二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.29 )
- 日時: 2009/12/31 20:15
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)
「あっ、兄貴がっ!」
オレンの実が無いことがわかり、おどおどしていると、トレジャータウンの時にスリーパーといっしょにいたスリープがやって来た。「兄貴」というからには兄弟なのだろう。自分の兄がやられたことがわかると、スリープの顔つきが変わった。怒りと悔しさに満ちている。
「兄貴がやられるなんて……。ちくしょう、よくも兄貴をっ。くらえ、<ねんりき>!」
「うわあっ!」
スリープの目が青く光ると、私は全身に切れるような痛みを感じた。まるで、自分が雑巾(ぞうきん)になってしぼられているみたいだ。もう戦いたくないのに。もう戦いは十分。傷つけあうことなんて、もうたくさん。……スリーパーとの戦いでかなりダメージを受けていた私は、もうダメだと思った。視界が少しずつ暗くなっていく。それでも、最後の敵を倒さなくてはならない。
「う、う……。<でんきショック>……」
最後の力を振り絞って出した電気は、さきほどのスリーパーの時に比べてかなり弱い。しかし、見事にスリープに命中した。あんなに弱い電気だったのに、スリープはうつ伏せに倒れる。兄弟だというのに、バトルの強さは正反対だ。やった。最後の敵を倒した。
でも喜んでいる場合ではなかった。「やった」と思ったのもつかの間。私ももう限界だった。最後のスリープの<ねんりき>で、残りの体力を使い果たしたのだ。視界は完全に暗くなる。そしてついに、足に感覚がなくなって、ばったりと倒れた。待って、ここで倒れたらダ……メ…………。
「わあ、大丈夫ですか!」
最後にルリリの悲鳴が耳に入った。それから頭の中がぐるぐると回りだし、意識は遠のいていった。
*
「うっ、冷たあい!」
急に顔に冷たい水をかけられて、私はパッと目を覚ました。隣を見ると、ミニリュウが驚いた表情で座っていた。同じく水をかけられて起きたらしく、きょろきょろしている。水をぶっ掛けて起こすなんて、強引だなあ。
そうだ、体の傷は? 体を見ても、どこにも傷などは付いていない。あんなに死闘を繰り広げたのに、まったくの無傷だ。体力も十分にあるのか、気分も清々しい。ミニリュウも全然平気なようだ。
状況がよくわからなくて瞬きを繰り返し、正面を見ると申し訳なさそうな表情をしたルリリがいた。
「ルリリ、無事だったんだね! よかったあ。それより、この水は?」
「あっ、その……。すみません! ミーシャさんたちが倒れた後、すぐにギルドのみなさんが来たんです。それで、傷だらけのミーシャさんたちを見てぺラップさんがオレンの実をすりつぶし、水に薄めて『オレンのジュース』を作り、飲ませたんですよ。傷は癒えたようですが、ミーシャさんたち、なかなか起きなくて。それで、ぺラップさんが“水でもかけておやり”って言うからぼくが<みずでっぽう>で……。す、すみません。ぼく、助けてもらったのに」
「そうなんだ。ううん、大丈夫だよ。ちょっと冷たかったけど。それより、ルリリは怪我とかない?」
ミニリュウが安心して微笑むと聞いた。
〜つづく〜
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.30 )
- 日時: 2009/12/31 20:16
- 名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)
「はい。ミーシャさんたちが助けてくれたので怪我はないです。本当に、ありがとうございました」
ルリリはペコリとお辞儀をすると、去っていく。
よかった。ルリリに怪我はなくて。それにしても危険なバトルだったと今更ながら思う。竜巻に乗るなんて、失敗したらおしまいだった。やっぱりキセキが起こったのかもしれない、と私は唇を噛んだ。
そして隣を見る。ミニリュウが疲れた顔をして座っていた。
「ミニリュウ、大丈夫?」
「うん、なんとかね。それより作戦成功してよかったね。無謀な作戦だったけど。……私、あんなにハラハラしたバトルは初めてだった」
「私もだよ。初めて」
ミニリュウは過去を思い出しているのか、目を細めて空を見つめている。私も空を見上げた。青々とした大きな天空の海。その中にさっきまで死闘を繰り広げていたことが信じられないくらい、ゆったりと雲が泳いでいる。
そういえば、今はきっと午後四時くらい。お昼を食べるのを忘れてしまった。
「はあ、私たち勝ったんだよね。ミーシャ」
「うん。あんまり実感がないけど勝ったんだよ」
私は、ミニリュウの言葉にクスリと笑った。
確かに、本当にハラハラした戦いだった。ちょっと間違っていたら、私たちのほうがやられていたかもしれない。あんなに一生懸命になったことなんて、今まであっただろうか。……きっとなかっただろう。一つの事にミニリュウと夢中になって、怖さなんて感じなかった。ただスリーパーを倒すことだけを考えていた。今思い出すと、恐ろしくもなる。
「おいっ! おまえたち!」
少し和みながら話していると、後ろから聞き覚えのある声がした。振り返るとぺラップがいる。何か怒られるんじゃないかと思って、私たちはうつむいた。勝手な行動をしたのだ、当たり前だろう。ところがぺラップはにっこり笑って口を開く。
「おまえたち、よく頑張ったな♪ 初めてにしては上出来だぞ♪ さ、私についてきな。グラエナ保安官と、ポチエナたちがお礼を言いたいそうだ」
〜つづく〜