二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師 *あむの旅* ( No.63 )
- 日時: 2010/01/06 13:00
- 名前: 瑠美可 ◆rbfwpZl7v6 (ID: 2zWb1M7c)
「はぁぁあ〜・・・・・・気持ちいい〜」
あむはうっとりとしながら、言った。
顔は完全に緩み、とろけたはちみつのようだ。
「あったか〜い! しあわせ〜」
思わず両手を組み、神様に感謝してしまう。
だってこの温かいシャワーを浴びせてくれたのだから!
リオールで、エルリック兄弟を見失ったあむとランは、あれからリオール中を懸命に探した。が、それどころではなくなってしまった。
理由はリオールで『暴動』が起こったからだ。
コーネロにだまされた、と気づいた信者たちが、武器——特に拳銃で町の人間・旅行者を撃ち殺したり、建物に火をつける・・・・・・等の行動に出始めたのだ。
当然町はパニック状態に陥ってしまった。揺らぐ炎の中、人々が悲鳴・寄生を発しながら逃げ惑う姿。紅い海の中に倒れる人々の姿——地獄絵図そのものだった。
そんな光景を見たことがないあむは、耐え切れずにリオールを飛び出したのだ。
それから砂漠をさまよっていたところ、運よく教会を見つけることが出来た。そこでこうしてシャワーを借りている。
「えへへ〜気持ちいいなぁ!」
シャワーから溢れてくるお湯はとても温かい。全身を毛布でくるまれているようだ。
今日一日、いろいろあったけれど、嫌なことも全部流してしまえそうだ。
あむはスポンジを手に持つと、石鹸をつけて泡立たせた。それからスポンジで身体をなめるように洗っていく。首から下は、あっという間に泡だらけだ。
そこに再びシャワーのお湯。
小川のように静かに流れるお湯が、あむの身体から泡を持ち去っていく。垢(あか)とともに、穢れもはらわれたはず、とあむは決め付ける。
完全に泡を落とすと、あむはタオルで身体を拭き始めた。
*
あむが泊まっている教会は、旅人・巡礼者のための宿もかねている。入り口から入って正面が教会本体。左手が宿になっている。
そのせいか教会自体リオールの半分ほどの広さしかない。長いすも左右で二つずつ、計4つしかない。
それでも一番奥にはリオールで見たような神の像が置かれ、天上はステンドグラスになっている。月明かりが、花の模様を教会に映し出していた。
失礼だが、リオールと違って神々しさを感じられる。
「お湯加減はいかがでしたか?」
まだ乾ききらない髪をタオルで拭いていると、教会のシスターに声をかけられた。シスターは、『修道女』と言う。神を信じ、信仰的——要は世間から離れて、教会で暮らす女性のことだ。男性だと『修道士』になる。
黒い布のようなもので頭をすっぽりと覆い隠し、額からは白い布が現れている。髪の毛はその中に全て閉まわれているのか、伺うことが出来ない。
首には、銀の十字架がついたネックレスをし、長袖の青いワンピースをまとっている。
「とても気持ちよかったです! ありがとうございました」
あむはシスターの前で立ち止まり、ぺこりとお辞儀をした。
それはよかったわ、と文字通り天使のような微笑で彼女は返してくれた。
「ところであむさん『賢者の石』のことですが・・・・・・」
お風呂に入る前に、賢者の石のことを尋ねた。
あれから調べてくれたらしい。あむは内心シスターに感謝しつつ、問う。
「はい! どうなっているんですか?」
しかし、シスターの表情には困惑の色が見えた。言ってもいいかと迷っているのか、視線を中に泳がせている。
が、決心がついたらしくあむをまっすぐと見据えた。
「この教会から一時間程歩くと、”ルク”という町があるのですが・・・・・・その町には、なんでも不思議な力を持つ石があるそうですよ。その石の力で、病気や怪我が治ったり、水をワインに変えたりしたりできる。まさに『奇跡の石』なのです」
「奇跡・・・・・・」
あむは脳裏にコーネロを思い浮かべていた。
偽の『賢者の石』ならば、そのようなことができるのではないか。ルクの町にも、コーネロのような人間がいるのかもしれない。
だがここで立ち止まるわけには行かない。必死に「立って歩け、前へ進め」と言い聞かし、疑う自分の心を騙す。
「ラン。明日ルクの町に行こう」
「そうだね」
ランとあむは、希望に満ちた瞳でしっかり頷きあう。
夜空では二人を指し示すかのように、星が輝いていた。