二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師 *あむの旅* ( No.67 )
- 日時: 2010/01/08 14:04
- 名前: 瑠美可 ◆rbfwpZl7v6 (ID: 2zWb1M7c)
砂漠の朝はとても肌寒い。日本で言うと、北海道辺りに来た気分。違うのはそこが、一面の砂の海であると言うこと。
太陽はまだ昇ったばかりで、空は下半分だけが淡いオレンジ色に染まっていた。上側はうっすらと白い色で、まだ夜が明けたばかりだと言うことを表している。
砂も朝日に照らされ、キラキラと光っているように見えてきた。まるで黄金色の海のよう。
「……そろそろ町についふぁ?」
眠いのか欠伸をしつつ、ランがあむに尋ねる。欠伸をしたせいで最後の「た」の部分が、変に伸びた。
「もうすぐだよ。ってかラン、あんたどうして眠いの?」
翌日、あむは日が昇らないうちに起きた。
シスターに砂漠は日が昇ると熱くなるから、早めに行けと教わったからだ。
朝食を教会で食べ終えると、ランを叩き起こして教会を出、こうしてルクに向かって歩いているわけだ。
「だって〜あむちゃんが、早く起きすぎるんだもん」
「起きすぎるって……! 昨日シスターさんに、早く行った方がいいって言われたじゃん」
あむは昨晩のことを思い出す。
シスターさんと話した後、ランは確かに早起きする! とはりきっていた。あの元気はどこに行ってしまったのやら。
一言言ってやろうと思い、あむがランに近づいた。——時。ぴし、と何かにひびが入るような音がする。音源は、腰につけられた赤い下地に黒い数本の斜め線が入ったポーチの中からだ。
「あれ? なんだろ」
あむは言いながら、ポーチの蓋を開けた。ポーチの蓋の部分には黒いハート型のワッペンがつけられ、女の子らしさを表している。
ポーチの中にはぎゅうぎゅうに卵が3つ押し込まれていた。
これはしゅごキャラが入った卵——『しゅごたま』と言う。
しゅごキャラたちは生まれる時、こうして『しゅごたま』に入ったまま生まれてくる。これが割れると、しゅごキャラが誕生するのだ。何だかひよこっぽい。
もちろん柄は、人によってしゅごキャラが違うように柄も全く違う。
しゅごキャラが、孵ってからは、夜眠る場所として使うのだ。
3つとも柄はよく似ている。
チェック柄で、一つは赤いチェック柄。真ん中には黒い線が卵の横に向かって一周分引かれ、等間隔でハートマークが描かれていた。これはランの『しゅごたま』で、普段彼女はここで寝ている。
もう一つは緑色のチェックの卵。赤と同じく、中央には黒い線が通っている。ただ線の中の模様は、緑色をしたトランプのクローバーの模様だ。
そして最後は青いチェックをした卵。黒い線の中の模様は、青いトランプのスペードマークだ——が縦に割れ、中で一人のしゅごキャラが身体を伸ばしていた。
大きさはランほど。
頭には、スペード型の飾りがついた青いキャスケットを被っている。
青い髪を耳までのショートカットにし、服装も青系のシャツに、やはり青いハーフパンツと言う男の子のような格好をしていた。
「あむちゃん、どうしたの?」
しゅごキャラの青い瞳が、あむをじ〜っと覗き込む。そしてゆっくりと宙に浮きながらポーチから出て、
「うわぁ! きれいだ! スケッチしよっと」
砂漠の美しさに歓声を上げた。
続いて肩にかけたうすい水色の袋から、緑色のスケッチブックと赤い鉛筆を取り出した。そしてスケッチブックに何かを描いていく。
「ミ、ミキ……いきなり絵に走った……」
あむはげんなりとして言った。
絵を一心不乱に描いているしゅごキャラの名は、『ミキ』。
明るいランと違い、クールで落ち着いた性格をしている。
「よし出来た!」
ミキは満足そうに笑うと、スケッチブックを天に掲げた。
スケッチブックには、それこそ写真のように、砂漠の風景が忠実に描かれていた。
「ってあれ? 何でボク砂漠にいるんだ……?」
ようやく気づいたのか、ミキは呆然とした。一人称は「ボク」であるが、立派な女の子である。
あっけに取られる二人であったが、すぐにミキに事情を説明しに声をかける。
「ミキ!」
*
無駄だと思えることも含め、今までのいきさつを手短に説明した。
昨日の朝起きたら砂漠にいたこと、リオールでの一件。そしてルクの町に向かっていることなど。
黙って聞いていたミキは話が終わると、顔をしかめ腕組みをした。
「要するに……ボクたちトリップしたってことだね?」
「ミキ、とりっぷって? 唇に塗るやつ?」
「それはリップ」
ランの意味不明なボケに、ミキはびしっと片手でツッコミを入れた。
「異世界トリップ——簡単に言えば、ボクたち3人は別の世界に来てしまったってだよ。本とかでよくあるよ」
「そうだね。だからルクの町に行って、賢者の石を探すんじゃん!」
あむは力強く言った。
その言葉にランとミキは、同時に「うん」と大きく頷く。
その3人を勇気付けるかのように、遠くに町影が見え始めた。
〜つづく〜