつれ速く…本体が相当大きいのだと理解させられた。
その大きなリオレウスは体中至る所に何かで殴打されたような凹んだ傷があった。そう,まるでハンマーの強烈な一撃で拉げた鋼板の様な感じだ。相当のダメージなのだろう。然し,向かってくる。
ライト「レオナさん?大丈夫ですか……」
レオナ「無理ね…後,10分は休まないといけないわ……全く何時まで経っても慣れないわ!」
ライト「当然でしょう?人の1日に考えれる事の数倍を一瞬の内に考えるんですから…
普通じゃないですよ?」
ギルス「おい!レオナさん駄目なのか!?死樹さんだけで…」スチャッ…
ライト「そうですね…レオナさんの先程の技は相手の大きさ癖,筋肉の動きを即座に分析しながら何処にいるか計測して其処に高速で射出すると言う離れ業です。人間の一瞬で考えられる限界を脳で処理していくと言う事で正直相当脳に負担のかかる力なんです。だから,力を使ったら有る程度インターバルを置かなくてはならないんですよ…あぁ,彼女の煙草は精神安定として自発的に吸い始めたらしいですね?
最後に……君,僕を忘れてませんか…じゃぁ,次は僕が僕の戦い方を見せてあげますよ」ズゥン
リオレウス「ギュルルルルル…」ザリッ
咄嗟に苦しそうにしながら煙草を吸っているレオナにライトは問うた。レオナは其れに苦しそうな顔で息を切らせながら二本目の煙草を口に加え即答で無理と応えた。
ライトは矢張りと笑う。ギルスはすかさず何を笑っているのだと幾ら相手は手負いとは言え空の王者リオレウスだぞとでも言いたげに反論する。其れを聞いてライトはレオナがサボっているのではと勘違いしているであろうギルスにレオナの技がどれ程脳に負担をかけさせるかと言う事を説明しそして……
___自らが戦うと言った
そう,ライトが宣言した瞬間にリオレウスの羽により発せられる強力な風と着地による地響きが響き渡った。そして,彼リオレウスはギルス達を睨み警戒の声を上げた。
ギルス「………見せて貰おうじゃねぇか…その自身!」
ニタァ…ライト「少なくとも貴方の師匠よりは凄いと思いますよ?」ダン
ギルス「ほざけ!なら何で人外の正式メンバーに居ないんだ!?」
レオナ「どうかしら…ライト君は本当に強いわよ?私より確かに…人外の正式メンバーに居ないのは多分,彼が人外のメンバーで一年生のヴォルトに気を使っているだけなんじゃないかしら…少しの間位高みで夢を見て居たいだろうと譲歩しているだけって事ね」
ギルス「そんな…」
ギルスはライトの力を余り高いと思っては居ない。武器も防具も其れなりだが他のメンバーと比べれば劣るし何より線の細い体つきから弱そうな印象を持っている。強い印象を受けるのは口だけだった。
実際,自分の師匠のヴォルトより強くなどどうしても見えなかった。然し,自らより遥かに長くライトに付き合っている筈のレオナが自らより強いだろうと言うのだ。唯,譲歩しているだけだと…
ギルスは自らの師匠がその程度だと聞いて無性に腹立たしかった。然し,少し考え出発する前にレオナの言っていた事を思い出す。彼女はライトよりヴォルトが格下だと一瞬思った自分をそれは違うと言ったのだ。
ならば今の言動はなんだろうとギルスは訝しがった。才能の事を言っているのだろうかと…思い当たりはする。
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ギルス達が狩場である巨大狩猟所アルカラスタに到着しリオレウスと対峙した頃,レッド率いる一団はまだ,馬車の中に居た。彼等が馬車に乗りダリスヴェンドを出たのはギルス達とほぼ同じ。
詰り,彼等の狩場の方がギルス達の狩場より遠くに位置していると言う事が分る。然し,相手は巨大古龍であり有る程度遠くで討伐して起きたいのが事実なのだろう。
実際,アプトノスの馬車で1日少しで着く場所だ。古龍が飛べば数時間で街に付く計算になる。有る程度遠くそれは詰り古龍と思う存分に戦える程度街まで距離が有ると言う程度の遠くと言う事なのだ。
ガタンゴトン…ヴォルト「ガブラス…」ギャーギャー
ふとヴォルトが馬車に儲けられた窓を見ると其処にはガブラスの大群が居た。強大な古龍の被害に有った死骸等を狙い群がる彼等は古龍討伐で良く相手にする。人々の間からは災いの象徴とされる。
実際,普通の古龍戦では彼等も人間に向かってきて厄介な相手となる。空中を旋回しながら毒液を吐くと言う厄介極まる彼等は今回はノーヴァの担当だ。最も,巨大クシャルダオラの所まで来ればだが。
ワルキューレ「大方道端に倒れたモンスターやら人間の死体を狙ってるんだろうぜぇ?ちいせぇ奴だ!」
アーチャー「然し,強者の後ろに付いていき自分の手を汚さず死肉を漁ると言うのは賢い事です」
ワルキューレ「けっ!大方唯の本能だろう!?」
アーチャー「………本能のままに動く貴方が言うべきですか?」
アーチャーとワルキューレは実力伯仲で性格が間逆と言う事の性で良く喧嘩をする。だが小さな諍いで口喧嘩を出来るのは本当は仲が良い証拠なのだろうとノーヴァは察する。
実際,ワルキューレはアーチャーの賢さを尊敬しているし年が近い事もあり似た会話で盛上る事も多い。何せ飲み友達でも有る位だ。対するアーチャーもワルキューレの度胸は尊敬しているらしいし実力伯仲ゆえ良く狩りに一緒に行くが彼の強い言葉に何度助けられたか分らないと語っている。
そんな中睦まじい2人を見ながらノーヴァは過去の恐怖に思いを馳せる。そして,窓を見て他のメンバーには表情を見せないヴォルトもまた,彼等に自らの凄惨な過去を重ねる。
ノーヴァ「彼等を見ていると何時も思い出します。白い毛に覆われた父と母の仇…爪氷狼:ギルガクルス…彼は私の父と母を引き裂き満足したのか私には目もくれず消えていった…」
ワルキューレ「其処にガブラスが来てお前も食われそうなった。其処で俺達がやっと来てなぁ」
ノーヴァは爪氷獣の爪により父と母を自らの目の前で引き裂かれた。ノーヴァの目の前には父たちの血と内臓が散乱していた。何故,見逃して貰えたのかは分らないが直ぐにあのガブラス達が来た。
自分も父達の元に逝けるのだ…また,天国で仲の良い家族を続けようと思った瞬間ガブラス達は地面に堕ちて血だまりの中で息絶えた。彼女の街が正体不明の怪物に襲われる可能性が有るから援助してくれと頼まれて其処に来たのがワルキューレとその師匠であるイヴァリスだったのだ。
あの日以来,ワルキューレはノーヴァに優しくして遂には師弟となる。十年の月日だ。
アーチャー「ヴォルトも思い出しますか…」
ヴォルト「えぇ,俺の親父とお袋はすげぇ強いハンターでした。その2人を容易く殺した古龍…忘れられるはずの無い残影…雷洸龍イグディアルス!親父とお袋は黒焦げで即死だった…でも妹は雷の直撃を受けず頭を撃って死んでいた。あんなに綺麗に死ぬのなら…誰とも分らないほどの砕けていれば!!」
ヴォルトは過去の記憶を思い出し嗚咽に歪んだ声で言った。彼の父とは母雷洸龍により炭と化して死んでいた。なぜ,彼等かわかったのかは装備のお陰だけである。
ヴォルトはあの日の強烈な映像を忘れられない。だから,復讐を誓った。責めて,妹が何の跡形もなくなっていれば何処かで生きていると言う夢も持てたのにと彼は何時も嘆いていた。
ワルキューレ「………俺ぁ,お前の仇とノーヴァの仇両方が死ぬ所を見るまで死ぬ気はねぇ…だから,こんな所でくたばる気はねぇ!!!てめぇらはどうだ!?」
アーチャー「当然です……まだまだ,手放せない馬鹿弟子も居ることですしね?」
レッド「私もその言葉には同意だよ…死ぬ必要は何処にも無い…全力で行くぞ!」
ワルキューレの言葉に親の仇で有る古龍2体を倒すまでは死ねないと当然のようにノーヴァとヴォルトは頷き他の2人も当然のように同意する。ヴォルトはノーヴァは人外の者達の優しさを改めて確認した。
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一方ギルス達の方はリオレウスと対峙していた。一度地面を叩く様に蹴るとリオレウスは痺れを切らしたように雄叫びを上げながら突進してきた。
既に遠くに避難していたギルス達は兎も角ライト達は体を回転させて必至で避けた。瞬間,ライトが立ち上がり体から気を発散しながら全体力を振り絞り相手を切刻む鬼人化を発動しリオレウスの足の部分を叩き付けるかのような力で切刻む。10回・20回・30回……まだ続く。
ギルスは唯驚いていた。自らの父は双剣使いで尋常ではない筋力で鬼人化状態で相手を50回切り込んだらしいが普通の人間は精々,十数回が限界だ。其れをライトは父に肉薄する数の剣戟を与えたのだ。
そんな彼の攻撃だけではなく違う方向からは死樹の気刃斬りが襲う。堪りかねた空の王は悲鳴の様な雄叫びを上げる。空が振動したかのように見えるほどだった。
リオレウス「ぐぎゃあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁああぁあ!!!」
ガガガガガガッ…ライト「もう少しで40回!最高記録!!」ガッ…
グラリ___思わずリオレウスは仰け反る。
レオナ「40回行った!?最高記憶じゃん…」
ギルス「化物かよ…あの細腕で今まで鬼人化30回以上奮い続けてたのか…モンスターも動くってのに………はは,有り得ねぇ」
人外のメンバー達の有り得ない技の数々に唯々ギルスは苦笑いするだけであった。揺らいだリオレウスは陸上では厳しいと見て空へと逃れるように飛びだった。そして,バサバサと羽音を立てながら相手を補足して口を開け空中から炎のブレスの嵐を見舞わせた。
ズドドドドドドド…死樹「翼膜を破っておくんだったかな?」
ライト「……是非,次降りてきたらそうして下さいよ♪おっと,サマーソルトがきますね」
ライトと死樹は軽口を叩きながらリオレウスの口の位置により炎の射出方向を見切り余裕でかわしていた。一瞬目を逸らしたライトをリオレウスは確認し回転して尻尾の裏側でライトを狙う。
リオレウスの尻尾の裏側には毒液が滴り落ちるようになっている小さな棘があり少しでも当たると体が毒に犯されてしまうのだ。だが,ライトは是を狙っていた。
尻尾による攻撃はリオレウスの視界も狭める。ライトは死樹に太刀の刃じゃない方を向けて構えていてくれとハンドシグナルを送りリオレウスの攻撃を掻い潜り死樹のほうに走る。
ブォン…リオレウス「グオォ!」___外れた事を知れ忌々しげな声をリオレウスは上げた。
ガッ…死樹「全く,拙者は運搬係ではないのだぞ?」
ギルス「うそぉ…太刀を足場兼ジャンプ台にして!!?」
ライトは用意された死樹の太刀に飛び乗り足に力を溜めてジャンプした。瞬間に死樹も上のほうへ力を入れライトのジャンプの高さを上げる手伝いをする。ライトの体重の軽さと死樹との連携の取れ具合…そして,脚力が有ってこそ出来る技だ。
タン…リオレウス「ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ドドドドドドド
死樹「一対一か…やってみるか?」
リオレウスは怒りでライトが居なくなった事に気付いていない。ライトが上に乗っている事など飛竜にとっては赤子の様な重み感じる訳も無い。更に,彼は傷だらけで感覚が麻痺しているのだった。
そんな,彼に万一気付かれない為に死樹は挑発した。リオレウスの視線は益々其方に向かった。
ガガガガガッ…ライト「悪いですね?勝利のためには何でもするのが人間ですよ鳥さん?」グラッ
リオレウス「ぎゅうぅ!!?」ズザァン
ギルス「……サーカスかよ!?」
ライトの鬼人化による急所の一つである首下への連続攻撃にリオレウスは耐えかね地面へと不時着する。其処には死樹がティガレックスの時に見せた死滅斬の構えで立っている。
腰,肘・膝の筋肉の連動を完璧に行い発される一撃は正に一撃必殺の如くだ。地面に堕ちて血を流しすぎて碌に動く事も出来ないリオレウスは見た。
<まるで仁王の如く男は立っていた>
ゴアァ…リオレウス「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ズガシャン
リオレウスの頭に死樹の刃は当たりめり込み頑健なリオレウスの頭蓋が割れる音が響いた。
ギルス「………是が本当の壁って奴なのか?」
ギルスは世界には是ほどの化物たちが居るのかと唯驚いて戦々恐々としていた。
END
Mosuter hunter Ep2 古龍達の慟哭へ 第十三話「炎妃龍出現 Part2」
ギルス「すげぇ…」
ギルスは唯々驚き口癖のように或いは呪詛のように何度も「すげぇ」と口にしていた。四十回の乱舞,正確無比な高速射撃……まるで自分の描いてきた境界とは別次元の物だった。
<正直,人間とは此処までなれるのかと思った>
ギルスは関心仕切りで皆の姿を見た。何時の日かこんな,罠や爆弾と言ったモンスターの使う事の出来ない力などを殆ど使わずとも大型モンスターたちと渡り合える戦士になりたいと硬く思った。
ビキビキッ…レオナ「大丈夫ぅ?ライト君?」
ライト「いえ,流石に四十連発は体に響くみたいですよ…ははっ,目標の英雄イヴァリスさんにはまだまだ遠いですね……あの人は50回の乱舞を容易く使いましたからね」
苦笑しながらライトは言った。体に負担のかかる無茶な乱舞の性で体中の取り分け腕の筋肉が言う事を聞かないらしい。強力な力は代償として何かを奪っていく。
嘗て,短い父との語らいの中で父,イヴァリスから聞いた言葉だ。その言葉の真偽が人外のメンバーの強力な力を使った後の暫くの間に戦闘不能状態に繋がるのかどうかは分らないが………
レオナ「あの人は特別なんだから目標にするだけ間違えだって言ってるでしょ?」
ライト「………目標にする位なら凄い人にするべきだと思いますね」
レオナ「………確かにそうだけど」
ライト「所で……」
レオナ「大丈夫よ?頭の痛みも晴れて来たわ」
ライトの言葉を遮る様にレオナは言った。実際,遮っている訳ではなく彼の質問の内容が直ぐに分ったから応えただけなのだが………どうやら,彼女の脳の痛みは数十分脳を使ったら数十分休まねばならないらしい事はギルスにも分った。幾ら,凄い力とは言え斑が有り過ぎるようにも感じた。
数時間が過ぎる。一行は卵の番をするリオレイアを最後に倒すことにして先ずは残る3体(ヒプノックが死んでいる事をギルス達の一行は知らない)のうちの一体,迅竜ナルガクルガを狙う事にした。其れが最も正しい選択だとギルスも思った。
ガサガサ…死樹「……バギィの死骸か」
___何か居る……
先程,遭遇した群れの一匹だろう。彼の言葉を聞いた瞬間,皆の中にそう言う緊張感が走った。
グゥグゥ___大きな寝息が茂みの奥から聞こえて来た。
ギルス達は警戒しながら静に茂みの隙間からその奥の姿を確認した。黒い羽毛の様な通常の鱗とは明らかに違う鱗を纏った蝙蝠みたいな顔の竜。其れは,間違いなくナルガクルガだった。傷だらけだ…
恐らくは周りに散らばるバギィ達や此処に来る少し前のエリアで見つけたヒプノックの死骸から彼等と戦闘をして傷をつけたのだろう。大きな損傷だ。深く寝ている。
少し位音を立てたくらいでは起きそうに無い。彼等は用意していたバラバラにされた大タルを組み立てニトロダケと火薬草を混ぜて作った爆薬を調合し大タル爆弾を生成した。
そして,それをナルガクルガの近くに置きレオナが其れを狙う。その間に死樹がナルガクルガの動きを予測して彼の通りそうなルートに落とし穴を仕掛けた。落とし穴は土壌を柔らかする事により大型モンスターを地面に沈下させて動けなくする罠だ。因みに地面を柔らかくすると言っても大型モンスター級の体重が掛からなければ減り込んだりはせずハンター達には効果は無い。
死樹「何時でも良いぞ…」かチャッ
シュッ…___大タル爆弾の導火線が斬られ導火線が勢い良く消えて行く。
そして,強力な轟音と共に爆発が起こる。炎と土砂が空を舞う。其れに強力な激痛を感じてナルガクルガは目を覚ます。起きた瞬間に怒り状態になり突然,尻尾を振り上げ死樹を狙った。
ギルス「危ない死樹さん!!」ギュオォォ
ナルガクルガ「ぎがあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ズウゥン…
死樹「危ないとは酷いのう…この程度,何度もかわしてきたわ!」ギリッ…
___死滅斬
ズバァと言う景気の良い音がしてナルガクルガの尻尾が宙を舞った。今回三回目の死滅斬だ。通常,1日の狩りで5回で筋肉痛で使えなくなるらしいが今回はヒプノックが戦わずしてやられていた為残りターゲットが少ない事を確認して気兼ねなく使ったようだ。ナルガクルガは激痛に悶絶する。
ナルガクルガ「ぐうがぁぁぁぁぁぁぁ…」ヨロヨロ…
死樹「気を付けられよ迅竜の名を冠する者よ?其方は落とし穴と言う名の行き止まりじゃ」
ズッ......ナルガクルガ「!!?」ズブズブ…
ナルガクルガ「ギャアァァァァァァギャアァァァァァァァァ!!!」ドドドドドッ…
ナルガクルガが落とし穴に嵌った瞬間一寸の狂い無く彼の急所に毒ナイフ及び各種ナイフが命中した。だが,矢張りそれではナルガクルガには効かない様だ。ナイフの痛みなど気にせずのた打ち回る。
死樹は最大の隙を見逃さず気刃斬りを発する。連続で発する。その間にレオナも矢の雨をナルガクルガに浴びせる。一瞬にしてナルガクルガは大人しくなった。最後はレオナの眠りナイフが決め手だった。
ギルス「やっぱりライトよりレオナさんの方がすげぇな」
ライト「………ちっ」
〜残り一体〜……皆,気を緩めていた。
エリア6,近くに水場が有り敵の侵入の難しい冷涼な入り組んだ洞窟だ。其処にリオレイアは居ると辺りを付け死樹達は向かった。エリア6の入り口付近,妙な熱気を感じる。
ドッ…ギルス「何だこの気配は……」ドドドドドドドドドド
そして.........
ナナ・テスカトリ「グルルルルルル…」ドン…
血だらけに成り2度と動かないリクの女王リオレイアの無残な死骸が炎妃龍ナナ・テスカトリの顎に加えられていた。皆が一瞬瞠目した。目の前の現実に目の前の敵に………
___突然の古龍に!
ライト「………嘘でしょう?」
死樹「現実じゃ…認めたくないがのう!」
ナナ・テスカトリは此方に気づきリオレイアを落とし此方に体を向ける。皆が,臨戦態勢に入る。
グワアァァァァァ___かつてギルスの感じた事の無い殺気がギルスを襲った!!
END
Mosuter hunter Ep2 古龍達の慟哭へ 第十三話「目もくれず進む」
目の前の存在に目が眩んだ......
永遠に自分なんて目にすることは無いだろうと心の中で思っていた。否,思いたかった存在だ。父を目指しハンターになったのならそんな事は思っては行けない筈だった。父は古龍狩りだった。
だが,ギルスも夢ばかりに埋もれた子供ではないのだ。古龍の恐ろしさは重々承知である。そして,現実に相対して感じるこの圧迫感,他の大型モンスターとは比べ物にならない圧倒的存在感。
ギルスは唯,自分の存在の小ささに絶望していた。
そして,絶望だと体を震わせた。
トン...ライト「絶望ですか?余りがっかりさせないで下さいよ?僕達の事其処まで馬鹿にしてるんですか?幾ら連戦の後だからってまだ,彼女と戦う程度の体力はありますよ?」
座り込んだギルスに話しかけたのは意外な存在だった。その言葉からギルスは口では自分を馬鹿にした様なことばかりを言っているが1番自分を認めているのはライトなのだと少し思った。
死樹「調子に乗って死滅斬を使い過ぎたのう…」
ライト「三回使いましたよね?限界は五回でしたっけ?レオナさんもまだ駄目そうだし」
ギルス「ほら!」
ライト「まぁ,僕と死樹さんで大技使わず彼女とダンスでもしながらレオナさんが復活するのを待ちましょうか?手の方は多少痛いですが足はまだまだ余裕ですしね?」
ニヤニヤとこの状況に関わらず楽しそうにライトは話した。その姿を見て彼等がまだまだ余裕で有る事をギルスは理解した。同時に,ギルスは感動した。大型モンスター3対の後にこんな化物と相対して皆,冷や汗一つかかないのだ感動もする。
ギルス「本当に頼もしすぎるぜ」
レオナ「やばくなったら期待の新戦力も居る事だしね?」
ビクゥ…ギルス「おっ,俺は親父とは違う!!いや,まだまだ俺なんて」
ライト「......煮え切らないですね?少し,失望しましたよ」
お決まりのライトの言葉にギルスは腹立たせながらも失望する気持ちも分るし自分の言葉は本心だから押し黙った。この修羅場を生き抜いたら絶対にこの男を抜かせる位修行してやると誓った。
___瞬間
テオ・テスカトル「グガアアアァァァァァァアアアァァァァァァ」バサバサバサッ…
赤い巨体がナナ・テスカトリの上空に現れた。巨大な牙,四つの四肢,ナナ・テスカトリの雄と目されるテオ・テスカトルだった。メンバーの表情が一気に変わった。
一体相手と二体相手では全く話が別なのである。流石にライトも冷や汗をたらしていた。然し,二頭の古龍はギルス達に見向きもせず空へと飛び去り消えていった。
ギルス「ふぅ,良かったぁ」
ライト「ちっとも良く有りませんね?ナナとテオの行き着く先はあのままだとダリスヴェンドだ」
ライトの言葉にギルスははっとなる。然し,そのライトの言葉に死樹が答えた。
死樹「否,ならば寧ろ好都合だろう。手負いの拙者たちでは彼等を止めることは不可能じゃった。対してダリスヴェンドには対古龍用兵器に事足りず傷も無い体力の余っているハンターも多いだろう。」
ライト「そうですね。そろそろリーさんも帰って着てるでしょうしね」
レオナ「少なくともテオとナナ位で火の海に成るほどダリスヴェンドは脆くないわよ?」
ライトは死樹の言葉に成程その通りだと頷いた。そして,ギルスはレオナの言葉に同意した。
レオナの言葉はその通りなのだ。一匹や二匹の古龍の強襲に耐えられないようならダリスヴェンドはとうに滅びている。
=========================================
その頃,ギルスの師匠であるヴォルトと人外の者達No1〜No3及び女性メンバーNo1のメンバーは狩場に到着していた。狩場の領域に張った頃から小型モンスターの姿も消え嵐が吹き荒んでいた。
普通のクシャルダオラの数倍の嵐の範囲と風速に皆,今回相対する相手の強さを感じ取っていた。
ヴォルト「おい……待てよ!?本当にあんた等だけで行くのか?俺は…」
レッド「私の命令は絶対の筈だ。黙っていろ。もし,やばくなったら呼ぶさ」
ヴォルト「どうやって!!」
ワルキューレ「俺様が口笛でも吹くか?」
ノーヴァ「照明弾を私が上げると言うのはどうでしょうか?」
ヴォルト「少しは真面目になれよ!!あんたら相手が化物だって!!!」スッ
アーチャー「黙れよ青二才が…貴方より私達の方が修羅場は潜りぬけてきているんですよ?」
普段,弟子のライト以外には殆ど怒る事のないアーチャーがヴォルトの胸倉を掴みそこ等へんの古龍より遥かに恐ろしい殺気を剥き出しにしてヴォルトに応えた。ヴォルトは戦慄いた。
ヴォルト「でもよぉ……俺が居なかった性で皆死んじまったら」
アーチャー「その気持ちだけは受け取っておきましょう?」
そうアーチャーは言ってヴォルトの胸倉から手を放しその場から去った。其処にノーヴァが来る。ノーヴァは軽くヴォルトのウカムルシリーズで身を固められた鎧を手の甲でコンと鳴らして言った。
ノーヴァ「ヴォルトは今は祈っていてくれれば良いんですよ?良いですか…ヴォルトは私達がピンチになった後の切り札です!相手の古龍にとっても新手の存在は当惑の的でしょうから♪だから今は...」
ヴォルト「大人しく祈って居ろってか!?祈っていたら何か変わる」コン
ノーヴァ「変わりますよ?祈りは風を伝い私達に届き動かなくなった足を手を奮わせるんです!!唯,祈っていて下さい…私達は生きて帰って父の母の仇を討つんだ!!」クルッ
ノーヴァの言葉に物言いたい事は山ほど有ったがヴォルトは何も言えなかった。唯祈って居ろと言うのは自分が戦力外だと言っているのではないかと......事実その通りで自分に頼る気が無いのではないかと。然し,ノーヴァ達は知っていたのだ。万全の状態の巨大クシャルダオラ相手ではヴォルトが居た所で邪魔になるだけだと。然し,それでも最終的にはヴォルトの力が必要になるのだろうと。
俺は小せぇな......
ヴォルトは1人小さく言った。自分より小さい強風で吹飛びそうな女に慰められた自分が悔しかった。
アーチャー「ねぇ,ワルキューレ?」
ワルキューレ「何だぁ?」
アーチャー「ノーヴァちゃんって若しかして...」
ワルキューレ「この戦い終わったらノーヴァとヴォルトの結婚式でも挙げるか?」バキィ
突然,馬鹿げた事を口走ったワルキューレはノーヴァに急所を派手に蹴り飛ばされた。
防具の上からでも流石に効いたのかワルキューレは地面とお友達になり悶え苦しんだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その頃,リーブロ及びフォルサーミアはダリスヴェンドに帰郷していた。フォルサーミアはダリスヴェンドに腰を据えている訳ではないがまだ暫く此処に居る事を決めたらしい。
リーブロはと言えば蛻の殻となったディナースオルディアの様相に是だけ人が居ないのも珍しいなと1人ゴチて酒場で暇を潰そうと酒場に向かった。そうすると当然の如くフォルサーミアが居たので絡んだ。
リーブロ「よぉ,寂しそうだな?」
フォルサーミア「寂しくなどない…」
リーブロ「嘘だな。背中が泣いてるぜ?まぁ,熱いスコッチでも呑んで語らおうよ…」
相変らず暑苦しいフル装備のフォルサーミアはリーブロの目を見て一言吐き捨てた。
フォルサーミア「お前も寂しそうだな?」
リーブロ「はぁ,家に帰ったら蛻の殻なんだから寂しいさ」
フォルサーミア「お前嫌われてるのか?」
リーブロ「まさか......嫌ってるとしてもライトの野郎位さ」
笑いながらリーブロは言う。リーブロは実はライトに嫌われている。然し,リーブロもライトの事を嫌っているのでどうといと言う事は無いらしい。そんな2人の場所に割って入る声が有った。
ザンテス「よぉ,リー!フォルサーミア!!この俺様が元気の出ることをしてやろう!」
リーブロ「遠慮しときますよザンテスさん?」
振り返りもせずサラリとリーブロは突然現れた男の申し出を断った。突然現れた男はザンデスと言うらしく若々しい綺麗な顔立ちで紫がかった黒い切れ長の瞳と野性味溢れる赤髪でかなり目立った。
彼は三年程前に人外の者達を止めフリーのハンターとして大陸全土を点々としている存在で巨大クシャルダオラとの戦いにも居合わせたらしい。リーブロに短時間師事した事もある。
ザンデス「はぁ,師匠の言葉を簡単に断るんじゃねぇよ!」
リーブロ「三ヶ月しか師事は受けてませんが?」
ザンデス「三ヶ月充分じゃねぇかよ!!」
フォルサーミア「あんな事があったと言うのに良くも平然としているな?」
フォルサーミアはザンテスの陽気な態度に苛立ちそう言った。クシャルダオラとの戦いはザンテスと仲のいい者達も多く死んでいった戦いだった。其れなのに忘れてしまったのかと言うように。
ザンテス「平気なわけねぇだろ!フランクもヴァーチェも消えたんだ…でもなぁ,悲しんでばかりも居られねぇのが世の中だろうが!!第一,あいつ等は俺の悲しんでる顔なんて望んでねぇさ…」
ザンテスは遠くを見るように悲しげな顔でフォルサーミアに言うでもなく言った。
フォルサーミア「………俺は」
ザンテス「キーラちゃんだってそうだ!お前の心の中に何時までも雨が降ってちゃ安心して眠りに付く事も出来ねぇよ……悲しみなんて格好付けて背負い続ける振りしてんな!」
ザンデスの言葉は深く厳しくフォルサーミアの心に突き刺さった。フォルサーミアの中にキーラの姿が甦る。三年前から師弟関係を続けて来た。自慢の弟子の姿。
ウェーブ掛かった金の短髪で溌剌とした顔立ちの青い瞳で唇が艶やかなどの男も目を付けそうな美女だ。自慢するに値する強く綺麗な女だった。
フォルサーミア「キーラ!!」
リーブロ「そろそろ,聞いても良いか?キーラちゃんの最後の戦いを!」
ザンテス「話しちまえよ?楽に成るぜ」
ザンデスとリーブロの言葉を聞き彼は忘れようとして心の奥に締めこんできた忌々しい記憶を口外する事を誓った。近くにあのクシャルダオラと共に戦った男が居る事も手伝っているのだろう。
そんな頃,今クシャルダオラと戦わんと現場に向かっている人外のメンバー達も.........
ザッ…レッド「皆,実は話して置きたい事が有るんだ」
ワルキューレ「勿体ぶんなよ!」
レッド「ザンテスさんから聞いたクシャルダオラとの戦いの一部始終だ。」
アーチャー「………始めてください。キーラさんやロミオ達の死を私はまだ受け止め切れていない」
アーチャーの言葉に皆が同意したかのように頷く。人外の者達はフォルサーミアとは関係が深くキーラとも馴染みが深い。そして,当然知名度の高いハンターには彼等と仲の良い存在も多い。
隠してきた痛みを解放したいと彼等は思った。因みにこの話は既にヴォルトは聞いて居る。
フォルサーミア・レッド「聞いてくれ。」
フォルサーミア「俺の見た事,感じた事を……」
レッド「ザンテスさんの見たキーラちゃん達の最後を………」
END
Mosuter hunter Ep2 古龍達の慟哭へ 第十五話「フォルサーミアとキーラ」
(フォルサーミア視点)
俺とキーラの出会い……
あれは,もう5年も前に成るのか?
時が立つのは早い物だな……あぁ,楽しければ楽しいほどに早くてだから……今はとても長く感じるんだ。あいつを失って俺は悲しみの海で溺れ続けているから………
___それは過去の事…
この古龍大陸と評される大陸の1番端に位置する小さな小さな雪山の寒村地帯で俺とあいつは出会った。初めてであった時は師弟になるとなんて思いもしなかったな?
ザッザッザッ…フォルサーミア「此処がリアッシュの村か。ハンターは少ないが皆腕利きのようだな」
ドンッ…キーラ「きゃっ!?すみません」ドサッ
俺とキーラの出会いはまるで絵に書いた様な出会いだった。あいつは俺の鎧の部分に頭をぶつけて鼻血を流してたなぁ……雪国美人と言って良いのか,金のウェーブ掛かった髪と青の澄んだ瞳,そして何より消えてしまいそうなほど白い肌が俺の欲望をそそった。だが,俺は必死でその欲を耐え尋ねた。
フォルサーミア「大丈夫か?ぼーっとしていた俺が悪い。すまなかった」
キーラ「凄い装備ですね!?ハンターさんですか……見ない顔ですけど」
フォルサーミア「あぁ,今日ギルドの命で此処に来た。レルキーと言う男を捜している。」
キーラ「父ですか!?父なら今狩りに出てるので今日の夜頃には帰ってくると思いますよ?」
俺はレルキーと言う男を捜し歩き回っていた。村のギルドで当然狩りに出ていると聞いていたが其れを娘である少女から聞くとは驚いた物だ。良く見ればとても鍛えられた体をしていた。
フォルサーミア「お前も狩りに出るのか?」
キーラ「いえ,まだまだ危険だからって出してもらえない出るんです♪娘居るのは初耳ですか?」
俺が驚いていたのに気付いていたのか彼女はそう応えてきた。俺は素直に驚いたと言ったら彼女は笑ってそうですか?みんな驚くんですよと笑って見せた。其の時の笑顔が眩しくて今も忘れられない。
俺は彼女とその後多少話し名乗りあい分かれた。そして,酒場でレルキーとその妻に会った。
レルキー「よぉ,てめぇがギルドナイツの小僧か?俺はレルキーだ宜しくな!」
フォルサーミア「あぁ,所で……娘に会った」
レルキー「そうかそうか!良い女だろう!?まぁ,一杯呑めや♪」ドン
酒のなみなみと入ったジョッキを派手な音をたてて置いて俺に進めた。俺は彼の言うがままに酒にがっつき生来のアルコールに対しての強さを見せ付けるように一気に飲み干した。
レルキー「すげぇな……酒の強ぇ奴は好きだぜ!」
エカテリーナ「ははっ,アンタの相手は強く無いと勤まらないからね♪」
フォルサーミア「好いて貰えて嬉しいよ」スッ
ガシッ___俺達は硬く握手をした
その夜,酒の回った俺は久し振りに大声で笑ったのを覚えている。彼との任務は彼等の実力が凄いお陰も有ってか容易く終った。俺も彼等の陽気さを気に入って何回か彼等と一緒に任務に行った。
そんな折だった。レルキーさんとエカテリーナさんが久し振りに2人だけでクエストに行ったのは……相手はドドブランゴ4体と言う事であの人らなら2人でも充分すぎると思ったのだろう。
事実俺もあの2人ならこのクエストで命は落す筈が無いと安心していたのを覚えている。ハンターの世界に必然などと言うものは無いと知りながら……過去の過ちを忘れていた。
それから,5日が過ぎた。流石に俺やギルドの者達も焦っていた。あれ程の戦士が村最強の何処へ言っても勇名を轟かせるような2人がドドブランゴ相手に近場の狩場から5日も帰ってこないのだ。
フォルサーミア「可笑しい。幾らなんでもドドブランゴ相手に!」
ギルドの受付け嬢「えぇ,あの2人なら1日で終らせてしまいそうなのに!」ダン
ハァハァ…ハンター「おい,フォルサーミアさん!大変だ!!」
フォルサーミア「何だ!?」
ハンター「落ち着いて聞いてくれ!レルキーさんの娘のキーラちゃんが居ねぇんだ!!」
フォルサーミア「何だと!!?」
ギルドの受付嬢「何ですって!!?」
ハンター「親父さんの武器庫からアグニがなくなってた!彼女,若しかしたら…」ダン
短い間ながら,レルキーさんと付き合った俺は理解した。彼女はこんな異常事態を唯,待っている事の出来るほど大人しい女では無い事を!俺は走った!!
___馬鹿野郎!!早まるな!!!
急げ………速く彼女に追付くんだ!!キーラの話しに拠ればキーラは確実にレルキーさんたちの手によって絶命させられた4体のドドブランゴを見たらしい。それも4日は経っていたそうだ。
俺はまだ新しいキーラの足跡を追いながら思い雪を撥ね退け迫り来るブランゴ共を吹き飛ばし進んだ。そして,彼女の元に追付いた。然し,俺が彼女の追付いた頃には全て終っていたんだ。
キーラ「お父さん……お母さん!!嘘......嘘だよ…」
ザッ…フォルサーミア「良かった…生きて………何だと!?レルキーさん!?エカテリーナさん!!?」
壮絶な死体だった。体は四肢を全て切裂かれ内臓が散乱し最早,その人だと判断するには防具と武器で判断するしかなかった。その防具と武器もズタズタだった。特にレルキーさんの大剣はどうしたらあのように真っ二つに折れるのだと思えるほどだった。
フォルサーミア「明らかにドドブランゴなんてじゃない!これは………」
キーラ「うっうぅ……うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ドッ
血の滲んだ雪の上であいつは自分の両親の肉を抱きながら叫んだ。一頻り叫んだ後彼女は気を失った。俺は彼女を背負って街まで連れて行った。彼女の両親の死は村中を騒がせた。
ギルド受付嬢「あんなに愛しあって居た家族だけにね……本当に辛いわ」
フォルサーミア「…………俺が悪いんだ」
ギルド受付嬢「余り自分を責めないで…一緒についていって貴方まで死んでたら」
その受付嬢の言葉が俺の胸に突き刺さった。事実その通りだ。俺が言った所で恐らく結果は変わらなかったのだろう。だが,それでも悔しかった。憂鬱な気持ちの沈んでいたある日の朝だった。
キーラ「フォルサーミアさん………私,両親の仇を取りたいです。」
フォルサーミア「駄目だ。お前の仇は余りにも大き過ぎる!!」
キーラ「フォルサーミアさんは知ってますよね?あたしの性格!!フォルサーミアさんが師匠になってくれなかったらあたし………勝手に行っちゃいますからね!そして,迷惑掛けちゃいますからね!!」
フォルサーミア「…………ちっ,好きにしろ!だが,加減はしねぇぞ!!」
キーラ「有難う御座います師匠!!」
本当は彼女が弟子入りを志願してきた事を本当に嬉しかった。だって,あいつは唯,1人で突っ走って死んじまいそうな気がしたから………
其れから,俺達の修行の日々は始まった。ギルドナイトとして最初からあいつには厳しい任務ばかり与えていった物だ。最初からリオ夫婦ってのは特に笑えたな。
キーラ「あれがリオレイアですか…」
フォルサーミア「音立てるなよ。寝ている様だが敏感だ!少しの音で気付く!!」ガサッ
キーラ「あっ!」
フォルサーミア「馬鹿野郎!!!」ムクッ
キーラ「師匠の馬鹿あぁぁぁぁぁ!!」
キーラのミスに驚き大声を張り上げ自分の大声の性で逆に俺がミスったのは良い笑い話さ。他にもあいつが間違えて持ってきたクーラードリンクを雪山で飲んだりあいつの仕掛けた痺れ罠に引っ掛かったり凡そハンターとは思えないミスをしたなぁ。何故か……あいつの前だとそんな事をしてた。
そう言えば有る日の夜尋ねられたな。
キーラ「そう言えば,師匠って何でそんなに凄いハンターなのに変なミスするんですか?」
フォルサーミア「てめぇが俺をムラムラさせるのが悪いんだよ」
俺は正直にそう答えた。そうだった。俺はキーラに惚れててキーラを楽しませたいからあんなくだらない事をしていたんだとそう思い知った。そして,あいつと生活して1年が過ぎた。
キーラ「何ですかこんな夜遅くに師匠?」ムニャムニャ
バサッ…
___キリンXシリーズ……
フォルサーミア「お前に有う装備をずっと考えていた。どうだ?」
キーラ「うわぁ,露出度多っ!!師匠のエッチ♪」
チッ…フォルサーミア「もう,師匠と呼ぶな。俺とお前はもう対等の仲だ」
その俺の言葉にあいつは瞠目して暫くしてから頷いたが相変らず師匠と死ぬ前まで呼んでいた……俺があいつを同格と認めてもあいつは俺を自分と同格と見ていなかったんだろうな………
はぁ,下らない前置きが長くなったな。次から,本番だ......クシャルダオラとの俺達の死闘を包み隠さず話そう。当然,その前の作戦についてや久し振りの出会いなんかも交えてな………
END
Mosuter hunter Ep2 古龍達の慟哭へ 第十六話「フォルサーミアとキーラ Part2」
(フォルサーミア視点)
あぁ,ちょっと待て……考えて見ればこの間にも話したい事が沢山有ったな。俺があいつと師弟では無いと切り出した夜あいつは結構反対したなぁ………
キーラ「対等………詰り弟子は卒業って意味ですか。何だか嬉しいような悲しいようなですね…」
フォルサーミア「素直に嬉しいと思えよ?」
キーラ「でも,私まだまだ師匠には全然追いつけてないし教わってない事も沢山…」
フォルサーミア「それは是からお前で学べ。俺の教えれる事は全て教えた積りだ!それともお前は俺のコピー人間になりたいのか?違うだろう……どんなに頑張っても同じにはなれんしそれにお前はお前のハンターの道を是から進んで行くんだからな……だから,何時までも俺に……」
キーラ「甘えるなですか!?私は貴方に甘えている積りなんて…」
フォルサーミア「自覚しているから声を荒蹴るんだろう!?」
俺はあいつが俺からはなれる事を願って厳しい口調で話した。あいつは俺をまだ師匠と崇めて居たかった様だがあいつも漸く諦めて引き下がった。夜の街中に響くほどの声で怒った俺は実はあいつよりも寂しかった。だったら何でそんな事したかって?
決まってる……あいつとそれ以上居たら俺は………あいつを壊すほどに抱き締めてしまいそうだったからだ。何であいつにそれ程に惚れた?一目惚れなら何時か冷めるだろうに……今も疑問は解けない。
あいつと師弟関係を解いてからもあいつは暫く俺のギルドナイトとしての管轄の街に居た。顔を合わせる訳も無く自らが違う場所に赴くための用意をしていたようだ。
別段,同じ街に居ても師弟関係を解除しただけだからいいと思うがあいつは俺の本心を汲み取ったのか何時までもここに居るとまた俺に甘えちまうって言って街を出て行った。
あいつが出発する前に一度だけ顔を出してキリンXシリーズを来て見せて「似合ってますか?」と尋ねてきたがな………勿論,俺は顔を赤らめて似合ってると言ったさ(苦笑
キーラ「良かったです♪それにしても身長のサイズも胸のサイズも完璧で………あっ!師匠若しかしてあたしの体のサイズ全て把握していたんですか!?」
フォルサーミア「うるせぇ…まぐれだ!!」
キーラ「はぁ,そんなまぐれ有る訳…」
フォルサーミア「師匠命令だ…さっさと街から出て行け!」
キーラ「こんな時ばかり師匠気取りですか?はいはい,さっさと出て行きますよ?」
そう言ってあいつは俺には2度と目もくれず街を出て行った。まぁ,そんな事を言っても1週間ごとに手が見送ってきたり一ヶ月に1回は俺に会いに来たりしていたがな……
そんな,自慢の弟子を得意げにその頃既に人外のメンバーで弟子も持っていたリーブロに話したみた。反応はご覧の通りだ。あいつ俺の弟子が女だったって事自体に僻みを持った。
リーブロ「良いなぁ…俺の弟子なんて巨大ゴリラ男だぜ?」
ヴォルト「ゴリラ男で悪かったな!」
リーブロ「居たのかよ?で,彼女はどんな子なんだ?」
フォルサーミア「笑顔の素敵な美人で従順で優しいやつさ。」
キーラの奴の良い所ばかりをこれ見よがしに言ってやるとあいつは「マジかよ?益々羨ましいぜ」と返答しその後に「だったら,その子を直接俺達に見せてみろよ」と切り替えしてきやがった。
フォルサーミア「何故?」
リーブロ「お前がそんな良い女を手に入れれるとは思えない♪」
ヴォルト『うわぁ,師匠の野郎,ズバッと言いやがった』
俺は其れに良いだろう会わせてやるって応えてその一ヵ月後にあいつに無理言ってディナーズオルディアに行って貰った。あの時のリーブロの驚き様は最高だったな。
リーブロ『嘘だろ………負けた!?』
ポン…ヴォルト「師匠,まぁあんたにもまだ先は有るさ♪」ボグォ
ドザァ…リーブロ「黙れ馬鹿弟子」ゴロンゴロン
キーラはと言うと元々の明るい性格と人当たりの良さで忽ち人外のメンバー取り分け女性メンバーを中心に仲良くなってあの後も何度か立ち寄っていたらしい。
それが3年以上前の事か。そして,俺達はその後も関係を崩さず文通や交流をしていった。2年前には「毒手の闇姫」なんて大層な異名を手に入れてたなぁ。そんな俺達が仲違いしたのは1年前のあの日だ。
あいつは何時もの様に俺に会いに来た。
___<差し入れに酒を持って>
フォルサーミア「……よぉ,何だ珍しいな差し入れか?」
キーラ「へへっ♪町長さんの悩みを解決してやったら街一番の銘酒を貰っちゃいました♪」スッ
キーラ「一杯どうです?酒の肴も有りますよ?」
フォルサーミア「何処にだ?」
キーラ「嫌だなぁ?あたしに決まってるじゃないですか♪」
色目使いで酒を掲げながら俺に顔を近づけて色っぽいう唇を甞めながらキーラは俺を誘うように言った。性欲と酒への欲望に耐え切れず俺はキーラの酒を飲む事になった。其れがいけなかった。
ゴクゴクゴクゴク…キーラ「………いい呑みっぷりですね?父や母を思い出します」
フォルサーミア「そうか?あの人達は俺以上に凄かったろう?」
キーラ「呑み比べしますか?」ニッ
売られた喧嘩は受けて立つとばかりに赤らんだ顔の魅力的なあいつの酒比べに俺は挑んでしまった。あぁ,そうさ………アレが行けなかった。アレが俺に後悔を余計に強くさせてるんだ。
グタァ…フォルサーミア「負けた……お前の酒の強さは血統か!?」
キーラ「……………フォルサーミアさん,私此処数年で世界の広さを見てきました。世界には凄い人が沢山沢山居てあたしなんてまだまだだって何時も思わされます…」
フォルサーミア「そうか,上進しろ」
キーラ「でも今だ嘗てフォルサーミアさんほどに尊敬できる凄い人に会った事が有りません。人は世界で一番愛する事の出来る人とは早くに巡り合うって聞いた事が有ります。多分,あたしの1番愛する人はフォルサーミアさんなんです………私,フォルサーミアさんの子供なら生める!!だから……」
スッ…フォルサーミア「俺も俺もお前を愛して居るさ!だが,俺はお前と結ばれる資格は無い!」
キーラ「結ばれる資格は無いって!!愛に資格が必要ですか!?そもそも貴方の資格ってなんですか!?父と母の件でしたら貴方がそんなにも気に持つ必要の無い事です!!」
フォルサーミア「…………俺は…自分の欲望に満ちた男だ。お前の笑顔を望むのは俺のためなんだ。俺はお前の笑顔は欲しいがお前自体は要らない。重荷になるだけだ。」
酒に呑まれ本音を言っておけば良かったと本当に後悔している。そんな事で未来がどれ程変わるのかは分らない。俺があいつの言葉に同意してもし結婚していたとしてもあの巨大なクシャルダオラは現れあいつは狩りに参じていただろうし死ぬ運命に代わりは無いかもしれない。
だが,俺はあの時の嘘を悔いている。溜らないほどに愛していたあいつにその気持ちを言えなかった事を………言い得た状況があの時が最後だったという事に気付いていなかった事を。
俺はアレ以来クシャルダオラ討伐の任に付くまで彼女と会う事は無かった。そもそも,クシャルダオラ討伐のメンバーに彼女が居なければ俺は恐らくその任務に手を上げては居なかったろう。
愛していたという言葉を言う為にあの任務に参じた。結果,言うチャンスは幾らも有ったのに昔の仲違いを気にしていた俺は最後まで言えずキーラは死んでいった………
死んだ人間は何をしても甦らない…
その事実は未来永劫変わらない!
だから,深く後悔した………責めて!
END
Mosuter hunter Ep2 古龍達の慟哭へ 第十七話「決戦の火蓋」
(キーラ視点)
留意事項:キーラは既に故人なので彼女の視点で語られるのは可笑しいように思うかも知れませんが彼女と言う存在をより深く知って貰いたくて彼女の視点でクシャルダオラとの闘いの物語を描く事に決めました。皆様,ご了承の事をお願いします!!
あたしはクシャルダオラの討伐と聞きすぐさま飛びついた。理由は多々有った。最近,腕の鈍るような詰らないクエストばかりを遣っていて少しフラストレーションが溜っていた事………
後は以前までの慣れた生活のリズムが自分の意地の性で壊れてしまった事………まぁ,多分そんな所でストレス解消なんて軽い理由も有った。最も本当はその巨大クシャルダオラが両親の仇だと考えたからなんだけど………あのお父さんとお母さんを倒したほどの存在。是位の存在じゃないと説明が付かない!!
ギルドより指定された街へは作戦決行5日前には付いた。街を見回すと明らかにその町のハンターのレベルよりも一段も二段も違いそうな人達が集まっていた。ディアブロUシリーズに身を固めた大剣使いは台風の目と称される超竜人のハンター,グレゴリウス・マットーヤだしウェーブ掛かった赤茶色の髪のニヒルなマスクの格好良いクシャナSシリーズの男は武器大陸で新たに開発された銃と言う武器の使い手アンソニー・ティアゾンだ。他にも周りを見回せば凄い奴等がキリが無い。
神速の弓矢使い,カルロッサ・ガリュー,東国より真の太刀裁きと言う物を教えに来たと豪語する男:山場剛次……女性ハンターの的となる浅黒い肌の綺麗なプロポーションのランス使い,麗人ハンナ・テリア……正直,ギルドナイツに居るとは言え末席であるあたしの名前なんて霞みそうな気がした。
正直言って周りの連中の豪華さにくらくらした。そうやって暫し街の真ん中辺りでぼんやりと立ち尽くしていた私にかけられる声が合った。聞いた事の無い声だ。男の声では有るのは分る。
声を掛けられるまで気配を感じなかった事を考えると私より遥かに冗談者なのだろうと思い恐る恐る振り向いた。其処にはあの銃を持ったニヒルな男アンソニーが居た。
アンソニー「よぉ,毒姫様?長い事田舎勤めで人が多すぎる都会に酔ったかい?」
キーラ「はっ?いや……周りのハンターの凄まじさに唖然としてました…」
アンソニー「そうか?あんた……俺等にびびる必要の有るような弱いハンターじゃないだろう?」
キーラ「とんでも有りません!あたしなんてまだまだ…」
アンソニー「本気で言ってるのか……アンタ覚えてるか知らねぇが俺はアンタの狩りに一度遭遇してる者なんだが……アンタの双剣のレベル…半端じゃぁ無いぜ?もっと自信もちな?」バン
そう言うと彼は突然あたしの背中をバシッと後押しするかのように叩いた。そうして,こう続けた。遠慮なんてしてたらハンター稼業は務まらないぜって……遠慮なんてして譲歩してたら本当の実力が発揮できないぜって言ってたんだと思う。多分,私のためを思って以上に戸惑う者の性で足を引っ張られて死ぬのはゴメンだって思ったんだろうけど………
其れから1日が過ぎた。あたしは比較的早くこの街ケイローンの港に付いたのだが古龍クシャルダオラが到着する四日前と言う事もあり一気にその日は呼び出しを受けていたハンター達が街に流れ込んできた。
フォルサーミア「キーラ」
キーラ「………あっ,師匠……もこの任務に参加するんですか?」
フォルサーミア「あぁ………」
キーラ「うわあぁぁ!やったぁ♪師匠が着たんなら私心配なく戦えますね!!何時も何時も私の馬鹿を助けて直ぐにミスを帳消しにしてくれた……」
フォルサーミア「………偶然とは言え俺もまたお前に会えて嬉しいよ」
師匠はそう言って私の前から消えていった。本当は沢山喋りたい事が有ったのだろうけれど私の顔を見ると言えなかったのだろう………言いたい事が有るならスパッと本当の事を言って欲しかった。
多分,あたしとクシャルダオラ討伐に居合わしたのだって偶然じゃなくて彼が立候補したのだろうと直ぐに分った。あの時の蟠りをあたしと同じく未だに引き摺り続けて清算する為に………
その日の夜,最後のメンバーとして任務帰り直後で直行してきたザンデスさんが加わって作戦指揮官のアンソニーさんが早速作戦会議を開始した。アンソニーさんは古龍観測所の観測データによるクシャルダオラ巨大種の能力を全て私達に伝えてくれた。並のクシャルダオラの風圧の数倍の風圧……巨体にして並のクシャルダオラと差して変わらぬ速度。
其処に居る皆が戦慄いた……
コホン……アンソニー「まぁ,あれだ。出来うる限りの準備は全てした!如何に相手が強かろうと生物だ!!好きも生命力の限界もある!!此処に居る皆がちゃんと自分の仕事をすれば勝てるさ!!」
活を入れる様に威勢の良い声でアンソニーさんはそう言った。でも,矢張り皆不安だ。当然だ……相手はクシャルダオラの巨大版,クシャルダオラと剣を交えたことさえ無い者が殆どだと言うのにそんな化物と対峙しなくてはならないのだ。正直あたしも恐ろしかった。紙屑の様に切刻まれるのではないかと…
決戦前夜の夜……私は恐くて眠れなかった。その間師匠にはに会う事も無く1人だった。時々,アンソニーさんが話しかけてきたが其れも作戦についての打ち合わせだけだったから。
何人かの人達は死ぬんなら死ぬんだと受け容れて不貞寝などしたり自分は絶対死なないと決め付けて気楽にしている人達も多かったけど私はそうは行かなくて誰かに慰めて欲しかった。
___其の時だ
誰かの手が私の方を叩いたのは…
ポン…キーラ「ししょ………」
ザンデス「残念だったなフォルサーミアじゃなくて!恐くて眠れないのか?」コクッ…
ザンデス「俺とフォルサーミアで全力で護るさ……だから安心しろ」
キーラ「………有難う御座います。でも,出来れば師匠に…」
ザンデス「ふぅ,あいつからの言伝なんだよ是は…」
キーラ「………人の口を借りないと自分の言葉も告げられない人なんですか?」バタン
ザンデス「………お前はどう思う?」
正直,師匠に慰めて欲しかった。師匠の言伝で来たと聞いた時は余計にそう思えた。ならば彼自身の口から聞きたかったと。でも,ザンデスさんもディナーズオルディアで良く会った人だから私の事を気にかけていたのかも知れない。彼の慰めで少しだけ気が楽に成りその日は眠った。
そして朝が来た。
フォルサーミア「お早う」
キーラ「全力で護ってくれるんですよね?」
フォルサーミア「あぁ,我が身盾にしてでも!!」
キーラ「有難う御座います!」
是が私と師匠のかわした最後の言葉………そして,嵐が街を襲う。是が本当に生物の放つ風なのかと思うほど凄まじい風だ。暴風域は木々を薙ぎ倒し土砂を撒き散らすほどだろう。
身が引き締まった。そして,クシャルダオラの姿が嵐の中からでもはっきり見えるようになった。大きい!今まで見てきたどのモンスターよりも遥かに!!甚大な存在感が私達の包囲する真ん中へと降り立った。
クシャルダオラ「ぎしゃあぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁ」
クシャルダオラの絶大なる声量による唸り声はあたしたちの体を震わせた。
そして,私達の中にある克服しようのない強者への畏怖と恐怖を奔らせた。動けない……足が竦む。戦場では其れが致命傷だと知りながら目の前の絶大な存在から目を離すことが……出来ない。
そんな皆の状況を怒声一つでリーダーのアンソニーさんは納めた。
アンソニー「ビビるな!!作戦通りにやれば勝てる!!!俺たち人間の戦い方をみせてやれ!!!」
ドッ…
たった一言……言葉は月並み!
然し彼の声は強く!!
ダン…クシャルダオラ「ぎゃおぉぉぉぉぉぉ!!!」ズゥン
クシャルダオラの巨体と強力な脚力による速度と攻撃範囲を併せ持った体当たりは皆が統制を持ちクシャルダオラの死角になるような左回りの移動をとる事により難なく回避できた。
アンソニー「頼むぜ神速のカルロッサさんよ?」
カルロッサ「御意!」ヒュンヒュン
私たちが彼を撹乱している間に弓隊の雨の様な矢の嵐がクシャルダオラを襲った。全てが毒系の効果を持った矢……クシャルダオラは忽ち毒に犯されて風の防御を失った。
クシャルダオラ「ガルルルルル……ガアァァァ!!」ゴシャアァァァ…
然し,クシャルダオラはすぐさま危険な敵を弓隊と感じ強力なブレスを吐き出した。大地を抉りながらそれは進む。然しその先には一人の武士が居た。超竜人が1人鉄人グレゴリウスさんだった。
グレゴリウス「絶望を与えよう。我が大地を砕く一撃で!」ブォッ
刹那,風が巡りクシャルダオラのブレスが裂けそしてクシャルダオラの顔に小さな傷が出来た。私はその技の凄まじさと人間業じゃない事に驚いた。クシャルダオラも思わず空を舞った。
然し,それは彼にとって失敗だった。
ゴソゴソ…アンソニー「悪いが人間にはこんな道具があるんだよ♪」ポイ…
カッ…
炸裂した!!
クシャルダオラは突然の強力な光に驚き地面に落ちた。その瞬間を狙い私たち剣士がクシャルダオラに近づき強力な乱舞や気刃斬り等を決めた。クシャルダオラは立ち上がったがすぐにまた倒れこみ其処を大樽爆弾Gを持った弓隊(遠距離部隊)の人達が透かさずやってきて大樽爆弾を仕掛けた。
ドガァン!!
なすすべなくクシャルダオラは其れを食らう。然し,クシャルダオラは立ち上がる。何事も無かったかのように立ち上がり今度は翼を動かし嵐を発生させる。其れを皆が動きながら一斉によける。
隙と見たザンデスさんが閃光玉を投げた。
然し……
クシャルダオラ「!」バッ…
クシャルダオラは一撃の下に閃光玉の能力を見抜き多少の攻撃は仕方ないと自らの視界を翼で防いだ。其れを見たザンデスさんは「賢い奴だ」と驚いていた。そんなクシャルダオラに接近してしまっていたハンターはクシャルダオラの不意の尻尾の一撃を喰らい皆吹き飛んでいた。
アンソニー「……もう,閃光玉は通用しないな…予想通りだ。まだ毒状態の時間は有る」
カルロッサ「今度は麻痺を中心に狙い頭の角を折るか?」
アンソニー「あぁ,そうしよう」
クシャルダオラはなぜかその後余り風のブレス等を使わずに突進や尻尾攻撃のみを仕掛け相手に攻撃の隙を与えるような戦いをしていた。あたし達は気づかなかったんだ。是がわざとだって事……私達の攻撃が実はそれほどまで効いていい無かった事。
バキィ…クシャルダオラ「ぐぎゃあぁぁぁぁああぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ドザァ…
ブンブンブン…
ザクゥ…
〔クシャルダオラの角が折れ地面に刺さった。〕
アンソニー「よっしゃぁ!この期を逃すな!速攻で片をつけるぜ!!」
その時皆が攻め易くなったと喚起に騒いだ。クシャルダオラの角はある程度ダメージを負った状態じゃないと折れない。其れを折ったのだ。もう相手の体力はほとんど無い……筈だった。
角が折れたと同時にクシャルダオラは倒れこんだ。狙撃者の皆が残りの爆弾,対古龍用爆弾を持ってもがくクシャルダオラに集まってきた。師匠は頭の方に向かっていったが遠くに居たため皆より遅い。
ザンデス「行くぜ!竜撃砲を決めて景気良く終わらせる!!」ニタァ……
フォルサーミア「………!?」ガシィ
ザンデス「どうした!?」
フォルサーミア「いかん!クシャルダオラの罠か!!?」
クシャルダオラ「ぐがああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ビクゥ
バインドボイスだ。倒れた状態から放つなど聞いたことも無くて皆動きを阻害された。そして,次の瞬間だった。師匠の引けと言う言葉が聞こえたがもう遅そうだ。クシャルダオラの体が眩く光ったのだ。
アンソニー「畜生!近づき過ぎた!!油断した……どれ位の攻撃範囲だ?兎に角…」
アンソニーさんの逡巡と迷いの入り混じった声があたしの近くで聞こえた。
アンソニー「あちゃぁ,こりゃぁ多分殆どこの技に巻き込まれるぞ」
キーら「アンソニーさん」
アンソニー「悪い…クシャルダオラの状態を見切れなかった俺の責任だ」カッ
アンソニーさんがそう言った瞬間クシャルダオラの体から強烈な嵐が爆ぜた。其処であたしの意識は途切れた。一瞬の間に多くの思い出が流れてきたが最後に一番心残りだったの………
___師匠
フォルサーミア「キーラアァァァァァァ!!畜生……キーラ!!」ボッ…
最後,師匠の声が聞こえた気が___
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(キーラ視点終わり)
カランカラン…フォルサーミア「くそ……俺が体をはってでも護ると言ったのに!」ズン
フォルサーミアの長い語りが終わり物語は現在へと戻る。フォルサーミアは怒りに震え自らの刃をギルドの木造りの机に突き刺して懺悔した。
リーブロ「やめろ……何かにやつ当たりしたって戻ってこない」
フォルサーミア「分っているさ」
ザンデス「そうやって怒ってるだけか?行こうぜ……俺達の復讐に!」
フォルサーミア「………だが,レッド達が向かっているのだろう?」
其れを聞いてニヤニヤと笑いながらリーブロは今回の狩りが四人ではなく五人で行っている事を言った。フォルサーミアはルールに厳しい男のはずだから今回の任務で自分達まで行くと多過ぎないかと危惧していたのだ。然し,元より今回の狩りはルール破りなんだとリーブロは言う・
ザンデス「今更,数の問題で引き下がるのか?時には感情に身を任せてみろ!結果はついてくる!」
フォルサーミア「………行くぞ」
リーブロ達の後押しによりフォルサーミアは立ち上がった。其れを見た受付の娘はにっこりと笑い「フォルサーミアさん達の狩り許可します」と言ってくれた。
いざ,フォルサーミア達がクシャルダオラの元へと向かう!!
数日前の話だ…俺がクシャルダオラと戦った場所に懺悔に訪れた時………
キーラの泊まっていた宿で偶々宿主に頂いた手紙が有った…
(キーラの肉筆だった……)
内容は俺に対する謝罪と生き残ってちゃんと謝って新しい未来を進んで行きたいなと言う話だった。
キーラは俺を恨んでなんて居なかった!俺はあいつが俺を恨んでるとびびって謝れなかった………益々俺はあいつを護れなかった事が辛くなった。
___だが,何時までも迷っているのは今日で終わりだ………
俺は区切りをつけるために今までの俺を捨てる!
俺の誇りにかけて奴を倒す!!
END
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