二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師 *あむの旅* ( No.43 )
日時: 2009/12/29 10:25
名前: 瑠美可 ◆rbfwpZl7v6 (ID: 2zWb1M7c)
参照: 今月のなかよし。しゅごキャラが〜〜〜〜!!

 誘いに乗るように足を踏み入れると、中は他に比べてかなり薄暗かった。
左には四角い石が等間隔で並べられ、何か文字が掘り込まれている。見ると人の名前と月日が刻まれていた。それも真新しいものばかりだ。
そして正面には階段が設けられ、その上は小さなベランダが出来ている。
そこに目的の男——コーネロがいる。
 コーネロはわりかし小柄で太り気味な老人である。
頭に髪はなく、頭上には光が生み出されている。そして信者と同じ黒い制服をまとっている。

「神聖なる我が教会へようこそ、鋼の錬金術師殿」

 恭しく(うやうやしく)お辞儀をしているが、その顔は悪意に満ちたものだ。
さっきの信者たちのように襲ってくる気なのだろうか。

「教義を受けにきたのかね?」
「単刀直入に言う。ぜひとも、教えてもらいたいもんだな。せこい錬金術で、信者を騙す方法とか」

 するとコーネロの目が少し見開かれた。

「嘘でしょう!? コーネロ様!?」

 後から入ってきたロゼがお腹から声を出して、コーネロに問いかける。
コーネロは優しく——かりそめの笑顔でロゼに笑いかける。

「当たり前だ。さあ、ロゼ。それに日奈森殿……こっちに来るんだ。君たちはこちら側の人間のはずだ。こんな異教徒と一緒にいてはならない」

 コーネロは二人を手招きする。
ロゼは誘われるようにふらふらとコーネロの方へと歩き出す。

「ロゼ! 行っちゃダメだ!」
「……ごめんなさい」

 ロゼは一瞬立ち止まり、3人のほうを見やる。
その顔は変な笑いで引きつっていた。仕方がないのよ、と自分に言い聞かせるように言う。

「私にはこれにすがるしかないのよ! 去年恋人を事故で亡くし、不幸のドン底にいたの。その私を救ったのは……他でもない教主様なのよ。そして、約束して下さった」

 ロゼは俯きながら、階段へと足を進める。そして嫌なことを吹き飛ばすかのように、一気に階段を上り、コーネロによりそった。
コーネロは勝ち誇った笑みを浮かべ、石造りの壁に指をかけた。壁が紙のようにめくれる。その下にはレバーが隠されていた。

「日奈森殿……早くこちらに来なされ」

 コーネロが手でおいでおいでをする。だが。あむは首を横に振る。

「あんた……なんであたしのこと知ってんのか知らないけど、あたしはあんたのとこに、行く気ないから」
「仕方がない。あなたには捕まってもらいますよ」

 ガクっとレバーが下がる音がした。
 途端、動物園で嗅ぐ様な獣の臭いがした。あむは耐えられずに鼻をつまむ。墓石がある方向で、赤い二つの斑点が光ったと思った。それは低いうなり声を上げながら、ゆっくりと近づいてくる。
 姿を現したのはライオン……のようなものだ。上はライオンなのだが、胴体から下は濃い緑色。鱗もある。ライオンにないはずの鱗が光を反射して鈍く輝く。一言で言えばワニだ。
ライオンの上半身とワニの下半身を持つ生物——それこそ神話に出てきそうなやつだ。

「合成獣(キメラ)を見るのは初めてかね? 賢者の石はこのようなものまで作れるのだよ」

 コーネロは指輪を見せびらかしながら、自慢げに話した。
 金のリングの上に楕円状に加工された血の色をした石がついている。どす黒い色で、見ていると気持ち悪くなる。

「賢者の石」

 エドワードが獲物をしとめた狩人のように笑う。

「探したぜ……原則などを無視して錬成が可能になる幻の石」

 パンっと両手を合わせるエドワード。そして手を離すと、そのまま地面に手をついた。
花火のような白い火花が飛び散りながら、地面から何かが生えてくる。——槍だ。趣味が悪い装飾が施された槍。

「練成陣なしに!? 国家錬金術師の名は伊達ではないということか!? だが!」

 キメラは速かった。前足の爪でエドワードが作り出した槍を引っかいた。槍はきれいに切断されてしまった。
だがキメラの猛攻はまだ続く。槍を切断した後、今度はエドワードの左足を引っかいたではないか!

「エド!?」

 黒いズボンが破け、そこから血が出るかと思いきや。血が流れるどころか、エドワードは余裕そうに言い放った。

「なんちってね。あいにく特別製でね」

 あむはひとまずほっとした。
 エドワードは再び襲い掛かろうとするキメラを、左足で蹴り上げた。コーネロがあたふたする。

「何をしている! 噛み殺せ!」

 キメラは受身を取ると、再びエドワードに突進する。大きな口を開け、今度はエドワードの右腕に噛み付いた。

「あっ……」

 エドワードの腕から血が流れるさまを想像して、あむは顔を手で覆った。
しかしランがあれっ!? と言うのに気づき、あむは恐る恐るエドワードに目を向ける。
 血は流れていない。腕ももげ落ちていない。いったい何が……?

「どうした猫野郎。しっかり味わえよ」

 ギリギリとかむ力を強めるキメラ。だが、二つの歯が噛み合うことはない。まるで噛み砕けないようなものを噛んでいるかのようだ、と思いあむは気づいた。エドワードの右腕に重々しい輝きがあることに。
人の腕ではない。鉱物のようなものだ。
 エドワードがキメラを蹴り飛ばす。キメラが再び宙に舞う。

「……その腕そうか。そういうことか。こんなガキが何故、鋼などと言ういかつい称号を持つのか不思議に思っていたが」

 コーネロは舌打ちをした。エドワードが赤いコートに手をかけながら、低い声で言う。

「よく見ろ。あむ、ロゼ。これが神様の…神さまとやらの領域を侵した咎人の姿だ!」

 赤いコートが投げ捨てられる。その下には、鍛えられた男らしい身体つき。そして血の通っていない鋼鉄の右腕があった。色からして鋼製か。
よく見ると左足も、だ。


「降りて来いよド三流! 格の違いってのを見せてやるぜ」
「なに……どうなってんの」

 あむが呆然と言う。するとあむに答えるようにコーネロが声を発した。

「二人とも。錬金術師最大の禁忌、人体練成を行なったのだ。死んだ人間を甦らせようとしたのだよ」
「ロゼ……こうなる覚悟があるのか!?」

 ロゼは現実から逃げ出すかのように、視線をそらす。それでも私は……とおびえる様に言っていた。