二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.36 )
日時: 2009/12/31 20:23
名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)

「自然に身を任せて集中したら、少し思い出したんだって!? すごいよ、ミーシャ! ね、それって、自然の記憶じゃないの?」

 ミニリュウが、瞳を輝かせて言った。
 私は問い返す。

「自然の記憶?」

「うん。だって、ミーシャが人間だった頃、どこに住んでいたのかなんてわからないけれど、自然はずっとつながっているじゃない。たとえ、ずーっと離れたところだとしても、空はつながっているし、大地だって木々の根だって……。だから、その自然に身を任せたことによって、自然に刻まれている記憶をミーシャが呼び出したんじゃないかな」

 自然はつながっている……。そっか、大自然にずっと刻まれてきた記憶の中から、私が自分に関係のある記憶を呼んだんだ。でも、それは、私が海岸で倒れていた前の日が嵐だったということに関係があるのかもしれない。もし、今日が同じ嵐じゃなかったら、思い出せなかったかも。
 相変わらず、外は雨がどしゃぶりで風が暴れている。私は、そんな嵐に感謝の思いを向けた。

 それにしても、私の話を聞いただけでそんな事を思いつくなんて、ミニリュウってすごい才能の持ち主だ。その知恵を探検に生かせれば……。

「でもさ、ミーシャ。そのミーシャの過去の記憶の中に、相手の名前だけが思い出せなかったって、変だよね」

 ミニリュウが難しい顔をした。
 私も確かに思う。どうして相手の名前だけが思い出せないんだろう。

「うん。どうしても相手の名前だけが思い出せないんだよね……。何か理由があるのかも。それに、“本当の生活へ帰れる”って言うのも気になるよね」

「本当の生活……か。うーん、よくわからないよ。まあ、いつまでも考え込んでいても仕方がないし、話を戻そう。ミーシャがポケモンになった事が、未来を見る力と関係があるって話」

 ミニリュウが話を戻した。
 私もいったん深呼吸をしてから、ミニリュウと向き合う。
 すると、はっとしたようにミニリュウが私を見た。

「私っ、今思ったんだけど、ミーシャが人間になった事って、昼と夜が狂い始めてきた事とも絶対に関係があるような気がするっ」

「あ、その狂い始めてきたっていう話、剣風の森に行く前に聞いた気がする」

 私の頭の中に、ミニリュウが“不思議のダンジョン”について話している場面が浮かんだ。

 ———「うん。不思議のダンジョンっていうのは、もともとはちゃんとした森や川だったものが、昼と夜が狂い始めてきた影響で迷路のようになった場所を言うんだ。しかも不思議のダンジョンは、入るたびに地形も変わるし、そこで倒れると道具も半分くらい減少して、入り口に戻されるっていうとっても不思議な場所。おまけに、暴走したポケモンが襲ってくるしね。だけど、そういう不思議な場所だから、お宝みたいな新しい発見が見つかるんだよ」

「そうそう、不思議のダンジョンが昼と夜が狂い始めてきた影響で出来たって話。狂い始めてきたって、どういうこと?」

 私が聞くと、ミニリュウが何か思いつめるように下を見た。そして、しばらく沈黙が続いたが、やっとミニリュウは口を開いた。

〜つづく〜
☆なんだか、Memory5のタイトルが初の探検なのに、いまだにテントの中で話をしているという……。Memory5も長くなりそうですが、マイペースに進めていきます^^

Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.37 )
日時: 2009/12/31 20:24
名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)

「狂い始めたっていうのは、そのまんまの意味だよ。普通は、一日は昼と夜があるでしょ? だけど、最近は夜の時間が長くなって、終いには昼の時間がなくなってしまうんだ。つまり、一日中、夜ってわけだよ。その影響で、ポケモンたちは混乱して暴走するし、不思議のダンジョンが広がるし……。本当に、大変なんだ……」

 ミニリュウの話を聞いて、私は息を呑んだ。
 まさか、そんな事が起こっていたなんて……。一日中、夜なんて考えられない。それじゃあ、ポケモンたちが暴走するのもあたりまえだ。

「でも、どうしてそんな風になってきちゃったの? 絶対に原因があるでしょ?」

「原因は、“光の歯車”に異常が発生してきたからだと、みんなは言っているよ」

「光の……歯車?」

 光? 歯車? この世界では聞いたことのない話ばかりだ。
 私が問い返すと、ミニリュウは真剣な顔をしてゆっくりと頷く。

「そう。光の歯車っていうのは、例えば森や鍾乳洞、洞窟の奥や山の中にあって、各地の太陽の輝きを守っていると言われているんだ。その歯車に異常が発生したために、太陽の光が弱くなり、ずっと夜になっちゃうんじゃないかって言われている」

「そんな……。異常ってどんな?」

 ミニリュウの話を聞いていると、心の中に雨雲が押し寄せてきたかのように、気分がどんよりしてきた。それでも、なんだか気になる。

「異常って言っても、よくわからないんだ。だって、光の歯車を見た事のある人なんて少ないし、昼と夜が狂い始めている原因が光の歯車にあるなんて、単なる予想でしかないし。でも、もし本当に光の歯車に異常があるのだとしたら、色々な異常が思い当たられる。例えば、歯車の力が弱くなったとか、誰かが……歯車を盗んだとか……」

「ぬぬぬ、盗んだ?」

 まさか、そんな大事な物を盗むなんて……。
 思わず、私は大声を出してしまった。ミニリュウは、慌てて苦笑いをする。

「盗んだっていっても、単なる予想だってば。でも、誰かが盗んだなんて、一番考えたくないよ。……ずっと昔から、どんなに悪いポケモンでも、光の歯車だけは盗まない。みんな怖がって、近づかないんだよ」

「もし……盗っちゃったら……?」

 恐る恐る私は聞いてみた。
 ミニリュウも、暗い顔をして口を小さく開く。

「もし盗っちゃったら……、多分、その地域は……ずっと夜に包まれるんじゃないかな」

 ザアアアアアァァァ————! ゴロゴロ、ビッガガ——ン!

 私たちのどんよりとした気持ちをあおり立てるように、雷と雨がいっそう大きく鳴った。

                    *

 同じ頃、木々が生い茂るどこかの森で、風に負けない速さで駆け抜ける影がいた。
 暗い暗い緑の木々が、風に揺らされ大きく唸る。そんな並木道の中を影は走る。
 ———そして。

「ついに見つけたぞ、“光の歯車”を!」

 ピカッビッガガガ———ン!!

 雷の光で、一瞬だけ辺りが明るくなった。そこだけスポットライトを当てたかのように、丸出しになる。木々が大きく唸った。
 暗い暗い森の中、その影がさっとあらわになる。

 ———光の中に浮かび上がったのは、稲妻よりも鋭い瞳を持つジュプトル……。

〜つづく〜