二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師 *あむの旅* ( No.37 )
日時: 2009/12/28 15:29
名前: 瑠美可 ◆rbfwpZl7v6 (ID: 2zWb1M7c)

 一方。
 先ほどあむをイライラさせていたコーネロ教主は、いつものスピーチを終えた。そしてゆっくりと神殿の中へと足を進める。人々が拍手でそれを送っていった。
 そんな時、一人のレト教信者がやってきた。黒い制服を着ている彼の表情は、かなり青ざめている。コーネロに近づくと、何か耳打ちした。コーネロの細い目が、わずかに見開かれる。

「何? 国家錬金術師が来ているだと?」
「はい。エルリック兄弟と、日奈森 亜夢(ひなもり あむ)と申すものたちです」

 コーネロは顎に手を当てて、考え込み始めた。顔中に冷や汗が浮かび、尋常ではない状態であることが伺える。

「まずいな」

 コーネロが口を開く。

「鋼の錬金術師エドワード・エルリック。最年少で国家資格を取ったとは聞いていたが……なぜこの町に?」
「鋼の錬金術師がなぜここに? まさか我々の計画が……」
「軍の狗め。よほど鼻が良いとみえる」



「教主様はお忙しいので、なかなか時間が取れないのですが。あなた方は運がいい」

 あむたちは、男に案内され、コーネロに会うこととなった。この部屋に、もうすぐコーネロが来るらしい。
エドワードが「改心したから」と言って、少女——ロゼにコーネロに会わせてくれ、と頼んだのであった。無論、改心したなんて嘘であろう。
アルフォンスが兄さん演技下手すぎ、とぼやくのをあむはばっちり聞いていた。

「悪いねぇ。なるべく長話しないようにするからさ」
「そうですね」

 その時、男の口元に笑みが浮かんだ。穏やかな笑いではなく、上手くいった。と喜ぶようなニヤリとした不気味な笑み。そして続く言葉は。

「早く終わらせましょう」

 扉が閉められ、ガチャと施錠される音が聞こえたと思った。あむは振り向こうとする。
 と、背中に何かが押し当てられた。冷たいものだ。恐る恐る視線を向けると、白い服を着た男が、あむの背中に銃口を押し当てていた。
 横を見ると、アルフォンスとエドワードも、全く同じことをされていた。

「やっ!」

 男の強い力があむの身体を宙に浮かせた。そして軽いものを持ち上げるかのように、あむはお姫様だっこされてしまった。
 逃げようと足をばたつかせるが、男には全然効果がないようだ。

「ちょっ、離してよ! お姫様抱っこは初恋の人にやってもらうんだから!」

「副教主さま? 何をなさるんですか?」

 ロゼが口をあんぐりと開けて言った。
 すると黒い服の男は、真面目な顔で言い放った。


「ロゼ。あのあむと言う少女以外は、教主様を陥れようとする異教徒だ。悪なのだよ」
「は?」

 自分はエドワードに銀時計を届けに来ただけで、レト教を信じる気など全くない。
 銀時計をすぐに渡したいが、この状況では……。

「まずは……お前からだ」

 黒い服の男が持つ銃口が火を噴いた。そしてそれは間違いなく、アルフォンスの鎧の頭を撃ちぬいた。頭部は空中に舞い、やがて近くに落ちる。鎧の下部分が、ガクリ、と前に倒れる。

「ふはははは……やった! やったぞ!」

 副教祖が、勝利に満ちた表情で笑った。あむは許せない気持ちになり、飛び掛ろうとした——時。

「信者にひどい事させるんだなぁ……」


 鎧が起き上がった。何もないはずの鎧が動き、辺りの人間は銃を捨てて逃げ始める。どさくさであむも自分の力で、男の身体を脱出した。
 鎧は自分を撃った男にゆっくりと近づくと、思い切り殴りつけた。男は、地に叩きつけられ、そのまま動かなくなってしまった。

「ど、どうなっているの?」

 ロゼが必死に声を振り絞って出す。それはあむにとっても同じ疑問であった。

「どうもこうも」
「こう言う事で」
 
 エドワードはアルフォンスに近づき、鎧を叩いて見せた。中身は空洞らしく、コツコツと言う音が中で響いていた。一体全体どうなっているのだろう。

「これはね。『禁忌』って言うんだよ。僕も、兄さんもね」

 アルフォンスは、自分の頭を拾い、元の場所にはめながら言った。

「エドワードさんも?」

 あむはちらりとエドワードに視線を向ける。
 彼は背が低いこと意外、普通の少年に見えるが。何か考え事をしているらしく、彼の表情は硬い。

「ロゼ、あむ。あんたたちは真実を見る勇気があるか?」

 ロゼがごくり、と唾を飲む。
あむは、あたし信者じゃないんですけど。と内心で呟いた。