二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師 *amuの旅* ( No.27 )
- 日時: 2009/12/25 10:03
- 名前: 瑠美可 ◆rbfwpZl7v6 (ID: 2zWb1M7c)
「あれ」
あむはしゃがみ込み、足に当たった時計を拾い上げた。それからまじまじと見つめてみる。
中々しゃれた懐中時計だ。銀色で日の光を浴びて、静かに輝く様子はどこか月を思わせる。
表の蓋の部分には細かい細工が施されている。ライオンを思わせる生き物が中央に大きく浮き彫りされ、その後ろには、五亡星。そして下半分はハートの形がいくつもつながり、鎖のようになっている模様が半円にそりながら描かれている。
「それ銀時計じゃないか……!」
あむの左横の客が裏返った声で言った。そんな声で言われるのであむは少しびっくりした調子で返す。
「ぎ、銀時計?」
「ああ」
今度はあむの右横の客が話し込んでくる。
「国家錬金術師の証『銀時計』……まあ国家錬金術師だということを示してくれる身分証のようなものだ」
「へぇ〜」
改めて覗き込むが、あむにとってはただの時計だ。しかし、ん?と思う。
「えぇぇえええええ!?」
突如あむの黄色い声が辺りに響く。カウンターの後ろのビンが軋む。
「こ、これあのエドワードって人の大切なものなんじゃ」
「確かに」
周りの客たちが一斉にどよめき始め、あむの手の中にある銀時計へと視線を向ける。あむは自分が見つめられているようで何だか恥ずかしくなった。頬が紅潮する。
「これどうすればいいんでしょう?」
「お嬢ちゃんが届けてあげればいいんだよ」
客たちが笑顔で言う。
「へ? なんであたしが届けるんですか?」
あむが問いかけると客たちは蜘蛛の子を散らすように一斉に、四方八方へ逃げ始めた。仕事が、これから用事が等と適当な言い訳をしながら。
「昼代タダにしてあげるからさ? な、いいだろ?」
しまいには店の親父まで。片目をウインクさせ、茶目っ気たっぷりに言った。しかしその顔には面倒なことには関りたくないとデカデカと書かれている。
あむはしかめっ面をすると、黙々と遅い朝食にありつき始めた。騒動のうちにすっかり冷めてしまっていたが、それはあむのお腹を確実に満たして行った。