二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.40 )
- 日時: 2009/12/04 18:08
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: 0inH87yX)
「あっ」
私は地面に幾つもある丸い小石につまずいて、前のめりに転んだ。けれど、めげずに起き上がると歩き始める。ルリリを助けなきゃ、と思えば思うほど焦る気持ちもどんどん溢れてくる。焦る気持ちが足の動きを早くさせ、石につまずきやすくなる。
石の隙間から咲いたどす黒い紫の花は卵の腐った臭いを放っていて、鼻がもげそうだ。おまけに雑草が足を歩くたびにくすぐってくる。
「おい、どけどけ! そこの岩場はおれの陣地だっ」
と、柄の悪いコラッタが襲ってきた。大きな二本の歯に、紫色のネズミの体をしている。けれど、私たちは相手にせずスタスタと歩く。こんなやつらに構っている時間なんてない。あんまりしつこいやつは、<でんきショック>をくらわしてやればいいのだ。
とにかく、ルリリを……ルリリを……。
「はい、ミーシャ」
急いでいたため、岩場に入ってからまったく話してこなかったミニリュウがオレンの実を差し出してきた。トレジャーバッグから出した物だ。トレジャーバッグは、ミニリュウが肩からかけている。
私はありがたく受け取ると、青く丸いオレンの実にかじりつく。青い丸の形の中に、粒粒の模様が入っている。まるで、星が浮かんでいるかのようだ。そんなオレンの実は、体力を回復させる効果のある実。1口かじると体が楽になり、すべて食べると体の中の元気の実がはじけてパワーが飛び出た。
「おいしいね」
私は思わず笑みを漏らした。ミニリュウも、トレジャーバッグからオレンの実を取り出して食べると真剣に言う。
「スリーパーは悪いポケモンだから、もしかしたら襲ってくるかもしれないね。心構えをしておかないと」
言い終えるとミニリュウは不意に食べていたオレンの実を投げ捨て、私をドンッと突き飛ばした。痛い、と思って文句を言おうとすると、私の真横を紫色に光る細い針が通り過ぎていく。ミニリュウが突き飛ばしてくれなかったら、私に当たっていただろう。助かった……。
「ミーシャ、後ろ!」
叫ばれて私が後ろを向くと、オレンの実の匂いに誘われてやって来たビードルがいる。ビードルは、黄色い団子を組み合わせた体をしていて、下へ行くほど団子が小さくなっていた。
ビードルはオレンの実を奪うがごとく、毒の針を何本もその尾から飛ばしてきた。
「毒の針だっ! <でんきショック>!」
私は毒の針に向かって電気を飛ばした。ところが、針は電気に当たってピンッと弾けとび、ミニリュウに向かう。ミニリュウの小さく美しい青の竜のような体に、針がトクトクッと刺さった。
毒の入った針だ。ミニリュウの綺麗な体の色がさされた所を中心に、ジワジワと紫に染みていく。
〜つづく〜
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.41 )
- 日時: 2009/12/04 19:11
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: imuS2CMi)
「あっ、ミニリュウ!」
ミニリュウは『毒の状態異常』になった。毒が体にまわると体力が徐々に減っていき、終いには瀕死状態になる。ミニリュウは、毒が体に入って苦しそうだ。吐く息がかすかに紫色だ。私の、私のせいで……。
私が駆け寄ろうとすると、ミニリュウは「いいから、ビードルを追い払って!」と怒鳴った。怒鳴るミニリュウを見るのは初めてで、私は息をのむ。しかし、その声でビードルに向き直った。
「ビ—————ドル!」
ビードルは鳴き声を上げ、シューという音を立てながら口から糸を吐いた。白くねばねばした糸だ。あれにつかまったら、身動きがとれなくなってしまう。
私はひるまずに、全身に力を入れて糸に向かって<でんきショック>を繰り出した。電気はバチバチいいながら、糸に当たる。束になっていた糸は、電気に当たると引き裂かれた。粉々になった糸が地面に散る。
「いっけぇ! <たいあたり>!」
何も考えず、私は目をキュッと瞑ってビードルに激突した。ビードルにかなりのダメージを与えたはずだが、激突して体をぶつけた私も体が痛い。瞑っていた目を開くと、逃げていくビードルの姿が目に入った。
周囲に敵ポケモンがいないことを確認すると、私はミニリュウに今度こそ駆け寄る。
「ミニリュウ、ミニリュウ……」
私は言いながら、ミニリュウがかけているトレジャーバッグをあさった。体力を回復させるオレンの実があるのなら、毒をとるモモンの実だってあるはず。
思ったとおり。トレジャーバッグの中から、ピンク色の桃の形をした実が出てきた。肌色の斑点がある。私はそれをミニリュウに渡した。
ミニリュウは、モモンの実を1口だけかじった。そして、次にガツガツと実をすべて食べる。よくなったのか、紫に染まっていた体は元の美しい色に戻っていた。
「はあ、ミーシャ。助けてくれてありがとう」
「そんな! ミニリュウが私を突き飛ばしてくれなかったら、私だって危なかったんだし。お互い様だよ、ねっ?」
ミニリュウが元気になったのが無性に嬉しくてならなかった。私たちは、しばらく笑いあいながらその場に立ち尽くす。岩場に笑い声が響いた。しかし、ルリリのことを思い出すと、真剣な表情になる。こんなことをしている場合ではない。ルリリだ。
「そうだ、こうしている間にもルリリが……。ミーシャ、早く行こう!」
さっきより足早で私たちは岩場を進み始めた。その気持ちを表すかのように、風はいっそう強く速く吹いた。
〜つづく〜