二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師 *amuの旅* ( No.22 )
日時: 2009/12/25 10:10
名前: 瑠美可 ◆rbfwpZl7v6 (ID: 2zWb1M7c)

「いらっしゃい」

 店に着くなり、エプロンをした男が笑顔で出迎えてくれた。ここの地方は日差しが強いからか、肌の色があむよりも黒っぽい。

「そこに座ってくれよ」

 男に指示された場所は中央よりの場所だった。あむはそこに腰かけ、体を伸ばしながら一気に息を吐く。

「あ〜疲れた……」
「お疲れ様だな。何にするかい?」
「えっと……これ何ですか?」

 あむは、ロープで垂れているものを指して尋ねる。
 見た目は川魚に似ている。しかしそこからは手と足が生え、全身は墨のように黒い。そして身体全体の皮膚は水分が失われてしまっている。

「お嬢ちゃん『スナイモリ』を知らんのかい。このリオールの名物だよ」
「イ、イモリ」

 イモリのような爬虫類が大嫌いなあむは、その姿を想像をしただけで吐き気が起こってきた。そしてそのそれを払うかのようにブンブン、と首を数回大きく振った。聞かなきゃよかった、と心の中で後悔する。

「じゃあ普通のものをください。後飲み物は水で」
「あいよ」

 そう言うと男はカウンターの下で作業を始めた。かなり手早く食べ物を皿に乗せ、あむの目の前に置いた。変なものが出てくるかと思ったが、普通に食べられそうなものが出てきてあむはほっとした。

「いっただきま……」

 両手を合わせいただきます、と言いかけた時だった。ドスンと物が当たる音がして、続いてガシャンと何かが割れる音。親父があー! と非難の声を上げながら、カウンターから乗り出す。客たちもどよめいている。振り返ると、ラジオがきれいに割れていた。
 その近くに青銅色の鎧が立っていて、申し訳なそうにしているから、こいつが壊したに違いない。どうやら席から立ち上げる時に上のひさしにぶつかり、落としてしまったようだ。

「お客さん! 困るな〜だいたいそんな格好で歩いているから……」

 文句を続けようとする店の男を、少年の手がさえぎった。金髪を三つ編みにし、赤いコートをまとっている少年。小柄でその顔つきは結構生意気そうだ。金の瞳は全然反省の色を浮かべていない。

「まあ待ってって。すぐに直すから」
「直すって?」

 店の男が腕を組んで言う。
 その横で鎧はどこからかチョークを取り出し、壊れたラジオの周りに複雑な図形を描き始めた。やがて完成すると、一声。

「じゃいっきま〜す!」

 その瞬間空気が震えた。稲妻に似た白い光がバチバチっと発生し、皆の視界を白に染めていく。やがて光が収まった時には、ラジオが元に戻っていた。コードを挿したままなので、なにやら声が聞こえてくる。

「驚いた! あんた奇跡の術が使えるのかい!?」
「う、うそ…・・・」

 あむは目の前の光景を呆然と見つめていた。何でラジオが直ったのだろう? 変な図形を描くだけで直るなんて聞いたことがない。やっぱりここは異世界なのか……と改めて痛感させられる。

「奇跡の術? これ錬金術ですよ?」
「エルリック兄弟って言えば、結構名が通っているんだけどね」

 その瞬間客の一人が声を発した。

「エルリック兄弟? 確か兄が国家錬金術師の」

 そして別の客がその言葉を継ぐ。

「『鋼の錬金術師』! エドワード・エルリック!」

 その言葉を合図にしたかのように、客たちは一斉に鎧を円状に取り囲む。あむは何のことか分からず、店の男に尋ねる。

「国家錬金術師って何ですか・・・・・・」
「国家錬金術師は、国の試験を通った錬金術師のことさ。その試験ってのが難しくてね。全国でも200人位しかいないって聞くよ」

 でも錬金術がわからないあむは、質問をさらに続ける。

「錬金術って」
「錬金術は物質を理解し、分解し、再構築する科学技術さ」

 少年があむの方に歩み寄りながら言ってくれた。しかし辞書のような解説にあむはさらにこんがらがるだけであった。少年は苦笑いを浮かべる。

「わかりずらかったか? まあ物質を変化させる術っていえばわかるか? 例えば水を錬金術を使うと氷にできるんだぜ」
「うん。それならなんとなく……」

 すると少年はにっこりと笑い、広場の方に駆け出してしまった。それを客に囲まれていた鎧が慌てて追いかけていく。

「兄さん! まってよ!」

 その姿を目で追いながら、あむは自分の足に何かが当たったのを感じた。目をやると、銀の時計が落ちていた。

 

〜つづく〜